女剣士フェニカ、冒険者になる
俺は街の酒場へ行った。
「すみませーん」
丸っこくて大きなおばちゃんが出てきた。
「あらあらどうしたんだい?」
おばちゃんは、貫禄のある巨体の割に繊細で優しそうだった。
「あの、私、解放奴隷で……。冒険者になりたくて」
「ああ、なるほどね。うちにはそういうのいっぱいいるよ。お金は持っているかい?」
俺は、アレクサからもらった3ゴールドを差し出した。本当は5ゴールドもらっているが、おばちゃんをまだ信用できていないので、とりあえず3ゴールドだけだ。
アレクサは俺にたくさん持たせようとしたが、一月分の生活費に少し足した程度の5ゴールドにしてくれと俺が頼んだ。
「あら、結構持ってるわねぇ。それだけあれば、まともな装備が買えるわ。1ゴールドあれば一週間の生活費になるから、2ゴールドで装備を揃えなさい。それであなた、武器や魔法は扱えるの?」
「武器の経験はないけど、筋力的に強いって言われて……」
「うんうん。なら、オーソドックスに剣と盾を持つスタイルが良いかしら。うちの裏に訓練場があるからそこでしっくりくる武器を選びなさい」
「はい。ありがとうございます」
俺は、おばちゃんとの話を終え、裏の訓練場に行く。
そこでは、色白金髪の女エルフが弓を放っていた。
張り詰めた空気の中エルフは矢を放つ。的から遠いところに命中した。
「あら、見られちゃった」とエルフは舌を出した。
「私昔から弓は苦手なのよねー」
「あなたは? 先に名乗っておくと、私はミランダ。冒険者見習いよ」
「私はフェニカ。冒険者になろうと思っている解放奴隷です」
ミランダは、俺をまじまじ眺めると、言った。
「ふーん。ねぇ、あなた、私とパーティを組まない?」
仲間を探したい俺としては願っても無い話……と言いたいところだが、あの弓の腕じゃなぁ……。俺は遠い目で遥か彼方に命中した矢を見る。
「あれは気にしないの。言い忘れていたわね。私は魔法の使い手なの。あなたの傷を癒したり、火を放ったりするよ。エルフがみんな弓の名手だとおもった大間違いなんだからね」俺より無い胸を張ったがそこは胸を張るところじゃない。
「なるほど。今なぜ弓の練習を?」
「魔力が尽きてから武器が無いのは困るから練習しないといけないんだけど……。うまくいかないねぇ」
「わかった。ミランダ。一緒に他のメンバーを探しましょう」
「でもその前に……、私武器を選ばないといけないの」
俺は結局当初のアドバイス通り、片手剣と盾を身につけることにした。