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遥かなる旅路で  作者: 星野すばる
劇団編
45/91

1 劇の街

次の日になり、エルフォルクへ出発することになった。マリッサも体調が回復して、問題ないようだった。


今一行がいるトレランスからエルフォルクへはバスで四時間ほど。夕時前には到着する予定だ。一行はバスに乗り、目的地へと向かう。


「エルフォルクっていったことあるー?」


「あるよ」


答えたのはマリッサ。


「劇が有名で劇場がたくさんあるよ。世界的にも有名で、観光地化してる」


「なら泊まるところには困らなさそうだな」


バスは目的地へと着いたようで停車する。一行が降りるときらびやかな街が広がっていた。行き交う人も多く、お洒落に着飾っている人が多い。


「お洒落な人が多いね」


「観劇に来る人が多いからね」


アメリアの疑問にマリッサが答える。

とりあえず夕食をとることになり、近くにあったレストランへと入る。


「軽食が多いね」


メニューを見ながらラウルが言う。ブイヤベースや煮込みが並ぶラルジュと比べて、エルフォルクはパン、サラダ、ソーセージといったようなラインナップだった、


「ツァイトはお昼ご飯が手の込んだ料理が多いんだよ」


「明日が楽しみだねー」


エルフォルクに来たことがあるマリッサが色々教えてくれた。夕食を終えて宿を取りにレストランを出た。


「少しお時間よろしいですか」


二十代後半くらいの女性に声をかけられた。身なりが整っており、どこかの劇の受付嬢のような服装だった。


「ご用件は」


ザイアスが対応をする。


「いきなりで大変申し訳ございません。

私たちの劇団で三ヶ月後に公演があります。そちらに出てもらえませんか、詳しくは劇場でお話しします」


普通に考えると怪しいが、ザイアスはペンダントのことと関わりがあると思ったのか了承する。

とりあえず女性に着いていくと、一際大きい劇場へと到着した。中へと案内され、応接室のような場所へと案内された。

女性は一行に座って待つよう伝え、一度部屋を出る。人数分の飲み物を手に戻ってきた。


「急にお声かけしてしまい申し訳ございません。私はエリー・ヴァーグナーと申します。この劇場で、代表の秘書をしております。

急にお声かけをして申し訳ないのですが、

実はマチルダ・フォーゲルの生涯を描いた劇に出演してほしいのです」


突然の申し出に一行が怪訝に思っていると、もう一人女性が部屋へと入ってきた。車イスに乗っており、若い男性が押している。四十代くらいの女性で、容姿が整っており、身なりもとても綺麗な人だった。


「あ、いいね。そこの女の子と男の子。

私の最後の劇に出てくれない?」


自由奔放な性格なのか、部屋にきて挨拶もなしに本題にはいった。エリーも慌てているようだった。女性はアメリアとラウルを指していた。


「マチルダさん!」


「二人に私の最後の出演となる劇に出てほしい。さっきのレストランでみたときにビビッときたんだ」


マチルダが話始める。

二十前に自然災害による土砂崩れで両親を目の前で失った。実家が経営していた劇団で、スターへと上り詰めた。国外公演でラルジュを訪れた際に兄と宿泊していたところ、シエラトエラ戦役に巻き込まれ、宿を爆破される。そこで兄も失い、自身も足を壊死し舞台へと立てなくなった。通院しているときに検査を受けたところ、病気が見つかり余命を宣告されたとのことだった。

波瀾万丈な人生だった。



「そんな暗い顔をしないで。

私は最後にファンの心に残るような素晴らしい劇にしたい。その女の子には私がスターに上りつめる前までを、その男の子には兄を演じてほしい」


「二人とも劇は経験がないですけど」


「それがいいの。だって私は劇をしたことがなかったし、兄もそうだったから」


ザイアスは二人の様子を伺う。アメリアもラウルも頷いていた。


「わかりました」


「ありがとう。十年前、舞台に立てなくなって絶望していたけど、最後は絶対にファンの心に焼き付ける劇にしたい」


仕事があるからとマチルダはアメリアとラウルにお礼を伝えて去っていった。まるで嵐のような人である。



「すみません。劇のことになると周りが見えなくなる方で。お受けいただきありがとうございます」


エリーに住居を聞かれるが、宿に泊まる予定と答えると、少し席をはずし戻ってくると、マチルダの別宅を貸して貰えることになり案内されることになった。


「ほんとに良いんですか?アメリアとラウルはともかく私たちは特になにもしないのに」


マリッサが慌てて答える。


「ええ、マチルダさんが良いとおっしゃってましたし、アメリアさんとラウルさんもここからの方が通いやすいと思います」


劇場から歩いて数十分で別宅に到着した。五人は全く問題なく余裕で住めるような大きさの邸宅だった。


「使用人は必要ですか?

あと自由に使って良いそうです。この別宅はマチルダさんはあまり使用しないので」


「いえ、使用人は大丈夫です。こんなによくしてもらってありがとうございます」


ザイアスが頭を下げてお礼を伝える。



エリーは明後日から稽古が始まるから迎えに来ると伝えて、一礼をしてから劇場へと戻っていった。


別宅にはいると想像通り広く、リビングやダイニング、客室が三部屋とマチルダの寝室と思われる部屋があった。客室三部屋を使用することにした。


リビングで一行は集まっていると、玄関のベルが鳴った。ザイアスが対応をするとエリーとマチルダだった。


「夜分に申し訳ございません。マチルダさんが行くって聞かなくて」


「長居はしないわ。ただ、これを届けたくて」


マチルダが後ろを振り返り合図をすると、付き人のような人が荷物ををいくつか運びいれた。


「おすすめのビールとおすすめのソーセージだよ。外国からきたってエリーから聞いたの。よかったら召し上がって。あなたたちお酒好きでしょ。この間お店でも飲んでたみたいだったわよね」


「ありがとうございます。こんなにたくさん申し訳ないです。しかも住むところまでありがとうございます」


「私の我がままで巻き込んでるから、気にしないで。なにか困ったらすぐに言って」


本当に長居はせず、マチルダとエリーは帰っていった。ザイアスは頂いたものを整理しつつ、この後食べるためにソーセージとビールを準備した。


「うわ、おいしいー」


ビールをごくごく飲みながらソーセージを堪能する一行。


「そういえば、ラウルは劇大丈夫か」


ラウルの役はマチルダの兄。シエラトエラ戦役で亡くなったが、ラウル自身もシエラトエラ戦役で孤児になっている。


「気乗りは正直しないけど、多分これがカギだよね。それなら協力したいなあって」


「ありがとう。アメリアは平気か」


「私も頑張る」


明日は自由に過ごすことになったが、五人で街に出掛けることになった。

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