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フェニカ、学校に行く

「フェニカ、学校へ行かないかい?」

 ドクター・ジルバの元で暮らし始めてから、半月が経った頃、ドクター・ジルバが私に切り出した。

 私に与えられた部屋はやはり元アレクサの部屋だった。私にはアレクサの使っていた様々な品物がお古として与えられた。「使いまわしたともとれるけど、どうしても、アレクサの影を私に重ねているように見えてしまうなー」などと私は思ってしまう。

 そんな生活から別れを告げ、自分の目的を果たすためにまずは強くならなければならない。その武者修行の旅をしたいと思っていた矢先の出来事だった。


「驚いた顔をしているね、フェニカ。何か不満かい?」

 ドクター・ジルバは優しく私に語りかけた。ドクター・ジルバはいつだって私に優しかった。

「いえ、満足な衣食住を与えていただき、感謝しています。そしてもちろん、私に教育を与えてくださることも。しかし、私は強くならなければならないのです。もう二度と仲間を失わないために。そして、女神から与えられた使命を果たすために。だから、医術をはじめとした学問に身を預けている暇はないのです。それに、私のためにこれ以上出費をさせるのも悪いですし」

 私はまだ、他人行儀が抜けずにいたし、他人行儀をやめるつもりもなかった。私はあくまで奴隷の身分出身。ドクター・ジルバとは格が違うのだ。なんというか、養子になったのは気の迷いなのだ。


「ははは、君を医者にするつもりはないよ。基礎的な医術は戦士として身につけるべきだとは思うがね。学校といったのは士官学校さ」


「士官学校?」


「そう、戦闘について習い、帝国兵となるためのところだよ。実は、実験の成功を発表したところ、フェニカをぜひ帝国士官学校に入学させたいと各方面から言われてしまってね。今までのような我流と違う、正式な戦闘訓練だ。きっと君自身の役にたつし、出世の道も開ける。あと、お金の心配はいらないよ。君は特待生扱いだからね」

 

 確かに私は強くなりたいと願っていたが、強くなり方がわからなかった。放浪しながらいろんな生き物と戦っていればそのうち強くなるだろうくらいに考えていた。しかし、正式に戦い方を習えるのであれば、それは幸いなことではないだろうか。


「わかりました。行きます」

「うん、いいだろう。手続きをしておくよ」

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