1 次の街へ
出発の日になった。誰も遅れることがなく、待ち合わせの場所に珍しく時間に揃った。
「途中までご一緒させていただいてありがとうございます」
実は一昨日マリッサがサリとご飯を食べに行ったときに、サリの帰省予定日と同じ日に出発とのことだったので、途中まで一緒に向かうことにした。マリッサ以外の三人もすでにマリッサから聞いていたので、驚く様子もない。
「とりあえずラルジュの首都に向かうで良いんだよね」
「ああ、そこでなにか聞ければ言いが」
ラルジュへ向かうには一度この国で始めに来た街へバスで戻り、鉄道に乗る。駅に向かうためのバスを待ちながら、ザイアスとマリッサが話す。
「聞くのを忘れてたんだけど、サリ、ラルジュでサーカスって聞いたことある?」
聞かれたサリは、少し考えてから答えた。
「いや、ないかなあ」
「そうだよね、ありがとう」
話が途切れたところでバスが来たため乗る。
バスに乗る時間は短く、すぐに駅がある街に着いた。鉄道駅へと向かうとすぐに鉄道が来るとのことだったため、人数分の切符と昼食を購入して鉄道に乗り込んだ。鉄道はボックス型であり、ノアとザイアス、アメリアとマリッサとサリの二組に別れて座った。
鉄道はほどなくして、出発をする。
各々話をしたりご飯を食べたりしてすごしていると、出発から時間が大分経ち、もう夕暮れ前になった。
「私は次で降ります。
短い間でしたけどありがとうございました」
首都のひとつ前の駅に着くというアナウンスが流れたタイミングでサリは降りる準備を始めた。
ほどなくして到着し、サリは鉄道を降りた。一行は車内から見送った。
サリが降りたので、四人は同じボックス席に座り直すと次の駅へと向けて鉄道は駅を出発した。
「さっき、サリさんにサーカスを知ってるか聞いてたけどどうしたんだ?」
「たぶんザイアスが言っているサーカス団は、きっと私が知っているサーカス団なんだけど、規模が小さいから正直合ってるか自信がなくて。この国に他にサーカス団があるか確認したかったの」
「申し訳ない、あまり情報がなくて。
マリッサが心当たりがあって助かった」
ザイアスがお礼を伝えていると、鉄道が首都に到着した。一行は鉄道を降り、駅から出て、まずは宿を探すことになった。
駅を出ると五階建てくらいの煉瓦作りの建物が規律良く立ち並んでいた。どうやら一階がお店で二階以上が住宅のようで、駅近辺だからか人の行き交いも多い。
駅の前の前には大きな噴水があり、おしゃれな雰囲気だった。
「リッシェとクリーネとは違う雰囲気だね。同じレンガ造りだけど、建物が高いね」
アメリアが噴水を眺めながら話す。
クリーネとは学園都市があった国で、両国とも煉瓦作りの建物が主流だったが、高さはなかった。
「この国の女性はドレスみたいな服装だねー」
「ああ、リッシェというかマニフィとクリーネは上下別れていて動きやすそうな服装だった」
マニフィはリッシェにある四人が通っていた学園がある街の名前だ。
国の文化による違いを目の当たりにするザイアスとノアとアメリア。それを聞いていたマリッサが補足をする。
「ここは首都だからというのもあるかも。
私の実家があるところだと、ペイシルに近いかな」
「なんかいいねー、そういうの。
いろんな文化に触れられるのって楽しいよね。
食べ物とかも国によって全然違うしねー」
マリッサも同意しており頷いている。
宿を探しながら話をする。するとマリッサが足を止めた。
「ここ、宿だよ」
とりあえず入り空室を聞いたところ、二部屋あるそうで、本日の寝床は確保できた。近くに飲食店も見つかったため、そこで夕食をとることにした。
お店もそれほど混んでなかったため、すぐに案内をされた。メニューを見ると三人にとってあまり馴染みのない料理だったため、マリッサが何品か注文をした。
十数分ほど待つと、料理が次々届いた。
「これ、なに?」
届いた料理をみてアメリアが尋ねる。
「ブイヤベースだよ、はじめて?」
「魚?」
「貝も入ってるよ」
アメリアが育ったリッシェは陸続きで海がないため魚の流通は少ないため、魚を口にすることは少ない。
「……不思議な味がする」
アメリアが難しそうな顔を浮かべている様子からするとあまり嗜好に合わなかったのだろう。
そんな様子を三人は微笑ましくみていた。
「リッシェは味付けがシンプルだからな。
魚もあんまり食べないし」
ザイアスがフォローする。
「でもこれはすごく美味しい」
ポトフを指差しながらアメリアは言う。
一行は食事を楽しみ、宿へと戻った。
ザイアスとノアの部屋に集まり話をする。
「明日は観光案内所で話を聞こうと思ってる。
あと一つお願いがあるんだけど……」
言いにくそうにしているマリッサの言葉を待つが、なかなか出てこない。言葉を選んでいるのだろうか。
「んー、吸血鬼っていうのは隠しておいた方がいいのかな」
マリッサが言いにくそうにしているため、フォローをするかのようにノアが言った。
「うん」
少し驚いたようにマリッサが頷く。
「今日この国に着いてから一度も吸血鬼を見ていないからねー。ほとんどいないのかな」
「あとラルジュはシエレトワレ戦役があったな。
十年くらい前か」
「そう。元々吸血鬼は少なくてあまり馴染みはなかったけど、シエレトワレ戦役後は吸血鬼に良いイメージを持たない人も増えた」
シエレトワレとはこの国ラルジュにある地名で、マリッサとザイアスが話す通り、複数人の吸血鬼と人間による争いがあった。犠牲者は約千人。
元々争っていたとかもなく、突然吸血鬼がやってきて、惨殺をしたといわれており、理由なども明かされてないため、現地の人にとって吸血鬼は忌まわしい存在に近い。
「わかった、話さないようにする」
幸い、人間からは吸血鬼と人間の見分けはつかないため、言わない限りはバレることはない。
ザイアスもノアも了承し、この日は寝ることになった。




