2か月の下積み、そして初陣
それから2か月は下積みの日々が続いた。先輩パーティの補佐が俺たちの主な仕事だった。前線に出て戦うには、まだまだ甘い。そう判断されていた。
大洞窟に潜む資料の親玉……の周りを取り囲む骸骨を倒したり、マンドレイクを引っこ抜く際の見張りをしたり……
簡単な仕事でもなければ、面白い仕事でもなかったけど、楽しかった。3人で一緒に敵を狩り、3人で一緒に飲んで、食べて、3人で一緒に寝る。そんな生活が楽しかった。
仕事の後は毎回宴会だった。
「フェニカ、ニナ、今晩は食べて飲むよー」ミランダはいつもそう言って俺たちを誘った。
「うん」俺は楽しく答え、「飲む」ニナは酒の事で頭がいっぱいだ。
そんな中俺は、ニナに惹かれるようになっていた。ニナは、ミランダと違って派手な子ではなかった。自分の仕事は着々とこなす子で、隠れた自信家だった。しぐさの一つ一つが私の心をつかんだ。できることなら男として一緒にいたい、そう思った。
下積み時代で印象的だった話がある。恋の話だ。
ミランダが身の上話を始めたのがきっかけだった。「私さ、許嫁がいるんだよね」「ほう」ニナが即座に反応した。「でも、ミランダって家出中じゃないの?」と私が聞くと「うん。許嫁と喧嘩しちゃってさ」「ほう。喧嘩するほど仲が良いってやつですかな」ニナは恋バナが好きらしい。「そんなんじゃないってー」などと二人がきゃっきゃしている中、俺が気になったのは、ニナのことだった。
「ねえ、ニナの方はどうなの?」二人の話に割り込んで俺は聞いた。
「む」
「どう……とは?」
「いや、好きな人とかいるのかなーって」
「秘密」即答だった。
「ふぅん」ミランダは楽しそうだった。
結局その晩はみんなして、何ら新しい情報を出すことなく、グダグダした話し合いで幕引きとなった。
そして、2か月くらいがたったある日……
「あんたたちに、初の単独クエストをあげるよ」ついにおばちゃんからの許可が出た。
「明日名付け親が街に帰ってくるんだ」と二人に話していたらおばちゃんが来て「あらぁ、それならいい話を用意しないとね」と言って仕事を回してくれたのだ。
話の都合で、ダークトロールを倒した、の部分をアンデッドを倒したに変更しました。