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遥かなる旅路で  作者: 星野すばる
学園都市編
17/91

7 学園の実態


ザイアスたちが眠りについた頃、マリッサは目を覚ます。顔を洗って買っておいた朝食を食べ、身支度を済ませる。

マリッサも自身が担当する学園に向かう。この日はサリと一緒に予算を分配するためのアドバイスの準備をすることになっている。


マリッサとサリが行うのは学園祭運営の補佐。学園祭までまだ三ヶ月後あるため、まだクラスや部活動がどのような出し物をするかが決まっていない。予定としては今週中に決定し、そのあと生徒会により予算の分配が決まる。


二人は昨年の資料を見ながら、昨年の問題点や改善点をまとめたていた。


「明日中にまとめないとね。今週中には、生徒会と話さなきゃ」


本日の就業時間が終わる頃、体を伸ばしながらサリが言った。


「今日は問題点とか改善点が出たから、明日は資料にすればいいのかな」


マリッサも同じく体を伸ばした。


首をこきこきと動かしながらサリはマリッサに話かけた。


「そういえばさ、あの夜間部ってだいぶ荒れてるんだって」


「荒れてる?」


「素行が悪いって言えばいいのかな。

そのせいで講師がどんどんやめたんだって」


噂で聞いたらしいサリが少し声を押さえながら話をする。


「理由知ってる?」


「噂だけど、なんか有名だった講師がやめてからみたい」


「スクールだとよくある話だけど」


スクールは義務のため、素行が悪い生徒が集まってしまうこともある。一人の講師が押さえつけたがいなくなってしまうことによって押さえ込めなくなってしまうこともよく聞く話である。学園となると学びたい一人が集まるため、あまり聞かない話だが、サリによるとどうやら事情は違うらしい。


「夜間部だと、暇をもて余して入学する人も多いみたい。

私たちにはその感覚はよく分からないけど」


人間と吸血鬼では生きる時間が違う。そのことを言っているんだろう。

ほどなくして就業時間が終わり、二人は学園を出た。サリは寮へと帰り、マリッサはザイアスたちと夕食をとる予定だ。


「そういえば、今度のお休みに遊びに行かない?マリッサの友達も誘って。休みの日は一緒だよね?」


別れ際にサリから提案があった。マリッサは誘ってみると返事をして別れた。


マリッサが待ち合わせのお店に入るとザイアスたちはすでに居た。このお店はマリッサが働いている学園とザイアスたちが通う学園の中間地点に位置しており、価格もお手頃で四人は気に入っている。マリッサも席について注文を済ませた。


「今度のお休みどこかいかないかって友達が言ってたんだけど、どう?」


ザイアスたちも了承し、今週末は五人で出掛けることになった。

食事が届き、四人は食べ始めた。


食べ終わると三人の出勤時間となった。店先で別れ、マリッサは寮へと向かい、三人は学園へと向かう。


本日から講師として講義を行うことになっている。三人は昨日講義の予定表を渡されており、アメリアが心配なザイアスとノアが講義の時間を確認したところ、ノアが空いている時間にアメリアの初講義があるようだった。


アメリアが講義室へと向かうと十五人くらいのクラスだった。アメリアは教壇へと立つ。ノアは後ろで様子を見守ることにしていた。


「はじめまして、アメリア・リスナールです」


アメリアが自己紹介を始めるが、一部の生徒たちは見向きもせず雑談を続けていた。アメリアは少し戸惑いながらも続ける。


「これから講義を始めます」


いつもより声を張り上げたアメリア。雑談をしていた女子生徒の一人がアメリアを見つめた。


「先生、人間だけど教えられるのー?」


少し小馬鹿にしたような口調で彼女が問うと、一緒に雑談をしていた女子生徒たちがくすくすと笑い出す。状況から察するにどうやらこのクラスの中心の生徒のようである。ノアは眼を少し細めて、見守っている。


「それはどういう意味ですか」


素直に疑問に思ったことを口にしたアメリア。


「どういう意味ってそのままだよ。人間が吸血鬼に教えられるのかってことだよ」


吸血鬼の方が一般的に頭の回転や記憶力が良いと言われている。彼女はその事をいってるのであろう。


「それがなにか関係あるのですか」


アメリアがまた素直に返す。


「あるよ、発想力とかも吸血鬼の方が優れてるからこの授業で貴女に教えられることがあるのかって聞いてるんだよ」


少し苛立ちながらいい放つ彼女。どうやらアメリアの反応は予想外だったらしい。別の女子生徒も口を挟む。


「その服、メルクラだとおもうけど、それも吸血鬼のブランドだしねー」


再度笑い声がした。嘲笑するような笑い方だ。ノアがさすがに口を挟もうとしたところ、


「吸血鬼のブランドとか、人間のブランドとかって何で決まるんですか」


「吸血鬼が作ったか人間が作ったかだよ」


「見分けられるのですか?メルクラも吸血鬼が作ったブランドって公表されてますか」


アメリアが問うが、回答はない。

それもそうで、見分ける方法はほとんどない。例外はデザイナーや作製者が素性を明かしている場合のみである。

そもそも、メルティクラウンはアメリアが独自で立ち上げているブランドのため、吸血鬼で流行っているブランドではあるが、彼女たちが言う吸血鬼のブランドではない。


「貴女方は人間が作ったものは着ないのですか。

どれだけ好みでどれだけ気に入ったとしても」


最初に話しかけてきた女子生徒に向かって、アメリアはいい放つ。講義が始まる前の緊張している様子とうって代わって、アメリアは堂々としていた。しかし、手は怒りからかもしくは怖さからか少し震えている。


「……」


沈黙。どうやらそうではないらしい。


「好みは吸血鬼だからとか人間だからとかではなく、それぞれだと思います」


思いを述べたアメリアは手の震えは収まっていた。生徒たちは静かになったところで、アメリアはまだ話を続けた。


「吸血鬼が、作った服しか着ないということを否定する気はありません。ですが貴女方は将来の進路は、お店を持ったり、実家の跡継ぎをしたりすると聞きましたが、吸血鬼だけに着て欲しいんですか」


アメリアは言い切った。反論も雑談も嘲笑もなくなったので講義を行うことにした。



「このクラスは自分達が作りたいものを作らせてくれと言われてます。そのように講義を行おうと考えておりますが、よろしいでしょうか」


言葉を返す生徒はいなかったため、異論はないと判断したアメリアは講義を進める。


このクラスの生徒たちは一通り作製ができるとのことで、一週間で一つ洋服を作製をするように指示をした。クラスを二つのグループに分けて、モデルを決めてその人に似合う服を作製していく。モデルの人は自分が好きなものを作製すると話をする。


「自分が好きなものを作っていくのもいいですが、仕事の場合はそれだけでは成り立ちません。自分が好きなもの以外も作れるようにするために、このような形式で行います」


理由を話したアメリアに対してうなずき始めた生徒たち。


「では始めてください」


各々のグループでモデルが決まり、作成がはじまった。

各々がデザインを描きはじめ、アメリアはその様子をみながら、自分も作製した。


この日はまずはデザインをはじめるが手が止まっている生徒がいるようであれば、アドバイスをしていていたところ時間が来たため、アメリアの初授業は終了した。


アメリアは部屋を出る。すでにノアは部屋を出ていた。アメリアはノアの方へと向かう。


「すごい緊張した」


「お疲れ様」


笑顔でアメリアの頭を撫でた。


「どうなるかと思った」


「アメリアの言葉は彼女たちに響いたんじゃないかな」


「そうだといいな」


深いため息をつきながらも足取りは軽そうなアメリアは講師室へと戻り、これから初講義のノアはクラスへと向かった。


ノアとアメリアは二つ、ザイアスとアルベールトは三つの授業を終え、この日は終わった。


三人はいつも通り一緒に寮へと向かう。


「くせ者が多いな」


ザイアスは疲労を見せながら呟いた。


「やっぱそっちも?俺もそうだった」


ため息混じりにノアも同意する。


「アメリアは?」


「最初は大変だけどなんとかなったよ」


「アメリアのところ、最初ちょっと口出そうかなって思ったよー」


どうやらどこも同じ状況のようだ。


「この状態を改善するのが近道か」


ザイアスが少し嫌そうに言ったことに対し、ノアは同意した。

休み明けに職員会議があるとのことで、その様子をうかがうことにした。


アメリアの寮に着いたところで、アメリアと別れ、ノアとザイアスは再び話始めた。


「いやー、どのクラスも有名な貴族の子供がクラスの中心だねー。国を出るのがはじめてなのか、世間知らずが多いというかなんというか」


「どこもそうなのか」


貴族階級は、純血種を主とし、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵である。


「ザイアスはその点楽じゃないの?」


ザイアスは公爵家の長男であり、貴族階級は爵位を重視するため、逆らうものは少ないのではないかとノアは尋ねる。


「俺はあまり顔を知られてないからな。ノアは?」


「俺も顔は知られてないし、話し方が軽いって言われた」


ノアは笑っている。対してザイアスは否定はできない様子だった。二人は部屋の前で別れ、各々の部屋へと戻っていった。

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