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夢と指令

 その日の夜、夢の中で女神が出てきた。

「ぱんぱかぱーん、フェニカさん生存おめでとうございまーす」

「生存?」

「今日はあの日から1年と1週間目ですよー。一週間が生存率50%のラインなので、私がわざわざ生き残った方の前に現れることにしてるんです。だいたい半数の人は、一年間好き放題したツケが回って、一週間以内に殺されるんですよ。あなたのお仲間の三人みたいに」

 この女神、それをわかっていて黙っていたな。

「あー、今私を疎ましく思ったでしょ。私はちゃんと注意事項一覧もあなたがたの元いた世界で言うところの六法全書も用意しましたからね。読まなかったあなたがたが悪いんですよ」

 完全に詐欺師の言い分じゃないか。

「だいたい私を誰だと思っているんですか? 聖なる女神さまですか?」

「あれ? 違うの?」

「私はあなたがたの言葉で言うなら『混沌にして中立』。自由を愛する気まぐれ神様です。文句を言われる筋合いがあるなら、履歴書をランダム交換したくらいです。あれ本当は交換なんて制度ないんで」

 衝撃の事実がポンポンと……。

「人の命をなんだと思ってるんですか?」

 私はつい言ってしまった。

「なんとも思ってませんよ。神が人間を重視しているなんてそんな高慢な考えを本当に持っていらっしゃるんですか? 人間なんて、一山いくらの賭けの対象です」

 平然と言ってのけた。神と人にはそのくらい差があるのだろう。

「ではなぜ、アフターケアなんてことを?」

「あなたは拾った子猫ちゃんが可愛かったら最後まで面倒見ようと思いませんか? そういう感情です。私、可愛いものには目がないんですよ。今のあなたもとっても可愛いからキスしてあげますね」

 ちゅっ

 女神の口づけは柔らかく、艶やかで甘い香りがした。唇が触れている僅かの間に10回くらい鼓動がなった気がした。力がみなぎる。

「さて、本題に入りますね」

 本題……とは? もう帰るのかと思っていた。

「実は私、アルフォンスさんから宣戦布告されまして」

「は?」

 月島桜が? 女神さまに宣戦布告?

「私の人生を返せだの何だのとうるさんですよこれが。だから、知りませーんって言ったら、いつか必ずお前を討つって言われてしまって……。私持ち回りの転生担当の仕事しただけなのに酷くないですかー? しかも、しなくてもいいアフターケアまでしてるんですよー」

 女神さまと月島桜じゃ根本的に話が噛み合わないな。うん。感性が違いすぎる。

「そこで女剣士フェニカ、あなたに命令です。女神の祝福を授けたので、アルフォンスを討ってください」

 ふむ……。どうしたものか……。いや、結論は出ているのだが……。

「私にとって月島桜はニナとミランダの仇。必ずや撃ち倒します」

「よく言いました。一応証拠として、あなたの履歴書を見せておきますね。


----------

名もなき女奴隷


性奴隷として薬漬けにされ性を売る

騎士に惚れられ妾になる

人体実験の材料に使われかろうじて生き残る

冒険者の宿で体を売る

ドラゴンの襲撃で知り合いもろとも全滅するも一人だけ生き延びる

極刑に処される

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 性を売るのとドラゴンの襲撃だけは文字どおり実行しなきゃならなかったんですが、残りのはできるだけ柔らかい形で実行しました。「体を売る」って表現を「体を資本に戦う」って意味に解釈するって案を通すの結構大変だったんですから感謝してくださいね。あと、極刑が死刑じゃなかったのも幸運でした」


「女神様、なんだかんだ私のことを助けてくださったんですね」

「そうです。もっと感謝してください」

 私はまた涙を流した。最近涙もろい。

「あなたにはもう祝福を授けました。女神の口づけの効果、わかりますか?」

「年齢が若くなる?」

「違います。傷の回復と、才能の開花、そして幸運です」


「あなたに祝福を」

 そう言って女神さまは消えた。そういえば名前を聞き忘れた。




「言い忘れてました」

 女神さまもどってきた。

「私の名前は自由の女神リベルタス。それと、人間界の法律には私は関与出来ないので、そこなんとかしてくださいね。じゃ」


 ……

 法律部分丸投げかよ。

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