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遥かなる旅路で  作者: 星野すばる
サーカス団編
33/91

3 サーカス団


ロワンを出発する日となり、トレランスへと向かうバスに乗り込んだ。首都からロワンに向かう時間の三分の一くらいの時間でバスは停車した。


一行はバスを降りて、とりあえず宿を探した。いつまで居るかわからないため、長期で泊まることができる宿にすることにした。


宿を見つけた後、食事をとることにする。


「もうすぐ公演開始か、どのくらいの期間なんだ」


「基本的に二週間くらいかな。

とりあえず、公演場所は確認しなきゃいけないけど、とりあえず見に行くで良いの?」


「そうだな、マリッサが知ってるサーカス団とペンダントが指したサーカス団が同じか確かめる必要があるからな」


食事をとったあと、トレランスの観光案内所に向かい公演場所を確認し、初日公演のチケットの手配も済ませた。公演日まではやることもないので、自由に過ごすことになった。



公演日になり、四人は公演場所へと向かった。マリッサが場所を知っているようで案内をしてくれた。着いたのは、小さな劇場だった。百人くらい入れるような観客席は開演前には八割ほど埋まっている。


時間になりサーカスが始まる。ピエロによる道化芸、アクロバットやトランポリン、空中ブランコといった演目だった。


一時間ほどで公演は終わり、団員たちが観客席をぐるりと回り、終演となった。大きい拍手を送り劇場を後にした。



劇場を出たところでマリッサはザイアスに確認をする。


「どう?ザイアス」


「ここであってると思う。

全員十代から二十代で、人数もそれほどだったのが一致してる」


「よかった、この後寄りたい場所があるんだけど良い?」


特に予定もないため、マリッサに同意する。

少し時間を空けたいとのことだったので、近くにあった喫茶店で時間を潰す。紅茶を一杯飲んだところで、席を立った。


マリッサの案内に着いていくと、酒場に着いた。地下にあり、まだ夕方のためか客は少なく、店内は照明が暗めであり、隠れ家のような落ち着いた雰囲気の店だった。


マリッサは奥にあるカウンター席に向かっていった。どうやら店主とも顔見知りのようである。


「ラウル!」


マリッサはカウンターで一人で呑んでいたとある青年に向かって声をかけた。

ラウルと呼ばれた青年は、マリッサの方へと向く。


「あれ、マリッサ? 何年ぶり?どうしたの」


薄い茶髪をで薄い茶色の眼をした端正な顔立ちの青年だった。驚いている様子だが、あまり表情が豊かではないのか、無表情に近い。だが、声は抑揚があり、優しく聞こえるため、威圧感は感じない。



「ラルジュに用があって、たまたま予定があったから寄ってみた。トレランスでの公演後はここにいると思って」


とりあえずペンダントのことは避けて話をする。


「そうなんだ、後ろの人たちは?」


ラウルと呼ばれた青年は、ザイアスたちに目を向ける。


「うん、学園で友達になったザイアスとノアとアメリアだよ。今一緒に各国を旅しているの」


ラウルはすこし眉間に皺を寄せたようにみえたが、一瞬だった。


「そうなんだ」


「こちらはさっきのサーカス団の団長をしているラウルだよ。十年くらい前にたまたま私の実家の近くに公演に来たときに、仲良くなったの」


マリッサがラウルを紹介する。

挨拶を済ませたあと、テーブル席に移動し五人で飲むことになり、ノアとザイアスは各々ワインを一本ずつ入れてラウルも一緒に飲む。ノアとザイアスとは年が近いためか、短時間で打ち解けたようだった。



「そういえば、今回の公演でサーカス辞めるんだ」


ワインが二本空いたところで、ラウルは言った。

追加のワインが届いたところで、話は進む。


「辞めるの?」


飲みやすいカクテルを飲んでいたマリッサが反応する。


「というよりサーカス団を解散しようかって話になっている。俺たちも良い年で、ちびたちもスクールを卒業したからね」


ザイアス、ノア、アメリアは事情を知らないため口を挟まない。ラウルがその様子を察し、補足するように話を続ける。


「俺たち団員はシエレトワレ戦役の戦災孤児なんだ。生きるためのお金欲しさに、サーカスを始めたけど、もう全員スクールを卒業したから、仕事に就ける」


スクールに通うことは義務となっているため、スクールに通っている間は一部を除き基本的に就くことができないことになっている。



「仕事は決まっているの?」


「いや、ほとんどが決まってないよ」


答えを聞いたマリッサはすこし考えたあとに、話を続けた。


「それなら私の実家に来ない?

いつでも人手不足だからきっと歓迎してくれるよ」


マリッサの提案にラウルは驚いた様子だった。ラウルも考えたあとに答えた。


「いいの?

若い子たちをなるべく同じ国、出来れば近くで働かせたいと思ってたんだ。伝手もないし、十何人も一気に雇ってくれる場所はない。

でも、一生こんなに小さなサーカス団で稼いでいけるわけはないから、困っていたんだ」


「うん、実家に戻っておばあさまに聞いてみるよ」


「ありがとう」


ラウルはマリッサにすこし笑った。会ってから初めての笑顔だった。そのあとも飲み続け、店が閉店になるとのことで外に出た。


「私は明日、実家に帰っておばあさまに話をしてくるよ」


「俺は公演があるから行けないけど、ご挨拶の手紙を書くから持っていってもらっても良い?」


「いいけど、かしこまらなくて良いよ。おばあさまもラウルたちのこと、ご存じだし」


「そういうわけにはいかないから、泊まっている宿を教えて」


ラウルの押しに負けて、マリッサは宿名を告げた。出発前に届けるとのことだった。


「皆さんで行くの?」


ノアとザイアスの方を見ながらラウルは聞く。


「いや、私だけで行くよ。慣れてるから」


普段なら全員で行くが、ノアとザイアスはこの国の事情を知っているため、マリッサに従うことにした。


明日の予定が決まったところで一行は、宿に戻ることになった。

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