都市開発①
番号振ってるんだから内容ごとにタイトル変えれば良いやと今更ながら気付いた。
ダイジェストダイジェストダイジェストのトントン拍子で進めるつもりだったからしゃーないね。
「魔物の骨、ですか」
「そうだ。コンクリートの中に骨を加工して組み込む。鉄をかき集めるよりは安く済むうえ、耐久性も見込めるだろう。検証を重ねる必要はあるがな」
グリムは都市開発に関与している有力者の中から幾人かの商人を呼び出し、早速鉄筋の代わりになりそうな魔物の素材について訊ねていた。
「鉄の代用にするとなれば、最低でも中型種、その中でも強い部類から選出しなければなりませんね」
「なら冒険者ギルドに依頼を出すとして、期限はどうする? 纏まった数が必要なら出来る限り早い方が良いだろう」
「直接名のある冒険者を指名する事も出来ますが、それはそれで時間が掛かるでしょうな」
「難度にもよりましょう。アレクトロフに棲息する魔物。棲息地や素材の元となる魔物次第では鉄やその他の鉱石を輸入する事になりましょう」
「アレクトロフの鉱石資源が豊かであればな」
「商人が無いものねだりするものではありませんぞ」
「これは失敬。つい言葉が出てしまった」
あぁでもないこうでもないと議論する商人達。
生半可な魔物では耐久性に難があり、長い期間建物を支えるには疑問が残ってしまう。妥協が出来ず、しかし納得の行く素材となるとどうしても冒険者に支払う報酬が予算を越える。
ミリュームネルが抱える計画は一つではなく、都市開発へ回す予算が残っていなかった。
それでも、他の計画と比べれば都市開発には多くの資金が割り当てられているのだが、賄え切れない程人口問題が深刻なのだ。
最初の内は新たな村を興す開拓者を募ろうという話が持ち上がったが、グリム自身がその案を蹴っていた。
目ぼしい土地には既に農村があり、肥沃でない枯れている土地に無理矢理村を作っても不幸しか生まないからである。
肥沃な土地だとしても、行商人も通らないような僻地では意味がない。
「……こうまで纏まらないとなれば、自分で採って来る方が良いかもしれんな」
ぽつりと小さな声で呟かれたグリムの言葉に、商人達はぎょっとする。
「ミリュームネル様が行かれるのですか!?」
「しかしそれでは体裁が悪いのでは」
「そうですぞ! 貴方が自ら採りに行くなど、体面を保てなくなります!」
「素材は私達でかき集めます、ですのでどうか思い止まってくだされ」
グリムの傘下に身を置き、ミリュームネルの名を借りている商人達は口々に考え直すよう進言する。
ミリュームネルの名で上手い事やっている彼等からすれば、その名が軽んじられると困るのだ。
「貴様達の言いたい事は分かっている。だが事実、様々な問題を加味したうえでの言葉だ」
そう言われると、代案を提示できない商人達は黙るしかなく、自分達の力不足を悔やむしかない。
「代官は置いておく。何かあればその者に相談しろ」
呼び出した商人達を解散させ、グリムは背凭れに身を預けて息を吐いた。
「決して貧乏という訳ではないんだがな。世の中世知辛い……」
税金自体は潤沢なれど、その使い道は多岐に渡り無駄遣いは出来ない。
領主であるのなら、領民を第一に置くべきとはグリムの言である。
「んなぁー」
そのままずりずりと身を滑らせ、殆ど椅子から落ちている。安くはない衣服にしわを作りながら、グリムは眠い目を擦った。
自ら魔物の骨の採取を呟いたのは、気晴らしがしたかったからでもある。
「…………」
人の気配を察して、グリムはゆっくりと居住まいを正した。
そして、執務室の扉が軽くノックされる。
「旦那様、旦那様。椅子から滑り落ちていた旦那様、お茶が入りましてよ」
「……入るな」
「失礼するわね」
扉を開いて室内に身を滑らせるのは仕方無く部屋を与えた謎の少女である。
給仕服に身を包み、すっかり板に付いた所作で机にカップを置いた。
星屑を散りばめた様な瞳と、作り物めいた顔をにこりとさせ、謎の少女は淀みなくお辞儀する。
光の加減で色の変わる不思議な頭髪をさわりと揺らし、薄まる事の無い神秘的な雰囲気を醸し出しながら、楽し気に目を細めていた。
「入るなと言ったが?」
「ごめんなさいね。私、時々耳が遠くなってしまうの」
「成る程、年だな。介護を雇ってやるから部屋で休んでいると良い。そしてそのまま出て来るな」
「行けませんわ旦那様。そんな監禁プレイなんて、私たぎってしまいます!」
「海の底に沈めてもしれっと帰って来た奴め。貴様何処から見ていた?」
「ふふっ。貴方の事ならなんでもよ?」
叩き付ける様な会話の応酬。
亡き者にしたいグリムと執着する少女である。
お互いに一方通行な想いだ。
「聞いていたのなら話が早い。俺は出掛ける。執事と侍女長に連絡を入れておけ」
「はぁーい。大体何日かしら?」
「早ければ二日か三日だろう。こちらの動き方次第だが、そう時間は掛からん筈だ」
「了解したわ、旦那様。あ、それと、狩りには私もついて行くわね。これは侍女長からのお達しよ」
「…………物凄く嫌だが、仕方がないか。気持ちだけ受け取ろう」
「ちゃんと私も受け取って?」
「拒否する」
遠慮無く距離を詰めようとしてくる少女を懸命に押し退けるグリム。
彼女が屋敷に来てから数え切れない程に繰り返されているやり取りに、流石のグリムも諦めが滲み始めている。だからと言って受け入れる気は毛頭無いが。
決して情緒の豊かでないグリムが僅かながらも感情を露にし、どうにかこうにか嵐のような少女を部屋から追い出す。
深く息を吐いて、疲れたように突っ伏した。
少女の相手は疲れるうえに苦労する。更にはストレスも溜まって良い事がまるでない。が、彼女とのやり取りに、アンドロウスやエルトルハイム公を相手にする様な気楽さがある事を、グリムはまだ自覚していない。
素材入手の為に纏まった時間を抉じ開けたグリムは、まず冒険者ギルドへ赴いた。
最新の魔物の分布図を手に入れる為である。事前にギルドの最高責任者へ連絡を入れてあり、受け付けに名前を言えば事情が伝わっていて部屋まで案内される手筈だ。
「面をしろと言った筈だが?」
「地味だったんだもの」
グリムにとっては地元であり、変装をしても正体がバレる可能性があった。そこで、露骨ながらも仮面で顔を隠す事にしたのだが、少女は仮面の装着を拒否している。
結果、怪しさ満点の男と不思議な色香を漂わせる女二人組の完成だ。
仮装パーティーで使うような面だったなら、少女も喜んでつけたに違いない。
ギルドの中は閑散としている。精力的な冒険者なら朝一で依頼を受け取り、現地へと赴いているか、または目ぼしい依頼が無く自主的な訓練をしているかだ。
ロビーに居るのはやる事の無い冒険者か、やる気の無い冒険者のどちらかである。
そんな所に不審な二人組がやって来たのだから予想外に目立っている。二人共が仮面をつけた怪しい輩ならこうまで露骨に注目を集めなかっただろう。
しかし、そこに居るのは怪しい男と色香のある女である。
所謂一つの相乗効果。
色々と諦め、グリムは受付嬢にこっそりと名前を告げる。受付嬢は一瞬だけ驚きの表情を浮かべたが、すぐに何時もの営業スマイルを取り繕った。
その間、少女はにニコニコとグリムの横顔を眺めている。何が面白いのだろうか。
受付嬢に案内された先は二階にある奥の部屋だった。
ノックをし、返事を待ってから中へ入った。
今回、ものを頼みに来ているのはグリムなので礼儀を尽くすつもりである。
「まずは突然の申し出に快諾してくれた事へ感謝を、ギルドマスター殿」
仮面を外し、慇懃に頭を下げて見せるグリム。
そんな彼を正面から見るギルドマスターは意外にも若く、作り物めいた笑顔を浮かべている。
「いえいえとんでもない。何時も私達の生活を考えて下さる伯爵が、頭を下げる事ではありません」
続けて幾つかの言葉を交わし、ギルドマスターは一枚の大きな地図をグリムへと差し出した。
「この国に棲息する魔物、おおよその分布図です。お役立て下さい」
地図を広げて、内容を確認してから懐へ仕舞った。
「確かに。再度、協力に感謝を」
最後にもう一度頭を下げてから、二人は部屋を辞した。
ふと見れば、ずっと黙り込んで居た少女が深刻そうに俯いている。
「どうした?」
「黒が良いと思っていたのだけど、白も良いなと考えていたのよ」
「……なんの話だ」
「もう! 私から言わせるなんてこの照れ屋さん! ウェディングドレスの話よ」
「俺には縁の無い話だ」
「そうね。だからこうして縁を持って来てるのよ」
「要らん。持って帰れ」
「残念ながら返品は受け付けておりません」
「受け取ってすらないんだが?」
「強制です!」
「成る程、どうやら届け先を間違えているようだな。住所を確認した方がいいぞ?」
そんな下らない会話を展開しながら、二人は一階ロビーへと降りて行った。
作者。
「面白い作品ってなーんだ?」
友人。
「え? えーっと、盛り上がる作品?」
作者。
「俺は読み返して面白い、一粒で二度美味しい作品だと思ってる」
友人。
「あー。んで、何故に俺の書いた物読んでから言うんでしょうか……」
作者。
「お前、なんだこの、微笑ましくなる作品。思わず懐かしくなっちまうだろ」
友人。
「先生、お手柔らかにお願いします」
作者。
「まず導入! 要らんわ! 主人公の自己紹介は取り敢えず脇に置くとして、髪型体型容貌かーらーの! 学内での立ち位置成績友人関係教師からの評価ご近所云々要らん! アンドロウスとの戦闘パート並みに要らん! 伏線だとしても一ヶ所に纏めすぎぃ。この一万字、後々必要かいな?」
友人。
「済みません。そこまで考えてませんでした」
作者。
「二十分も長々と主人公のスペック読んでられるかあ! 微笑ましくなるだろぉ!? まぁ、まだ書き始めの初心者あるあるだから傷は浅い。気にするな」
友人。
「はい! 先生!」
※悪ノリは程々に。




