16 学園祭
いよいよ学園祭当日を迎えた。
この日は学内公開であり、外部からの来客はない日である。
マリッサとサリはいつも早く出勤して、会議と飲食物の搬入があったのみでこの日は自由に動けることになっていた。
二人で学園祭を見回りを兼ねて廻っていたところ、聞き覚えがある声がした。
「お久しぶりです、お二人とも」
「アルベールトさん!」
サリがアルベールトに向かって振り向きながら明るく反応をした。
「お二人は自由時間ですか?」
「はい、今日はもう特になにもすることがなくて」
「ちょうどよかった。これからアメリアさんのクラスのミュージカルを見に行くのですが、ご一緒にいかがですか」
マリッサは時計を確認しながら返事をする。もうすぐ開演の時間だった。
「はい、私たちも観に行こうと思っていて」
三人で見に行くことになり、時間もないのでそのまま講堂へと向かう。
「アメリアたちと最近あってるの?」
「会ってるけどあんまり時間はとれてないかな。クラスの出し物の準備で忙しそう。特にアメリア」
「ミュージカルって準備がものすごく大変そうだもんね」
「そういえばアルベールトさんのクラスは?」
「私はクラスはもってないので、学園長の手伝いをしていました」
講堂へと向かっている間、話をする三人。
アルベールトはクラスは持たず学園長と共に学園祭にくる来賓向けの案内や連絡などをしていたらしい。
ほどなくして講堂に着き、案内に従い席へと着いた。
開幕のブザーが鳴り暗転した。
時は昔。二人の男女がいた。仲睦まじく話をして恋愛関係となる。しかし、両者の家族は結婚を認めない。なぜなら身分差があるためだった。女が貴族階級、男が普通階級。決して二人は諦めず必死に説得をする。ついに周りも諦め結婚を認めた。
二百年弱たった後、二人の家族が反対を二人の結婚を反対していた真の理由を知る。
寿命に大きな差があるためだった。残された方も残す方も辛いだろうという家族の思いやりゆえだった。
女は男の死後、生きる希望を見いだせず長きにわたる眠りにつくことを選んだ。
三十分ほどの劇が終わった。
高い完成度に観客は驚いていた。あまり明るい話ではないが吸血鬼の中で有名な昔話だった。
「お二人ともわかりましたか?」
アルベールトがマリッサとサリに聞く。吸血鬼の階級制度を理解していないと、よく分からないことを気にしてくれていた。確かに人間である二人にとってあまり馴染みのない知識である。
「階級とか詳しくないですけど、分かりやすかったです。悲しいけど、素敵なお話ですね」
答えたのはサリ。
「ええ。昔話ですが、今も人気があります
あのお話のように身分差のある恋をする方々が真似をして話題になることもあります」
昔は世間体を気にして身分差のある恋は許されなかった。そもそも寿命の違いで身分差のある恋は少なかったらしい。そのため異端扱いをされていたという背景があると教えてくれた。
今は異端扱いはされないが、お互い辛い思いをするのが明白なのはわかっているので、そもそも恋愛関係にならないのが一般的だという。
講堂を出た後はアルベールトは学園長と打ち合わせがあるため別行動となった。
二人はお腹がすいてきたため喫茶店を開いているクラスに入ることになった。
「アメリアとザイアスさんって付き合ってるの?」
二人は注文したパスタを待っている。その間にサリが話をふる。
「いや、付き合ってないよ。
ザイアスはわからないけど、アメリアは恋愛感情は抱いてないと思う。どちらかというとお兄ちゃん的な感じかな。ノアに対してもだと思うけど」
マリッサは思い返す。アメリアからそういう話が出たことは少なかった。別の人から告白されたけど断りたいとかそういう話が出たときに好きな人がいるのかと聞いたことはあるが、洋服作る時間を減らしたくないと言われた。
「そうなんだ、相手は吸血鬼だもんね。マリッサは好きな人いないの?」
「えっ!私もいないよ」
マリッサが一瞬動揺したことを見逃さなかったサリ。パスタが届き二人は食べはじめた。
「えー、いるよねー」
「いないよ」
マリッサが頑なに否定をするため、これ以上サリは追求しなかった。
一方ノアとザイアス。
二人もアメリアのクラスのミュージカルを見に来ていた。丁度幕が降り終わったところである。
「なつかしいねー。
これ、ものすごく流行ったよね。今でも定期的に話題に上がるけど」
「そうだな」
吸血鬼にとっては知らない人は少ないといわれるくらい有名なお話であるようだ。
「ザイアスさー、アメリアとはどうなの?」
ノアがにまにまとしながらザイアスに聞く。ノアの突然の問いに対してザイアスは落ち着いて返事をする。
「アメリアは俺のこと兄としてとしかみてないだろ」
「んー、まあそうだね。で、ザイアスは?」
「大切にしているつもりではある。
どちらにせよ恋愛感情は身分差あるし抱かないようにはしてる」
ザイアスは悲しいことをいっている反面吹っ切れてるのか、表情には出ていなかった。
「そうだねー、俺もあんまり人のこと言えないけれど」
ノアもこれ以上茶化すことはやめた。
ザイアスもノアが想っている相手がいることを察しはしたが追及はしなかった。
講堂から出て二人もごはんを食べることにした。
朝が近づいてきて、1日目の文化祭は終了となった。
各クラス最低限の片付けを行い、明日の休みをどうするかを話し合い、届け出をだした。
大きな問題はなかったため、安心して二日目、三日目を迎えられそうである。




