000始まりの日
その日俺たちの世界はファンタジーに蹂躙された。
少し前まで当たり前だった高校での生活。
それが終わった日運命の5月5日。
あの時俺はぼんやりと良く晴れた窓の外を眺めていた。
代り映えのしない生活――。
退屈ながら平和で大きな事件のない日常――。
担任教師は最近結婚してのろけ話を連発して煩わしい――。
穏やかな日常は頭の中をふんわりと平和ボケさせていた――。
それが終わったのは11時40分ぐらいだったはずだ。
「なんだあれ?」
俺はそう呟いて窓の外の空に浮かぶ黒い何かを見つめた。
雨雲? かそれにしてはやけに黒いしあんなピンポンとで雨雲なんてできるものなのか? 蠢いているような……
「竜村授業に集中しろ!」
「先生でもあれ……」
「外が何だ? なんだありゃ」
俺がさした先の晴れた空は曇天へと染まりかけていた。
先ほどの小さな雨雲が急激に膨れ上がったのだ。
クラスの連中も気づいて騒ぎ出している。
「何か出てくる」
何故かそれが分かった。
次に曇天から何かが現れた。
「隕石? いや違う」
曇天から何かがこっちに向かって来る。
次にそれはガコン! 俺たちのクラスの外壁に当たった。
大穴が開くがクラスメイトは騒いでいない被害はなかったようだ。
「人間コスプレ?」
その若い男は白い鎧と剣で武装していた。
鎧もそこっからみえる体も傷だらけで明らかにふらふらだ。
俺から凄く近い位置にいる。
「-------!!」
男は何かを叫んだ。
だが聞いた事のない響きで、全く理解できない。
次に曇天から黒いとてつもなく巨大な何かが現れた。
「------!!」
「竜?」
誰かが言った。
それは闇を纏い漆黒の鱗と爪、牙でさえ同色のドラゴンだった。
大きさはこの学校の大きさの半分はあるだろうか。
「----!! ------!?」
鎧の男は剣を構えた。
「まじかよ!?」
ドラゴンの口にエネルギーが集まる。
あんな巨大なドラゴンからあんなもの放たれてはただではすまない。
しかし、逃げる暇などなくドラゴンブレスは無慈悲に放たれた。
それは一瞬だった。
黒い光は俺の視界一杯に広がり。
俺たちのクラスを包み込んだ――。
次に気づくと。
「なんで……なんで……俺だけ!?」
辺り一面消し炭で多く学校の外壁はえぐられクラスメイトは椅子に座ったまま、机と椅子炭化している。
俺は思わず手を伸ばしたが、崩れて炭の粉に変わった。
俺の幼なじみも、親友も友達も気になっていた女子も全て……遺体すらない奴もいるのだろう。
学校はギリギリ原形をとどめ、その威力を物語っていた。
俺だけ無傷。
鎧の男の姿は見えず彼の持っていた剣が俺の目の前に突き立てあった。
次に俺の意識はそこで途絶えた――。
痛みは無いが眠い体に何かが染み渡っていく感触――。
後に知る事になるがその日、人類はFTファンタジーテロリストと初めて遭遇したのだ。