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遥かなる旅路で  作者: 星野すばる
サーカス団編
39/91

9 一人の生活

ザイアスたちはマリッサたちを見送ってからリッシェのマニフィへ二日かけて戻った。ザイアスとノアはアメリアを自宅へと送り届ける。


「俺達は実家に帰るけど、何かあれば隣の家に使用人はいるから頼ってくれ」


ザイアスも隣に立つ家に住んでいたが、別荘のようなものであり、実家はまた別の場所にある。ノアも同様だ。


「あと、一ヶ月半後に戻ってくる。そのときにちょっと一緒にいきたいパーティがあるから、着いてきてくれるか」


「え、うん」


「俺も行くしそんな固いものじゃないよ」


パーティに誘われることがなかったアメリアは少し困惑していた。その様子を見てノアが補足してくれた。


「ありがとう、じゃあ行ってくる」


ザイアスとノアは実家へと向かった。残ったアメリアは家へと入る。すると宅配便や手紙などが入り口に並べてあった。きっと、合鍵を持っているザイアスの使用人が受け取って管理してくれたのだろう。

何回かに分けて中に運び、整理をする。


宅配便はアメリアが学園から送った荷物や、友人がデザインしている洋服のプレゼントなどだった。手紙は学園の時に教えていた学生などからだった。


アメリアは返事を書くために便箋を探すが見当たらない。少し歩いたところにある場所に明日買いにいくことにして、この日は近所に食材だけ買いにいくことにした。


次の日になり、アメリアは便箋を買いに出掛けた。家からは少し遠く、人通りの多い道を歩いているといつもに比べてどこか騒がしかった。


近くで女性の甲高い悲鳴が聞こえた。距離的にそう遠くはなさそうだ。すると一人の男が全速力で走ってきた。アメリアを見つけ止まり話しかける。


「かわいいお嬢さんだな。俺に血をくれるかい」


といいながら、アメリアの肩を掴もうとする。周りの人は恐れをなしてか見ているだけで、助ける様子はない。発言からしてどうやら吸血鬼だ。


「その子に触るな、吸血鬼のなり損ないが」


いつの間にかアメリアのそばにいた青年は言う。青年は蹴りあげ、男は気絶した。周りで見ていた人たちの誰かが既に警備員を呼んでいたようで、その男は拘束された。


「大丈夫?」


その青年は話しかける。黒髪で蒼色の目をした綺麗な顔立ちの青年だった。肌は陶器のようにうつくしい。


「助けてくれてありがとうございます」


「貴女が無事でよかった」


「なにかお礼を」


「いらないよ、なり損ないの吸血鬼を何とかするのも同胞である俺の役目だから」


とだけ言い残しどこかにいってしまった。アメリアは申し訳なさは残るが追うことはやめた。



また別の日、アメリアは友人のお店へ向かった。作成したいくつかの服と小物を置いて貰うためだった。


「アメリア、最近たくさん作るねー」


「ごめんね、場所とっちゃうよね。迷惑にならないタイミングで置いてくれて大丈夫だから」


「いやいや、メルティクラウンは置くだけでなぜか人が来て、うちのお店にも人が来てくれるから、好きなだけ持ってきて良いよ」


「ありがとう」


アメリアは友人の仕事の邪魔にならないように話は早々に切り上げ、少しお店を回ってから帰ろうとした。


「あれ、この間の」


この間助けてくれた吸血鬼の青年にたまたまお店の前で会った。


「この間はありがとうございました」


「気にしないでいいよ」


「でも」


「ならこのあと時間あるかな、カフェでもいかない?甘いものが食べたいんだ」


アメリアも了承して、近くのカフェへと入る。コーヒーと紅茶、ケーキを頼み、話をした。


「俺はエミリオ。よろしくね」


「アメリアです」


とりあえず自己紹介をする。


「あのね、さっきのお店で僕が大好きなメルティクラウンのオーダーメイドできたんだ。

あまりやってなくて、でも最近よくあのお店で置かれるようになって、毎日通ってたら今日店員さんが教えてくれたんだ」


勢いよく熱意を込めて話すエミリオ。アメリアは自身のブランドのファンと知り少し動揺する。


「ここからお手紙でやり取りして、一ヶ月くらいで出来上がると思うと楽しみで仕方ない。

俺には兄さんがいて、兄さんもよく着てるのをみるから自慢できる」


とびきりの笑顔で話すエミリオ。


「お兄さんも好きなんですね」


「そう!従妹もいるけど彼女はどうだろうなー」


聞かれても正直困る。


「従妹さんもいらっしゃるんですね」


「うん、あの子はとても大変だと思うけど。

アメリアは今幸せ?」


唐突な質問に驚く。エミリオはどうやら勢いで話すタイプのようだ。話があちこちに飛んで行く。


「はい」


アメリアはとりあえず答える。


「なら良かった。

きっと従妹も幸せになってくれる。ちょうどアメリアと同じ歳くらいなんだ」


論理は飛躍しているがエミリオは笑顔だ。アメリアも理解できていないがなにも言わなかった。深く考えてもきっと答えはでない。


エミリオと小一時間ほど話をして店を出た。家の近くまでエミリオに送ってもらい、アメリアは洋服を作ったりして過ごした。


ある日、友人経由でエミリオからの手紙が届き、やり取りをした。複数回やり取りを行い、服の作成を行う。洋服を友人のお店に届けて、既に友人が受け取っていた代金をもらい今回のオーダーメイドはほぼ完了だ。


アメリアはその後も洋服やアクセサリーを作っては、友人のお店へ持っていったり、学園都市の生徒たちに手紙を出したりしていると、一ヶ月半はすぐに過ぎた。

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