養子縁組
ドクター・ジルバは、私を養子にしたいといってくれた。ドクター・ジルバは未婚だが、帝国では未婚でも養子縁組みできる。
アレクサのことも養子にしたかったがアレクサの実家の都合で叶わなかったようだ。どうも口振りから察するに、アレクサはかなりいいとこの出のお嬢様だったらしい。
「私はそれなりに社会的地位もあるから、君にとっても悪い話じゃないだろう」
ドクター・ジルバはそう言った。確かに後ろ盾ができるのは大きい。しかし私には引っかかる点が三点あった。
一つはアレクサの存在である。ジルバが私を養子にしたがるのはアレクサの代わりにすぎない。アレクサを失った寂しさを紛らわすためだ。アレクサが私に名前を付けたとは言えアレクサと私の関係はたった一月。私がそんな立場になっていいのか疑問だった。そもそも性を売る奴隷の出だし。
第二に、私の今の目的だ。私の今の目的は復讐を果たすこと、しかし、復讐を果たしたいアルフォンス王はこの世界では罪を犯していない。それどころか社会的信用の厚い王である。彼を殺したら私はかなりの重罪になる。その影響はドクター・ジルバにも及ぶだろう。これだけ親切にしてくれた人を巻き込みたくない。
第三に、誰も守れない弱い私が守りたい人を増やしていいのか、という疑問があった。また、守りたい人を失う悲しみを負うのではないないか、と心配だった。
それをふまえた上で私が出した結論は、養子縁組みを受け入れることだった。私は結局寂しさに勝てなかったのだ。
女神様と仇である月島桜以外の知り合いをすべて失った私にとって、親切にしてくれる人の誘惑は大きかった。守るだけの力がないと知りながらと甘えてしまう。
月島桜はいずれ何かしら罪を犯すだろうと思うことにした。
私は弱い。
その弱さが今後にどう影響するかはわからない。私は魔の一年を生還し、自分の人生を生きているのだから。




