③ 姉がエルフとか憧れますよね。
空に浮かぶ太陽が未だサンサンと地上を照らす中、俺は歩いていた。
数時間薄暗い洞窟の中に居た俺にとって、射す光の眩しさはまた新鮮な物に思えた。
チャカチャカ、カランカランとシャベルやツルハシが歩くたびに鳴るバックパックを背負った少女が、鼻歌を歌い、歩いている。
見た目からはドワーフだろう、髪色は毒々しいまでのピンク色、正にゲームの世界だ。
その横で笑みを絶やさず歩いている女性は、こちらはエルフだろう。
銀というよりも白銀、どこか透明感が感じられる長髪を紐か何かで右に結っている。
ドワーフの少女も同じように右のサイドポニーだ、姉妹のようだった。
聞く所によれば、この二人は依頼を受けて鉱石を集めていたようだ。
少女はマイと言う名前らしい。
有名な鍛治師になるのが夢だそうだ。
いざ鍛治師になってみたものの、作品を作りたくても材料も無ければ工房も借りられないらしい。
そこで材料として使える鉱石をついでに集められる上、
達成させれば報酬も出るクエストを受注したのだそうだ。
そしてエルフの女性の名前はエルロス。
初めて依頼を受けるマイが心配で付いて来たらしい。
「なるほどね、という事は別に姉妹という訳ではないのか」
「ちがうよー、でもそれくらい私達は仲良しだから間違ってないけどねっ!」
胸を張り答えるマイに、可愛い妹ですとばかりにニコニコ顔で頭を撫でるエル。
「少し気になるんだが、依頼という事はクエストだろう」
「そうですね、今回はドワーフの工房からの依頼だったようです」
エルから話を聞いていると俺は黙る。
前々から俺は気にはなっていた。
この世界に転生したのは何も俺だけではないはずだし、
依頼、クエストを受注し、生活をしているという所を見ると、
彼女たちもプレイヤーか何かなのだろう。
一応、エルフやドワーフはグリモアにおいて、
キャラクターを作成する時に選択可能な種族でもある、
ここまでまともにコミュニケーションが取れているのであれば、
プレイヤー以外では有り得ないはず。
プレイヤー以外ではありえないはず、そう頭では理解しているはずなのに、
横に並んで歩くエルに、俺は聞いてしまう。
「変な事を聞くかも知れないけど……」
「はい?」
「君達はこのゲームに……いや、この世界に転生したプレイヤーなんだよな?」
俺の問いに対し、エルは歩いていた足を止め、
「ああ、先程も聞いていらっしゃいましたね、
でも、御免なさい、プレイヤーが何なのかは私には解りませんが――」
そしてエルは微笑みを此方へ向けながら、
「――私達はこの世界で産まれ、そして育った、この世界の住人です」
「世界の住人だ!」
それに続くマイ。
「あ、そうなのかぁ」
と、自分はそう答えたが、心では汗を流していた。