自由の翼
ニナは獣人だった。逃げ込んできたときにはフードを被っていたのできづかなかったものの、フードをはずすとかわいいうさぎ耳だった。
「じゃあ、まずは自己紹介」とミランダ。一応経験豊かなミランダがリーダー格で俺たち二人はそれに従う形だった。
その日の晩ご飯は約束通りミストレスのおごりだった。ミランダはよく食べる娘で、何度もお代わりしにいっていた。
ニナの方はといえば、顔色一つ変えずにただひたすら飲んでいた。「ねぇ、ペース早すぎない? 大丈夫?」と聞いたら、「獣人と飲むのは初めて? エールなんて水みたいなものよ」と返されてしまった。
俺はといえば、小食だった。飲む方も、一杯飲んだ段階でこれはダメだと思って止めた。この体、その辺弱いらしい。
で、自己紹介だ
「私はミランダ・アルファ。見ての通りエルフの出で、魔法使いよ。特に治癒魔法が得意だからよろしく」
ミランダはヒーラーだった。でも、さっきの様子では攻撃魔法も結構いけるのかな?
「私はフェニカ。姓はない。人間……なのかな? 気にしたこと無かった。昨日まで奴隷でした。剣士です」
俺はたどたどしく自己紹介した。人とまともに話すのはひさしぶりだった。
「ニナ・ラピー、弓士の一族の出身で、弓が得意です。先ほどは助けていただきありがとうございました」ニナは礼儀正しくお辞儀した。
その後は、三人でお互いの身の上話だった。
ミランダは結構いいとこの出(詳細はぼかされた)だが、家出して冒険者になったらしい。
ニナの方は、修行として冒険者になるのが習わしの家らしい。
ただ、身の上話の主役は俺だった。転生の話こそしていないが、奴隷として生まれた、悲惨な人生を話した。
「そう、苦労したのね」とミランダ。
「アレクサさん、今度会ってみたいな」とニナ。
「でも、解放奴隷になったからには大丈夫。私たちと一緒にてっぺん目指そう」
二人とも目をうるうるさせていた。俺のために泣いてくれるなんていい友達だ。
だいぶみんな酔ってきたところで「そうそう。パーティ名をつけないと」とミランダが言った。
「え、気が早くないですか?」とニナが返したが、ミランダは「いいのいいの。最初は形から入らないと」と言って聞かなかった。
「それで何がいい」というミランダの問いに対して俺が最初に発した言葉が「自由の翼」だった。
俺は今、奴隷の身を逃れ自由になった。そのことを心から祝いたい。まるで翼が生えたみたいだった。だから「自由の翼」。
二人も賛同してくれた。
楽しい夜は更けていく。