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女神様に叱られちゃう

 その晩は、ミネルヴァを撫でてあげているうちに、どちらともなく寝てしまった。


 そして……


「起きなさい」


 叩き起こされた。


 あれ、この声はリベルタス様? 気がつくと御前にいた。


「なーにが、お姉ちゃんと思っていいから、ですか。ずいぶん偉くなったものですねぇ」


 ねえ、なんかいつもと雰囲気違くない? リベルタス様は「ぷんぷん」という表現が似合う感じだった。


「あ、そうそう、それで、あのアリシアって人とアダムって人は?」

「私が入れ替えました」


「やっぱりですか」

「あの二人はですねー、さっさとくっついちゃえばいいと思いますよ。お互いのことが大好きなのに恥ずかしがっちゃっててもどかしいんです」

 恋愛の機微とかそんなことば関係なさそうな女神だな。


「あ、二度と戻す気は無いんでそこんとこ伝えておいてくださいね」

「ひどいっすね」


「わーたーしーはーでーすーねー。自由とか奔放な性とか倒錯した性とか色々司っているんです」


 初耳です。


「だからあなたも快楽薬の虜にしましたし」

「あれはリベルタス様のせいなんですか」私が不幸な目にあうことから回避してくれてたんじゃなかったっけ?

「まあ、私の趣味といえばそうなんですが、もし、快楽漬けにしてなかったあらあなた今頃性の(はざま)で大変な思いしてましたよ」


「どういうことですか?」

 あの薬、副作用はないってアレクサが言っていたのだけど。


「あの薬の本来の効果は、心の性を体の性に近づけることなんです。レイちゃんもほのめかしてたでしょ?」なんかレイにだけ馴れ馴れしくない? ちゃん付け? 「人間の医者、アレクサさんでしたっけ? 彼女みたいな人間には魂の形はわからないので、副作用がないと判断したんでしょうね。実際は、魂の形を歪める危険な薬なんですよ」

 

「お詳しいですね」

「そりゃあ、私が作らせた薬ですからね」


 下手人はあなたでしたか。

「なんでそんなもの作らせたんですか?」

「あなたみたいな転生者や入れ替わりの被害にあったものが苦しむからです」

 人間に興味ないって言ってた割に慈悲深い女神だな。倒錯してるけど。っていうか、入れ替わりの被害って言ったぞ、被害って。あなたがやったんでしょうが。


「ちなみに作ったのはレイちゃんのご両親です」

 すごい身近な人だった。

「これにはストーリーがあってですねー。私が作ってくれって頼んだのが15年前。その後10年でお二人は完成させました。主作用はほどほどなんですが、副作用が異常にすごくてですね。副作用ってのは要するに快楽のことです。快楽薬として販売する許可を私が出しました。最初は皆さん懐疑的だったんですが、一年前にアレクサさんが副作用はないと結論付けたでしょ。ご存知のようにアレクサさん超有力者だったので、快楽薬は大量生産が決まりました。で、レイちゃんのご両親にはお金ががっぽがっぽ。その資金力を無視できなくなってレイちゃんが士官学校に入学できるようになった次第です」

 

「みんなあなたの差し金ですか」

「そうです。あなたたち3人……アダムさんも入れて4人の入学タイミングを合わせるのは結構苦労しましたよ」


 あれ、3人って言ったよな。ってことは、ミネルヴァは関係ないのかな?

「もしかしてミネルヴァについては、リベルタス様は無関係ですか?」

「全くの無関係ではありませんが、私の管轄外です。私の諸々の努力がエルフの女王ティターニアに伝わった結果、娘を元気付けるために入学させたようですね。ミランダさんが亡くなって以降ひどい有様だったらしいので、ミネルヴァさん」


「だいたいわかりました。最後に、ジルバ家が皇帝陛下の血族ってのは本当なんですか?」

「本当ですよ。自分の国の皇帝の名前くらい覚えておきましょうよ」


「まあそんなこんなで頑張って下さい。復讐を忘れて学校生活満喫してたら私が叱っちゃいますからね」


「あ、言い忘れてました。今晩あなたの部屋の隣では、レイちゃんとアリシアさんが、しっぽりムフフなことをやってますよ。さっさとアリシアちゃんに薬使ってあげてくださいね」


「ではまた」


 そうして私は眠りについた。

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