女神の口づけと自由の翼
今回は軽く。
翌朝、ジルバは驚いた顔で言った。
「なんと、治っている」
「昨晩女神様が現れて口づけをしていただきました」
「女神の口づけ……なるほどそれで。女神の口づけを受けたのであれば、おそらくは体を検査するだけで大丈夫でしょう。完治しているはずです」
「女神の口づけにはそんなにすごい効果があるのですか?」
あの軽薄女神そんなにパワフルだったのか。
「そうですね。女神の位階にもよりますが、ほとんどの女神の口づけは、半年前のあなたの状態ですら完治させる力があります。もっとも女神の口づけが確認できるのは50年に一度もありません」
死んでさえいなければ何でも問答無用で復活させるのか?
「ああ、それと、リベルタス神殿の方から、言伝があります。あなたに譲渡したいものがあるから来て欲しい、と。容体がひどいから後にして欲しいと返事をしておいたのですが、今の容体ならいけるでしょう。ついていきましょうか?」
「はい。お願いします」
ドクター・ジルバと二人で帝都アウグスタを歩いた。帝都アウグスタは、大理石とコンクリートで出来た街。どこまでも続く道は全て、病院が面している広場に端を発している。この広場には、元老院議会、皇居、大図書館など様々なものが面している。
リベルタス神殿は少し道を入った先にあった。初めて見る神殿は、陽光の中で白く光っていた。中に入ると、何やらわたわたしていた。
「何かあったのでしょうか」とドクター・ジルバに聞く。
「わかりませんね。今日が祭りの日とは聞いていませんが」
「フェニカ様がいらっしゃいました」張り詰めた声で一人が指示を出す。
「いらっしゃいませ、フェニカ様」大勢がぞろぞろと出迎えに来た。
「これは何事ですか?」と私が聞くと、皆が答えた
「昨晩、我々全員の夢の中にリベルタス様が現れ、フェニカ様に司教の位と「自由の翼」を授けるように、との神託が降ったのです」
「一度も会ったことのない方に司教の位を与えることはなかなか例のないことです。しかし、それ以上に神殿に伝わる宝である「自由の翼」を授けるように、との神託に神殿一同驚いているところです」
「無論、神官全員が同じように夢を見たため、これがリベルタスさまのご意思であることは疑いようもありません。あなたに授けます」
「儀式は明日執りおこなう、という形でよろしいでしょうか? 準備にてんやわんやしておりまして」
「はい、私のためにすみません」
人使いの荒い女神だなぁ。