002ものの見事に戦力外
『さて試験を始めよう』
次に光が集まり形を作っていく。
緑の肌の禿げ頭。
細い手足に低身長。
汚いぼろ布の腰にまき。
腹はぽっくりと膨れ上がり。
顔はいかにも人類の敵という感じで実に敵意に満ち溢れた憤怒の表情。
異世界ラノベでお馴染みのゴブリンがそこにいた。
『こいつが現在確認されている最弱のFT敵性個体001ランクE通称ゴブリンさ。でも甘く見ちゃいけないよ。単体ではこいつらは最弱でも群れる習性があるからね。集団戦では初心者の手痛い相手さ』
やっぱりテンプレ的に女性を襲うのか?
『いいや襲わない。彼らFTの存在の核は異世界にあると言われていてね。こちらの世界に干渉してくるのは一定量の物理エネルギーの籠った攻撃か、熱や電気や風と言った魔法だけさ。FTは個体の寄って魔法を使う信じられないだろうが真実さ。そしてそれ以外の干渉は今の所確認されていない、詳しくは分かっていないが存在の核がこの世界にないため、この世界の生き物と触れたり生殖行動を行う事やこの世界の食料を摂取できないと言われている』
つまりFTの攻撃だけがこちらに干渉してくると?
『その通りさ、そしてFブレイカーを使わない普通の攻撃は全てすりぬけてしまう。何故か障害物はすり抜けないのが救いだがね。おっと少し長話がすぎたね。話を勧めよう。機器を生成する出来たら水晶玉に手をがざしてくれ』
すると俺の目の前にテーブルにのった水晶玉が生成された。
ゴブリンは憤怒の表情のまま微動だにしない。
『安心したまえ、このゴブリンは僕の制御下におかれている。襲い掛かったりしないよ。さあ手をかざしたまえ』
こうか?
俺が水晶玉に手をかざすと、半透明のウインドウが浮んでくる。
項目は剣、槍、盾、弓、銃の5つ。
一見すると弓と銃は重複しているようだが、矢は放物線上に飛び銃の弾は直線。
似て非なる物だ。
『凄いよ君。すべての適正Maxじゃないか、しかし残念だ今の技術ではFブレイカーのモードは一回設定したらもう二度と変える事は出来ない。まず威力の確認からだ。それを踏まえよく考えて選ぶ事だね』
すると俺の前に5つの武器が乗った台座が現れた。
まずは剣か。
俺は無情さに台座の剣を取りゴブリンに切りかかった。
◇
『驚いた。僕のそれなりに適性試験を行ってきたけど。君みたいな人間は初めてだ――』
佐藤歩はそう言葉を続ける。
『まさかゴブリンすら倒せないなんて――』
結果から言おう。
俺の攻撃は一切ゴブリンに通用しなかった。
剣による一撃は手の剣が根元から粉々に砕けちり。
槍の一撃で槍がひしゃげ。
盾はゴブリンを叩いただけで二つに割れ。
弓と銃に至っては打つ事さえできなかった。
マジかよ予想外の自分の無能さに自分でも驚いている。
『残念だよ竜村セカイ君。可哀想だけど君の人生はここで終わりさ。だけど君の命は無駄にしない。僕たち保持者の体にはFTのエネルギーの塊がある。それはFブレイカー精製や発電にも使えるからね』
待ってくれ俺はまだ何もしてない!
『すまないがこのまま君を放置する理由はない。僕たちの戦況は劣勢でね。もっとFブレイカーを量産する必要がある』
待ってくれ!
俺はありったけの言葉で叫んだ。
『ではさようなら竜村君』
待って! 待って! 俺はさらに叫んだ。
すると。
『なんだって!? 運がいいな竜村君。何万分1かの確率で生き残れたらまた会えるかもしれない。この地獄から抜け出せたらだけど』
その言葉に辺りの光景が霞んでいく。
『気が変わったこれだけの悪運あればあるいは。意識だけは覚醒してあげるよ。本当に敵を討つ気のあるならこの地獄を生き残りたまえ』
それで俺の意識は途絶えた。
次に気づくと俺は体に違和感を感じた。
右手首にかかる痛みに頭の異物感。
俺は目を開いた。
「ここはどこだ?」
そこはガラス張りの部屋にベットが1つ置かれ。
右手首には点滴針がつけられ頭にはよくわからないヘルメット状のモノが被せてあるようだ。
「痛ってとりあえず針抜くか」
俺は点滴針を抜き頭に被らされていた得体のしれない機器を取る。
俺は白い服を着せられていた。
俺の右手の甲には黒い宝石のようなものが覗いている。
これがFTのエネルギーの塊なのか?
「とりあえず状況確認か」
俺はその部屋から出た。
透明なガラスの扉はカギがかかっておらず俺は難なくガラス張りの部屋から出る事が出来た。
その外には沢山のPCが置かれていて、俺を研究していたようだ。
先ほどまで俺に語り掛けていた佐藤歩どころか人の影すら見当たらない。
適当にPCを操作してみると本当に4年たっていた。
数台のPCで同じ西暦だったのだ間違いはないのだろう。
「なんで人がいないんだ?」
明らかにおかしい机は乱雑に引き出しが開けられ。
PCのほとんどが電源を切っていない。
余力がないなら電力も貴重なはず。
何か起こったのかは間違いない。
「ビギャ~~~~~~~~~~~~!!」
その理由は突然現れた。
「なんだこいつ」
それは3メートルを超えるサメに手足の生えたような化け物で目玉が存在せず。
俺に向かって一直線に大口を開けて突進してきたのだ。




