魂の行方
「そういうわけで、私は体を失った魂に体を与える研究を始めた。目をつけたのが、異世界の機械技術とこの世界の古代技術だ。古代にはこういう動く機械がごまんと存在していたらしい。加えて、この世界には異世界から人が転生してくることがあってのぅ、と言ってピンとくるものはいないかもしれんが、リベルタスと共謀してちょこっと技術の本を異世界拝借した」
「でんきとこんぴゅーたってなんじゃろうとか言われたので、びっくりでしたよ」この世界に、科学技術の発達した時代があったなんて。どんな世界だったんだろう。
「ドワーフやノームが使っていた技術のはずだ。あんたたち英雄の時代にはあったんじゃないか?」と言ったのは、ヴァンだ。皆が驚いてそちらを振り向く。
「なんでそんなことまで知っとるんだ? いくら小人同盟とはいえ。しかも、病気かと思うほど動くお前が先ほどから微動だにしない」
「あれは演技さ」とヴァン。「悪かったな、今まで騙していて。爺さんの長話が終わったら俺が話そう」
「おまえ……騙していたのか?」とウェルが憤る。ウェル今までの話ついてこれてるかな?
「私たちの時代にはすでに、ドワーフとノームはまともな技術力を有していませんでした……というと失礼ですが……。ドワーフとノームは千年戦争において、最も被害の激しかった種族でした。私たちが聞くところでは、鍛冶と魔法発明の天才だったが、そのせいで狙われ戦士階級しか残らなかった、と」
「それは事実じゃない。階級の高いドワーフとノームが全滅したのは事実だが。小人同盟が司るものは科学。この世界の理に最も近かったのは俺たち小人だ。ロボットというのを見たのは初めてだが、言われてみれば伝説に出てくるものだとわかる」
ヴァンはふむふむと頷いている。
「なるほど。そんなこんなで200年以上かけて体を作ったのだ。もはや意地だった。しかし、その頃にはもう『魂の牢獄』の技術は使われていなくてのう」
「「えっ」」
また私とレイの言葉がダブった。
「続けてください」とリベルタス様。
「なんじゃ、何か知っておるのか? ここしばらくの政治的な動きは私にも不思議なのじゃ。いったい誰があの技術を復活させたのか……。まあ後で聞かせてもらおう」賢者ミルドリス様は訝しげだ。「この後の話をかいつまんで話すと、アンデッドには魂が残っていることを思いだして、生き返りたがっている、善良なアンデッドと契約して、体に入ってもらったのだ。そして、快楽薬を大量に投与した」
ミネルヴァは泣いていた。たぶん話が怖かったせいだろう。獣人夫婦は固まっていた。
ウェルが口を開こうとしたが、賢者ミルドリス様が静止した。「法を破っているのは知っとるわい。だが次に知り合いが『魂の牢獄』に閉じ込められたときのために……」
「それはダメ」レイが言った。「上位アンデッドの魂、いい感じに仕上がってるわ。これはもう新たな命。浄化はできないし、体から追い出すこともできないわ」
これはなんだかすごいことなんじゃなかろうか。人口生命?
「そうか、お前は生きているのか」
「はい」ナレッジ・ハルはしっかりと、確実に答えた。




