ドキドキ♡履歴書交換タイム
私がTSモノ好きで書いているのですが、TSものを読んだことのない方にも是非読んでいただけたらと思います。宜しくお願いします。
俺は学校の講義を退屈に聞いていた。数学なのに英語みたいだなぁとか毎日思いなが受ける授業。当然楽しいはずもなく、ノートには落書きだけが増えていった。こんなんでテストどうしよう。
俺は隣の席の可愛い子、月島桜といい関係になる妄想をしながら授業時間が終わるのを待っていた。彼女が暴漢に襲われそうになったところを俺が颯爽と助けに現れ、そのままいい雰囲気に。どちらともなく手をつなぎ、実はお互いに好きあっていたことを確認。そのままホテルへGO。
しかし現実はどうだろう。俺は月島桜と話すことさえ許されないスクールカーストワースト。恋愛経験なし、当然女性経験なし、勉強できない、デブ、キモオタ。背は低いし、すでに禿げはじめている。あー、なんで学校来てるんだろう、俺。っていうか生きていて楽しいのか、俺。そんなことをじっとり考えてしまう。
全くもってつまらない日常だった。いけてないオタ仲間でさえ彼女がいるのに俺ときたら……。
そんな俺の日常は突然終わりを告げた。俺と月島桜の周囲数人を巻き込んで。
熱い。熱い熱い熱い熱い。
何が起こったのかわからなかった。まず真っ先に熱さで顔をやられた俺は、周囲の様子を一切把握することができないまま、全身が熱くなり……
いや
やめておこう。
これ以上思い出したくない。ただ、その時は、一生分の苦しみを味わったと思った。とにかく悲惨な事故だった。もっとも、それは俺を待ち受ける人生の序の口に過ぎなかったのだが。
気がつくと女神の御前だった。
なぜ女神だとわかったのかはわからない。ただ、俺たちは直感した。この方は女神であると。見た目は美しい女性だった。長い衣を羽織っている。この女性をなぜ神だと思ったのかはわからないが、誰がどう見ても神であった。
その場にいた俺たち、月島桜を除く全員が思わずひれ伏した。
月島桜だけは立ったままきっと女神を見据えていた。
「かわいそうに。あなたがた5人はストーブの爆発によって若き生を断たれてしまいました」
俺たちがストーブの爆発でなくなったのだと初めて知ったのはこのタイミングだった。女神は慈愛に満ちた表情で俺たちを見つめている。
「そ・こ・で。あなたたちは異世界で転生させてあげまーす」
突然調子が変わった。誰だこいつ。女神感はバリバリあるけど、コレジャナイ感。
「あなたたち好きでしょー。剣と魔法のセ・カ・イ。あなたたちには、剣と魔法の世界で英雄になる権利をあげます」
「おおっ」と声が巻き起こる。俺たちの夢が叶った。
月島桜だけはまだ不機嫌そうに女神を見つめていた。
「今回はおまけとしてー、あなたたちにキャラシを作らせてあげまーす」
キャラシとか言っても俺にしか通じねーよ。ほら、みんなキョトンとしてるだろ。
「えーと履歴書を作らせてあげます。勇者だろうが、ドラゴンキラーだろうが、ハーレムだろうが、王様だろうがあなたがたの思いのまま。書いたことがそのまま現実になります」
「うおー」俺たちの興奮は最高潮だ。月島桜以外。
「死ぬまでの人生を決めても楽しくないので、履歴書にかけるのは過去と、転生後一年間だけとします」
まあ仕方あるまい。
「ここからが今回のイベントの肝なんですが、その後に『ドキドキ♡履歴書交換ターイム』があります」
なんだその嫌な予感のするイベント。
女神は俺たちに構わず言葉を続けた。
「ドキドキ♡履歴書交換タイムでは、皆さんが作った理想の履歴書をランダムに交換します。そして、受け取った履歴書通りの人生を歩んで頂きます」
目の前にいた野球部の上田が質問した。
「つまり、自分の書いた履歴書通りの人生を歩めるとは限らないということですか?」
女神は答えた。
「そうなりますね。まあ、たかだか20%、ストーブが爆発する確率なんかよりはるかに高いですよ」不謹慎極まりない上に失礼ですよ、女神様。神様にも不謹慎とかいう概念通用するのだろうか。
「そ・れ・に、自分が歩めたかもしれない理想の人生を他人が歩むって、倒錯的に屈辱で見ていて興奮しません?」
この女神絶対性格悪いわ。
「では、キャラクター作成ターイム行ってみましょう!」
女神はどさどさっと、机の上に資料をおいた。「この資料全部使ってくださいねー」
さて、どんな人物にするか。かっこいい英雄。うん、それがいい。世界に二振りとない愛剣を振るうとんでもなく強い騎士。
そんな厨二的妄想全開の超かっこいいエリートイケメン最強剣士を作り上げた。名前は、アルフォンス・ド・フリードリヒ5世。一年間の間にドラゴンを始めとする神話的生き物を10体以上討伐して一国の王となり、ハーレムを作る。そんなストーリーだ。
他の皆も似たような超絶な人生を描いていることだろう。この分なら誰のに当たっても楽しい人生が待ってそうだ。月島桜だけはまだまだつまらなさそうな表情をしていた。
「結果発表ターイム」
女神様が楽しそうに履歴書を配り始めた。
「あ、適当に配ってるように見えて、女神的力で完全にランダムなんでそこんんとこ勘違いしないよーに」
女神的力ってなんだろう。でも、女神がランダムっていうんだからランダムなんだろう。そう思わせる何かがこの女神にはあった。
「じゃあ、一人ずつオープンしていきましょう。まずは君」
そう言って指名されたのは野球部の上田だった。人生は俺が書いたのと同じようにドラゴン殺しの英雄だった。俺が書いたアルフォンスのほうが強そうだな。
上田から順に3人まで来た。残るは俺と月島桜。履歴書は二枚。その中の一枚が俺の書いたアルフォンスだ。ここまでくると俺は確信していた。俺の転生先はアルフォンスだ、と。お姫様はどんなに美人だろうか、とか、ドラゴンはどのくらい手強いのだろうか、とか考え始めていた。
女神は楽しそうに俺たちが一喜一憂する様を眺めている。月島桜をみると、むっとするを通り越して青ざめていた。なんでだろう。
「最後の二人は同時に発表しましょうか。行きまーす。せーのっ」
月島桜に向けて「ドラゴン殺しの英雄にして一国の王、アルフォンス」
俺に向けて「名もなき女奴隷」
……… は?
……… は?
「俺、名もなき女奴隷?」
女神はいい笑顔でニッコリ微笑むと言った。
「はい」
「誰だ、こんなこと書いたの」
俺は泣きたいのを必死にこらえた。俺の人生を返せ。
「私よ」と言ったのは月島桜だった。「私の人生はこの事故でめちゃくちゃになったわ。パパとママにも二度と会えない。彼氏にも。私を待っていた輝かしい将来も。それに、この雰囲気だと8割の確率で女も失う」
死んだ人間は、月島桜以外男だった。
「異世界が何? それに浮かれているあなたたちが許せなかった。死んでなお楽しそうに馬鹿笑いしているあなたたちが。だから考えたの。80パーセントの確率で自分が書いたのに当たらないなら、悪い人生を書けば良いと。あなたたちの誰かが酷い人生を歩めば良い、と」
月島桜は俺の方に近づき、言った。
「残念だったわね。あなたの人生、私が楽しんどいてあげるわ。あなたは一生性でも売ってなさい。そう、冥土のみやげに教えてあげると、私はこの人生、あなたに当たることを望んでいたわ。いつも私に性的な目を向けていたあなたにね」
「さてさてーそれでは新しい体に作り変えますよー。ぼんっ」
ぼんっと音がして俺たちは変身した。4人はイケメン騎士に。そして俺は……。
「胸がある。下は、ない。俺の…俺の…」涙が出てきた。出てくる声は可愛らしかった。その声を聞きながらさらに泣いた。
「おいおいそう嘆くなよ。美少女になれたのは、月島さんのおかげだろ」と上田が言った。
残りの二人も続く。
「デブでキモオタだったお前が一生触れないような美少女に触れることができてよかったじゃないか。これからは揉み放題だな。月島さんに感謝しないとな」
「お前の人生は月島さんのおかげなんだから、月島さんに御礼言っとけよ」
月島桜、アルフォンスに言った。
「月島桜、覚えていろ」
「じゃあね。あなたのこと、私はもう覚えてない」
「では新たな人生へーレッツゴー」
読んでくださってありがとうございます。
月島桜の名前は「月島さんのおかげ」って言いたかっただけです。
TS(性転換)モノが苦手な方も是非読んでみてください。