4 学園都市での面接
夕方になり、学園都市へ面接に向かった。町から出ているバスに乗る。この日は昨日に比べてバスは混雑をしていたが、座ることができた。
「アメリア、緊張してるかもだけどいつも通り話せば平気だよ」
マリッサがいつもに増して口数が少ないアメリアを気にした。四人のなかで一番話すのが苦手であるアメリアは緊張していたらしい。
「落ちたら落ちたで仕方ないよー。
誰か一人受かれば、なんとかなるだろうし」
後ろの席に座っていたノアが二人の会話を聞いていたようで、フォローをする。
募集要項には詳しい仕事内容は書かれておらず、もし面接に受かっても何をするのかは分からない。職業斡旋所にいた受付の人曰く、とりあえず人数を集めて数ある職種の中の適正で合否を決めるスタイルではないかとのこと。
話をしているとバスは学園都市に着いた。
門の前に係と思われる人が立っており中に案内された。
学園都市内の一つと思われる学園の一室に案内された一行。広い部屋の中には受験者と思われる人が三十名ほど居た。
案内された席に座り待っていると面接の案内がされ、数人ずつ名前が呼ばれ各々部屋が指定される。個人面接らしい。
一行も名前が呼ばれ面接を受けた。面接が終わったあと、また部屋に案内された。
一行が最後の面接者だったようで、席に着いたあとすぐに係の人が入ってきた。見渡すと最初に集まったときと比べて数人減っているように感じた。
「お疲れさまでした。この部屋にいる方は合格です」
一行は安堵したような表情を浮かべるなか、説明は続く。
「仕事内容は主に二つとなります。学園祭の補佐と夜間部の講師です」
今回の職員は期間限定であり、任期はひとまず三ヶ月。その後希望者は延長の可能性ありとのことである。
「先ほどの面接を考慮し、お願いしたい仕事を決めました」
マリッサが学園祭補佐、残り三人は夜間部の講師だった。アメリアは驚き他の三人を見てみるが、同じように驚いていた。講師を担当するのは、三人を含めて全体でたった四人だった。
「このあと担当ごとに別れて説明をさせていただきます」
係の人はザイアスたちを別室へと促した。素直に着いていく三人。部屋につくと、ノアとアメリアが職業斡旋所で会った暗めの銀髪・グレーの眼をした吸血鬼がいた。四人目は彼だったらしい。
「やっぱり、また会いましたね。
お嬢さんがこっちだとは思わなかったですけど」
彼が声をかけてきた。どうやら彼も職員希望だったらしい。
席に着き、説明が始まる。
知っている通り、学園都市はいくつかの学園が集まっているが、吸血鬼が通う、夜間に講義する学園も二つあり、その片方の学園の講師をするとのことだった。
係の人が話すには、その学園の学生は少しくせ者揃いで正直今の講師だけでは手がつけられない状況であり、やめてしまう講師も何人かおり、急遽募集したとのことである。
仕事は夜から朝まで。教員寮があるためそこで生活することになった。着任日は明々後日。今日からでも寮に入ってよいとのことであるが、荷物が宿にあるため、三人は街の宿においてある荷物を取りに行くため明日に入寮することにした。
係の人がひとしきり話したあと、質問がないかと尋ねられた。
「失礼ですが、私は人間ですけど大丈夫ですか」
担当が発表されてからこのことが気になって仕方なかったアメリアがおずおずと聞く。
「講師陣にもいるので平気です。
あなたには服飾を教えて頂きたいと思いました。もしよければご自身で作った服を着てきてください」
詳しく聞くと、夜間部の服飾科に欠員があるためアメリアが選ばれたらしい。ザイアスと銀髪の男は学術全般、ノアは絵画が担当予定とのこと。
「手がつけられないと仰っていましたが、詳しく聞いてもよろしいですか」
次に銀髪の男が尋ねた。
「この夜間部は貴族階級の学生が多いんです。そのため、普通階級の講師を馬鹿にして、講義にならないことが多くなってしまったのです」
その学園の関係者なのか事情をよく知っているのようで、ため息混じりに係の人は教えてくれた。ザイアスとノア、銀髪の男は納得した様子だった。
「基本的に講師は一人で講義をするのですか」
ザイアスが聞く。アメリアの心配である。ザイアスとノアは貴族階級のことはよく分かっている。
「はい。ですが、アメリアさんは大丈夫だと思います。
心配であればザイアスさんとノアさんの授業が空いていればついていって頂いても構いません」
係りの人は察してくれてた。何をもって大丈夫なのかわからないが、二人はどちらかが着いていっても構わないなら良いかと納得した。
説明をしてくれた人から寮の場所などが記載された紙を渡された。話が終わり解散となった。
「これからよろしくお願いします」
銀髪の男が話しかけてきたので、ザイアスが返す。
「こちらこそよろしくお願いします」
銀髪の男はこれ以上関わることなく、先に部屋を出ていった。三人も特に部屋に残る意味はないので、面接後に案内された部屋の近くへとむかった。
マリッサの方も話が終わったようで、四人は街の宿へと戻った。
バスの中で話をしたが、マリッサは学園祭のスタッフをするらしい。
主に当日は警備を行い、当日までは、学生たちが頼んできたものの発注がメインになるとのこと。
学生自身が行う学園もあるが、今回職員募集があった学園はスポーツの専門らしく、職員を雇って毎年行っているらしい。
マリッサも職員寮に入るが、ザイアスたちとは別の棟となる。
「なんか寂しい。最近マリッサとずっと一緒だったから……。それにマリッサ一人になっちゃう」
明々後日からの不安もあるのか、面接に向かうときより元気がなくなったアメリアが呟く。アメリアとマリッサは旅が始まってから、宿の部屋も同じことが多く、ずっと一緒にいた反動もあるのだろう。
「ずっと会えない訳じゃないからね。私も出身が同じ女の人がいて、仲良くなれたから大丈夫だよ」
諭すようにアメリアの頭を撫でる。
「吸血鬼だらけは不安だと思うけど、俺たちもいるから大丈夫だよー」
「アメリアから片時も離れないでね」
マリッサはノアに訴える。過剰に見えるが、人間は不用意に吸血鬼に近づくことはしないのが普通の反応である。
「まあ何かするやつがいたら、ザイアスが黙ってないもんねー」
ノアがいつも通り茶化した。
話も明るくなったところで、バスは町へと到着する。
今日は解散することになった。
マリッサも明日から入寮できるとのことで、四人で明日も学園に行くこととなった。
ザイアスとノアは部屋へと戻り二人は話を始めた。
「なんか俺の杞憂だったみたいだねー」
「あの男か」
「そうー」
「学園都市側もよく調べてるみたいだから、まずい家柄やヤバいことをしてる人ではないな」
不合格者には、昔リッシェで問題を起こした元人間と前科持ちの人間、吸血鬼至上主義の家系である貴族階級がいたとザイアス。ノアもその事に気づいていたとのこと。
警戒するに越したことはないが、考えすぎもあまりよくないと二人は思い、あまり気にしないことにした。




