6 学園見学
三十分ほど講義を見学したあと、次の講義に向かうことになり、部屋を出る。
服飾と絵画の講義はすでにもう一通り学んでいるクラスが担当のため、自由にして構わないと案内してくれている講師が教えてくれた。
次に史学、その次は語学の講義を見学した。こちらはザイアスとアルベールトが担当をするがカリキュラムがあるため、そちらに沿ってほしいとのことだった。
最後に服飾の授業を見学し、一旦講師たちが集まる広い部屋に案内され、明日からどの講義を担当するかや、ザイアスとアルベールトにはカリキュラムの説明をされた。また、学園内の構内図も渡してくれた。
一日五時限あり、一時限は九十分。ザイアスとアルベールトは一日三時限ほど、ノアとアメリアは二限ほど、空きコマは講義の準備や学生の相談にのってほしいとのことだった。
講義の準備や学生の個別相談に乗れるよう各講師に講師室と呼ばれる個室が用意されているらしく、部屋に案内してもらった。一度先ほどの部屋まで戻り、その他細かいルール等を教えてもらった。
話は終わり、解散となった。案内をしてくれた講師にお礼を伝えると講師はこの後講義があるらしく足早に去っていった。
「気になっていたのですが、その服メルクラですか」
アルベールトはアメリアたちの服を見ながら三人に聞く。
ノアとザイアスはアメリアが作った服という認識しかないため、なんのことかわからない様子である。
「そうですけど、ご存じなんですね」
アメリアが少しばつが悪そうに返す。
「メルクラ?」
首を傾けるノアに知らないのかといいたげな表情をしながらアルベールトは話を続ける。
「メルティクラウンというブランドです。吸血鬼の貴族階級の一部で流行っていますが、一点物がほとんどで手に入れるのも大変なんですよ」
教えてくれたが、アルベールトは続けた。
「店も構えていなくて、いくつかの服屋でたまに販売されるだけで、流通量が少ないのことが影響して、流行っている界隈では着ているだけでステータスとまで言われるようなブランドです」
アルベールトは普段は余裕がありそうな雰囲気をしているが、今は熱量が凄い。アルベールト自身もメルティクラウンが相当好きなのであろう。対して三人は突然口数が増えたからか若干引いている。
「えと、アルベールトさんのスーツもよく似合っていて素敵ですね」
このままだと永遠に話続けられそうなことを悟ったのか、アメリアが話を無理やりずらそうとした。話をずらしたかったのもあるがアメリアの言うとおり、アルベールトが着ているスーツもポケットのところにラインが入っていたり、色がダークグレーだったりと細部にこだわりがあり、形もアルベールトによく似合っていた。
「ありがとうございます、この服はまた別のブランドなのですが、私のお気に入りです。すみません、熱くなってしまいましたね」
どうやらとてもおしゃれが好きなようである。話は終わり、アルベールトは講師室で作業をするとのことであり部屋を後にした。
三人はザイアスが図書室に寄りたいとのことで、図書室に寄る。学園なので専門書はもちろん文芸書や雑誌も揃っていた。講師も借りることができるとのことで、ザイアスは主に担当することになっている史学の専門書を数冊借りていた。
この日は寮に戻ることになった。寮へは学園から近く、徒歩で五分ほどの距離だった。
「そういえば、メルクラってアメリアのブランド?」
ノアが先ほど抱いた疑問をアメリアに確認する。
「うん。ブランドってほどじゃないつもりだけど。
たまに学園のときの先輩のお店においてもらったり、学園の時の友達のお店にオーダーメイドしますって張り紙張らせてもらってたりしてたの」
そうしたところ、口コミで広まったらしい。
とくにオーダーメイドが人気で、決して安くない金額だが、張り紙を張るとすぐに注文が埋まる。
「吸血鬼に人気なのは知らなかった」
「俺ら気づかずすごいもの着てたんだな」
「ねー」
再度、自分が着ている服をまじまじと見ながら話す二人。歩いていると寮に着き、アメリアは女性寮の自分の部屋へと戻っていった。
夜勤向けの女性寮と男性寮は隣同士であり、ザイアスとノアもすぐに寮へと着いた。部屋は二人とも三階で、階段を登りながら話す。
「アルベールトさんのことは杞憂だったみたい。ただアメリアのブランドが好きなだけだったのかも。
いきなり話しかけられたから怪しい人かと思ったよー」
苦笑しながらノアが口を開いた。
「そうか」
「悪い人ではなさそうだから、もう気にしないことにするー」
面接の合否のこともあり、問題がある人はほぼいないだろうことはわかっていたが、実際に話してみたことで、悪い人ではないと判断したようだ。
明日からは状況などを見極めながら職務をこなすことにした。二人の部屋がある三階に到着し、少し廊下を歩き各々の部屋へと戻った。




