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都市開発②

 み?

 ギルド一階のロビーへ降りたグリムと少女。

 二人はそこで、一人の冒険者に絡まれていた。


 「おうおうそこの別嬪さん。そんな怪しい奴なんかより俺と遊ぼうぜ」と無遠慮に声を掛けてきたのは大柄な男である。

 当然、グリムは「どうぞどうぞ」と少女の肩を押した。


「ねぇ? そろそろ待遇の改善を要求してもいい頃合いじゃあないかしら!」


「貴様一人で面倒事を避けれるのならそうすべきだろう。さぁ寝てくるが良い」


「もう! 十分で終わらせてやるわ!」


 等とぷりぷり怒りながら豪語し、少女は大柄な男の手を引いてギルドから出て行った。

 連れて行かれた男は予想外な展開について行けず、終始戸惑った様子だった。そして、何処からかむさ苦しい男の呻き声が響いてくる。


 その後、少女は「ふぅ……」と何処と無く清々しさを感じさせる調子で戻ってきた。ついでにストレスの発散でもしたのだろう。


「やらしい奴め」


「何時でも体験させてあげるわよ?」


「間に合っている」


 歴史ある貴族であるグリムは迂闊に女性と肉体関係を築く訳には行かない。混乱の元は出来るだけ排除する主義だ。そして童貞である。


 何が間に合っているのだろう。


 外に出ると、先程の男が建物のすぐ傍に尻を丸出しにされて横たわっていた。その体はピクピクと痙攣しており、白眼を剥いて泡も噴いている。意外にもぷりけつだ。


 自然、グリムは半眼で少女を睨んだ。


「後始末ぐらいちゃんとしろ」


「見せしめにしようかと思って」


「なら良し」


「良くねぇ!?」


 ガバッ、と先程まで気絶していた男が起き上がった。


 すると見せ付けられるは男の象徴。

 グリムはそっと目を逸らし、少女は愉快そうに口元を隠している。

 道行く女性はキャーキャー言って興味津々に凝視するか、顔を真っ赤にして歩き去って行く。なお、男性は誇らしげにするか悄然となるかのどちらかだ。


「……行くぞ」


 相手にしたくないグリムは歩き去ろうとしたが、慌ててズボンを引き上げた男が通せんぼする。


「待て待て! 女は置いてけ!」


 酷い目に遭わされたにも関わらず、男は少女にご執心な様子。

 グリムとしては是非とも引き取って貰いたい目の上のたん瘤的存在な少女。屋敷に置いてからストレスの溜まらない日は無く、日々どうやって抹殺するかばかりを考えている。


 そして、男とか少女とか、後々こんがらがる事請け合いな状況に、これまで避け続けてきたある事をするべきかと悩んだ。

 したくないし、聞きたくない。けれど不便である事は確実で、誤魔化しも利かなくなって来ている。

 あーやだやだと頭を抱えながら、グリムは少女を見た。


 見つめられた少女は取り敢えずといった調子で微笑んだ。

 更に抱き着いて来ても良いわよ、と言わんばかりに両腕を迎え入れる様に広げて見せる。

 寸胴体型のくせに、何故かある母性と包容力はなんなのだろうか。

 うっかり甘えてしまったらどうしてくれる。


 そんな理不尽極まりない憤りで自分を律しながら、グリムは重く口を開いた。


「超絶面倒臭い」


 違う言葉が出た。


「ん? それは私自身でどうにかしろという事かしら?」


「かもしれん」


 直前で予定していた言葉とは全く別のものが出てしまい、グリムと少女はお互いに意図が読み取れない。そもそも読み取る意図が無いのだから当然である。


 色々と諦めたグリムは大柄な男の首根っこを鷲掴みにした。指先に力を込める事も忘れない。

 そのまま引き摺るように道を歩けば、男は悲鳴を上げる。


「イッテェ!? こいつ、力強っ! だからイテェって! 放せ! 放してくれぇ!!」


「面倒だから連れて行く。ありがたく思え」


「なんだそりゃ!? というか雑! イテェっての!!」


「耳障りだ、黙れ。道中でそこの女にアピールする機会を作ってやったんだ。ひざまついてこうべを下げろ」


「こいつ何様!?」


 伯爵様だ。とは流石に言えない。

 わざわざ仮面まで付けて露骨に正体を隠しているのだ。迂闊な返答は控えるべきだろう。


 そんな訳で、グリムはずるずると、大柄な男を都市の外に待機させてある馬車まで引き摺っていった。

 その様子を、少女は内心で驚きながら観察していた。


 普段と比べれば荒さの際立つ所業。だがそれも仕方がない。グリムは気晴らしがしたいのだ。

 余計なストレスなんか溜め込まず、寧ろ日頃溜め込んでいる鬱憤を晴らしたいのである。


 気遣いなんてしてやるものか。俺は好き勝手に振る舞う!


 と、そんな気概が感じられる。


 グリムの新たな一面を発見して、少女は嬉しさのあまり抱き着きたくなった。

 しかし我慢である。

 素直に「抱き着かせて?」とお願いしても拒絶されるだけだ。過去にも同じ願いを出して、窓から外へと放り投げられた回数は指の数を越えている。


 虎視眈々と機会を待つのだ。


 そんな野獣の眼光に気付いて、グリムはどう処理しようか頭を悩ませた。


 馬車に二人を詰め込み、御者台へ座ったグリムは馬をゆっくりと走らせる。

 馬車の中では早速大柄な男が少女にちょっかいを出したのか、拳が人体にめり込んだ様な、鈍い打撃音が外まで響いた。


「殺すなよ? 後処理が面倒になる」


 小窓を開いて、中に居る少女へ告げる。すると、彼女は艶やかに微笑んだ。


 グリムは知っている。少女がそういう笑みを浮かべる時はロクな事が起きないと。


「えぇ、えぇ。承知してるわ? でも、魔物に殺されてしまったら仕方がないわよね?」


「成る程。その時は貴様も一緒に撒き餌にしてやる」


「あらやだ。本気にしたの? 冗談よ」


「はっはっはっ! 何を言う。こっちは本気も本気だ」


「そろそろ殺意を引っ込めても良いと思うのだけど?」


「ならば毎度毎度ちょっかいを掛けてくるな。その鬱陶しさをそこの男で存分に体験するがいい」


「まぁ! なんて酷い人なのかしら! たぎるわ」


「たぎるなぁ……」


 最早、前向きな少女に舌戦で勝てる気がしなかった。

 ここ最近は呆れと疲れと諦めによる敗北が続いている。

 いい加減、一度は言い負かしたいグリムだった。

 友人。

「テンプレかと思ったら違ったでござる」

 作者。

「ギルドで絡まれるアレな。絡まれるまでは別にいいんだよ。酔っ払いとか柄が悪いとか。だが主人公、テメェは駄目だ」

 友人。

「主人公に厳しい作者だー」

 作者。

「余りにも設定と言動が乖離してるともうアカン。特に《自主規制》だ」

 友人。

「そうか?」

 作者。

「だって地の文で《自主規制》とか《自主規制》で《自主規制》みたいに書かれてるのにさ。そんな展開が欠片もないんだもの。そういう設定なのに全然反映されてないんだもの。無言でバックだ」

 友人。

「拘るなー」

 作者。

「拗らせてるとも言う。でもってアレだな。いい加減展開が冗長になってきてるから一話ごとの文字数増やすかダイジェストしないとだ」

 友人。

「更新開くしな。実際、元の構想からどれくらい膨らんでんの?」

 作者。

「四、五倍ぐらい? 序盤の書き方読むと分かるだろうけど、地の文で飛ばしまくるつもりだったからしゃーない」

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