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友人

「あなたに幾つかアドバイスをあげるわね」とアレクサは言った。


「解放奴隷が真っ先に困るのは仕事よ。あなたはこれまで命令にさえ従っていれば、食事にありつけた。でも、これからは違うわ。あなた自身の手で生計を立てていかなければならない。まずは冒険者になりなさい。あなたは筋力に恵まれているから、きっと凄腕の冒険者になれるわ。

 次に、医者に困ったらいつでもうちに来なさい。私は研究医だから直接的な処置は出来ないかもしれないけど、いい医者の知り合いが多いの。

 最後に、あなたの体は一般の人とは違い強靭になっているから、多少の怪我は平気よ。炎への耐性もかなり高まっているから、火事くらいなら生き延びられるはず」


 それから1月ほどアレクサの元でのんびりした。アレクサはもはや私を、研究対象とも奴隷とも扱わず、友達として接してくれた。この世界に来て最初の友人だった。アレクサは、奴隷として知識のなかった俺に一般常識を教えてくれた。


 この国のお金を初めて手にしたのも実はアレクサところに来てからだった。俺は顔もスタイルもよかったので奴隷としてかなりの額を稼いでいたが、実際に俺がお金を手にしたことはなかった。


 

 俺が男ならよかったのにな、と毎晩思った。アレクサは俺に優しくせしてくれ、俺はそれに応えていた。俺が男ならアレクサといい関係になれたかもしれない。そう思うと、残念だった。


 ある日、俺はアレクサに聞いた。「ねぇ、アレクサ。どうしてたくさんいる奴隷の中から私を選んだの?」

「あなたしかいないなって思ったの。女神に打たれたみたいだったわ」

 まるで、告白されているみたいだった。

「私が好きなの? それとも研究対象として?」

「えーと、もちろん研究対象としてよ。理想的だったの。あ、あなたが嫌いってわけじゃないのよ。あなたのことは好き」アレクサはたまに紛らわしいことを言う。私の心は少し恋慕していた。

 

 一月ののちに、アレクサは私に言った。

「明日から二月くらい私は、帝都アウグスタに言ってくるわ、先生に実験結果を報告して、論文を提出してくるの」アレクサは俺がぬくぬくしている間に大量の論文を仕上げていた。帝都アウグスタはこの街パラディオンから馬で3日かかる。この街パラディオンは辺境の街なのだ。「そろそろあなたも一人立ちする時期かなと思うの。私がずっと養うことはできるのだけど、それじゃあ、あなたも嫌でしょう」確かに、いつまでもヒモではな。


「前話した通り、酒場に行ってみなさい」



 次の日の朝「最後に……」と言ってアレクサは……、


 私にキスをした。


 甘いキスだった。


 その意味を聞く前に……、


「私が帰ってきたら、またいつでも遊びに来てね」


 アレクサはそう言ってくれた。

ちょっとアレクサとの関係を変えてみました。

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