身体の変化と復讐権
「さて、きみにいくつか伝えておくことがある」
ドクター・ジルバが話し始めた。
「まず、君の体調はきわめて良好だ。女神の口づけの効果もあってか、もはや悪いところはどこもない」
朗報だった。女神様すごい。
「次にフェニックスとドラゴンを移植した影響だが……、こちらも良好だ。拒否反応は見られず、体に良くなじんでいる。今までの実験成果を鑑みると、奇跡的なことだ。君は女神に愛されているようだね」
寵愛されてるらしい。あの女神が私の面倒をかなりしっかり見てくれてたのは意外だった。
「君は今や、ドラゴンと不死鳥を身に宿しているため、炎に対して非常に高い耐性を持っている。炎の中でも多少暑い程度でいられるだろう。理論的には火山の火口に落ちても死ぬことはないだろうね。もちろん火傷は負うが、その程度で生還できると予想される。もちろん、理論値だ。試してみようとは思わないでくれ」
「わかりました。私としてはドラゴンの炎や暖房器具の爆発に耐えられればそれでよいです」
「そのくらいならなにも問題ないよ。身体能力については、人の域を超えて高くなっている。鍛えれば鍛えるほど強くなるだろうね。素質だけでいえば、王や領主クラスの英雄を超える才能がある。もっとも戦闘経験と訓練が足りないから、今はまだそんなに強くないだろうけれどね」
英雄を越える素質ってのはありがたい。なにせ、相手は龍殺しの英雄なのだから。
「わかりました。私の体を強靭にしていただきありがとうございます」
「強靭な肉体は生き残らせるための副産物にすぎないよ。あとは女神様に感謝しなさい」
「さて、それできみには復讐権の話をしなければならない」
「復讐権?」
「文字通り復習する権利さ。今回の事件は人災と判断され、きみには三人の領主に復讐する権利が与えられることとなった」
ニナとミランダ、アレクサの真なる仇が月島桜だと知ってる私にはあまり興味のない話だった。
「三人の領主のうち一人は昨晩磔刑中に息を引き取り、残る二人は磔から下ろされた後に『魂の牢獄』刑が執行され、身体は晒し首にされた」
結構恐ろしいことをさらりと言うなぁ。
「二人の魂は三年間帝国で保管した後、君に引き渡される。君はその魂を砕くも捨てるも自由だ。石を砕いた場合に魂がどうなるかは誰もわからない。それでも、砕くことを望む人は多い。あるいは、人の手の届かぬところに捨ててくるパターンもある。こうした場合には、中の魂はこの世の終わりまで苦しみ続けることとなる。まあ、好きにするんだ」
「本当は私が復讐をしたいところさ。そういう遺族は多い。しかし、当然、直接被害を受けた君に復讐権が与えられる」