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05『初めての場所で、どこにでもある景色と』

 くたくたになった足を引きずるようにして、最後の一歩を踏み出した。曖昧なスタート地点から始まって、ようやく届いたゴールラインに到達。気怠げな疲労感と共に、充実感のようなものが湧き上がってくるのを感じた。

 そう、僕らは到着したのである。

 ファンタジーではおなじみの補給ポイントに。


「――というわけで、『ゼンダ村』に到着っと」


 一歩先を行ってたスフィアさんが立ち止まり、目の前の景色を見渡しながら言った。

 僕も息を整えながら、それに釣られるように周囲を見渡す。そこには大きな道を挟むように並んでいる建物があり、数え切れない人が行き交っている。


「村……というよりは、街のような」

「どうも昔の名残らしいですよ、ゼンダ村の村の部分は」


 何はともあれ。

 こうして、僕とスフィアさんはファンタジーに定番な補給スポットの村に到着したのである。いや、本当に村というよりは街にしか見えないんだけれども。

 ――僕とスフィアさんとの出会いから、一日が経った。

 森を抜け、一般的に使われている道に出てからは、朝から夜まで割と歩きっぱなし、日が沈むと道を遮らないような場所に家を召還して、シャワーを浴びて飯を食って寝て、朝になると準備をして歩き出す。そして今に至る。

 なんとなく、異世界での生活に慣れてきたような気がする。本当にちょっとだけだけど。

 そうして迎えた今日。

 僕と彼女は、『カナン』の方角にある『ゼンダ村』に立ち寄ることになったのである。

 やっぱり村というよりは街だけど。


「にしても、ゼンダ村ね……」


 言葉を反芻するように呟く。

 もし仮に、この村の名前に元ネタがあるとしたら『ゼンダ城の虜』だろうか。古典小説の方じゃなくて、アングラ演劇の方のイメージが強いけど。

 活字で読んでみたいと思ってたんだけど、今となっては難しい。ここ異世界だし。演劇に飢えそうだ。

 ……今年は、利賀村に行けなさそうだ。夏にあそこで演劇を観るのが楽しみだったんだけど。無理っぽいよなぁ。めげそう。

 それはそうと、『ゼンダ』って単語は緑の帽子と衣装の『ゼル○』シリーズを連想させやしないだろうか。思い出したら新作がやりたくなってきた。カムバックゲーム生活。


「静麻さん、切なそうな顔してますけど……お腹すきましたか?」


 密かに悲しんでいるところを慰めるかのように、スフィアさんが問いかける。と同時に、僕の腹の中から虫の声が聞こえてきた。

 恥ずかしい。

 けど、あながち間違いでもないような気がしてきた。腹が減ると余計に悲しいことを考える、ってのはこの世界でも同じだと思うから。腹を満たせば気持ちもそこそこ満たされる。

 何かを食わなければならない。


「それじゃそろそろ、飯にしましょう」


 スフィアさんが提案するように言う。

 それを見た僕は、彼女の提案を全肯定するかのように首を縦に振るのだった。



 ××××



 ――この世界は、冒険者たちによって成り立っている。

 正確に言えば、冒険者という名前で一括りにされた労働者たちだ。

 異世界転生モノでおなじみのギルドで依頼を受け、それをこなすことによって路銀を稼ぐ。

 依頼の内容も様々だ。薬草の採取やモンスターの討伐といったお約束はもちろんのこと、近隣の農家の手伝いや、隣町まで荷物運びと言った具合に千差万別である。

 生きている人にも色々ある。一つの場所に定住する人もいれば、ふらふらとあちこち旅して回る根無し草のような人もいる。

 冒険者というのは、そういう人たちが手っ取り早く仕事にありつけ、路銀を得ることが出来るシステムなのだ。


(――日雇いのバイト、みたいなもんかな)


 なんとなくそう思う。

 先ほどギルドに向かう途中でスフィアさんに教えて貰ったことと、実際にギルドの中で手続きをしながら周囲を観察している内に発見したことを統合した上で出た答えだ。答えというよりは、そうなんじゃないかなって程度のものなんだけれども。


(今日まで脈々と続いているシステム……か)


 僕は、ポケットに突っ込んだカードのことを考える。

 ギルドで手続きを終えた後に手に入れた、ギルドカードと呼ばれる魔法技術が施された謎の板だ。

 小さくて薄っぺらく、曲がりやすい。けれども、千切ることや折り畳むといった損壊に繋がるようなことが出来ない物質で出来ている。感触は金属っぽいけど。


(やっぱ、あなどれないなぁ、異世界)


 深呼吸をしながら、ぼんやりと思う。

 とにもかくにも、この世界は割と便利に出来ている。あらゆる技術が蔓延する日本と比べても、上か下かなんて区別をするのはナンセンスだと思えるくらいには。

 ――異世界を舐めちゃいけない。


(僕のいた世界と、変わらない部分があるんだし)


 僕は改めて周囲を見渡す。騒がしい空間の中を。

 そこには色々な人がいた。

 耳の短い人間はもちろんのこと、スフィアさんのようなエルフ耳の人もいれば、ドワーフ的な身長の低いガチムチオジサンやロリペド熟女もいる。もちろん、ケモナー御用達なモフモフ系の人も一杯だ。すごーい。たっのしー。けものフ○ンズは良いぞ。

 いやまぁ、それはここに来るまでの間に充分というほど確認したんだけれども。やっぱりファンタジーってしゅごい。

 ――けれども、ファンタジーでも変わらないものがある。


「はい、おまち」


 感慨に耽っている内に、スフィアさんが戻ってきた。僕の分の食事を持って。机の上にお盆が置かれる。

 僕の目の前には、湯気が立つどんぶりがあった。出来たての熱々であることは言うまでもない。


「席のキープ、ありがとうございます。いつもは注文している間に取られちゃうので」

「いえいえ。それよりも、ほら」

「それもそうですね。冷めちゃう前にいただきましょう」


 スフィアさんに促されるようにして、僕は机の上に置かれた入れ物の中から箸を取り出す。割り箸でなく、再利用可能な代物なのが僕としては好感高い。

 とにもかくにも。

 ようするにあれだ。


「いただきます――」

「――いただきます」


 ――昼飯の時間であった。

 僕とスフィアさんは、ギルドで一通りの手続きを終えてから、隣に建っていた食堂を訪れていた。

 腹が減っては戦が出来ぬとばかりに。というか空腹には誰も耐えられないのだ。三大欲求の一つだし。

 とまぁ、そんなこんなで食欲に導かれるままに、食堂で飯を食うことになったわけである。


「うん――いける」


 そして、僕は親子丼を食っていた。

 親子丼である。卵と鶏肉とミツバとご飯のハーモニーが楽しめる一品だ。日本ではおなじみと言えるメニューかもしれない。

 それをなぜか僕は異世界で食べていた。いやまぁ、そういうこともあるんじゃないかなとは思っていたけれども。異世界ってすごいものなんだね、うん。

 ツッコんだら負けだ。


(いけるというか、美味いな)


 ともかく、ツッコミを放棄して飯に集中する。

 言い方は悪いけど、日本のファミレスで食えるレベルに届いている。昨今のファミレス飯とコンビニ飯を侮れないと思う僕としては充分褒め言葉のつもりだ。レシピが良いのか、腕が良いのかはわからないけど。

 ちゃんと火が通っているのはもちろんのこと、出汁の味付けもしっかりしていて、ご飯に良い具合に染み込んでいる。

 なるほど、異世界で食の心配はあまりしなくても良いらしい。クオリティ的な意味で。

 もし仮に食中毒か何かでどうにかなったとしてもその時はその時だ。どうにでもなーれ。

 箸を動かして、親子丼を次から次へと口に運ぶ。

 ふわふわでトロリとした卵と、噛めばさっくりとほぐれる鶏肉が舌の上で絡み合う。これらの要素が出汁の味をまろやかにコーティングしているって感じだろうか。美味しい。そして、ほどほどの歯ごたえが楽しい。

 真ん中にちょこんと乗ったミツバの食感も忘れちゃいけない。しっとりとした歯触りと、通り抜けていくような爽やかな香りが良い感じだ。


「静麻さん、ミツバ大丈夫なんですか?」


 などと考えていると、カツ丼らしきもの――というか、どう見ても、カツ丼だ――を食べる手を止めたスフィアさんが、僕の方を見つめていることに気が付いた。

 ピタリと箸が止まる。

 一旦食事を中断して答えることにした。会話をしながら食事をするのは、結構好きだし。


「うん、大丈夫……というか、結構好きですよ、ミツバ」

「苦手な人とか結構いるんですけどねぇ」


 ちなみに、この食堂ではミツバ抜きで注文することも出来るらしい。この世界でも苦手な人はいるんだなぁと微笑ましかった。


「スフィアさんも大丈夫っぽいじゃないですか」

「最初はちょっと苦手だったんですけどね。二回目で慣れました」


 案外、順応性が高い人が多いのかもしれない。この世界は。

 それからはどちらともなく食事を再開した。僕は箸を動かして、彼女はスプーンを動かして。口に運んで噛み締めて、ジックリ味わってから嚥下する。その繰り返し。

 やがて、どんぶりの中は空っぽになった。


「一足先に――ごちそうさまでした。あと、奢っていただいてありがとうございます」


 食材と料理人に向けて合掌しながら、親子丼の代金を払ってくれたお礼を言う。

 スフィアさんと出会ってなければ、食い逃げ犯として異世界デビューすることになったかもしれないのだから。


「良いんですよ。一人よりも二人で食べたかったので」


 彼女の方を見ると、どんぶりの中にはまだ三分の一ほど残っていた。カツが数切れ残っている。もう少しかかりそうだ。

 僕は、なんとなしに周囲を見渡す。

 ――何度確認しても、不思議な光景である。

 食堂には、僕ら以外に飯を食う者たちが大勢いる。老若男女問わず、あらゆる種族がテーブルを囲んでいるのだ。

 友達か、恋人か、仲間か、家族か、交差しただけの他人か。ともかく飯を食べている間は誰もが平等であるかのような、そんな空間がこの食堂にあった。

 兎耳ショタが人間らしき少女と仲睦まじげに餃子とチャーハンらしきものを美味しそうに頬張っている。

 猫耳の家族連れがオムライスやらラーメンやらハンバーグ定食やら、各自好きなものを美味しそうに食べている。会話も弾んでいるようで楽しそうだ。

 エルフとドワーフのおっさん二人が、白昼堂々とビールらしきものを飲んでいる。ツマミはチーズの燻製とサラミソーセージらしく、二人はそれを美味そうに肴として堪能している。こういうのを見ると酒が飲める大人が羨ましく思える。

 そういえば、この世界で飲酒は何歳からだろうか?


(……とりあえず、お酒は二十歳になってからにしよう)


 一応、それについては今度聞くとして。

 とにかく、食堂は騒がしいけど平和で、日常という言葉がピッタリと当てはまりそうな場所だった。


(これがこの世界の普通なんだ……)


 やはり、僕が住んでいた日本とあんまり変わらないように思う。幸せに飯を食うことを望むというのは。

 物語のジャンルで例えるなら、ファンタジー日常モノだろうか。或いは異世界スローライフ。なんかそんな感じがする。まだこの世界の一面しか見ていないようなものだけど。


「――ごちそうさま」


 などと考えていると、食事を終えたスフィアさんが合掌していた。腹が満たされて穏やかな表情を浮かべている。


「お待たせしました」

「いえいえ。奢って貰ったのはこっちですし」

「それでも、です」


 食後の緩やかな会話が始まって終わる。

 なんだか僕と彼女に出来た繋がりが、ほんの少しだけ太くなったような気がした。少し嬉しい。

 それから僕らは食堂を出た。

 腹ごなしのつもりで歩き出す。目的地は決まっていた。


「さっきも言いましたけど、今日は宿に泊りましょう」

「あの家を使うほどのことでもない……でしたっけ」

「そうそう。あれは、超豪華なテントみたいなものですからね。使わないで良い時は使わなくても良いかな、と」


 スフィアさんの言葉を聞きながら、思い出す。

 彼女と出会ってから今に至るまでの間に聞いた、この世界における常識のいくつかを。再度確認のため反芻する。

 この世界には冒険者と呼ばれる労働者によって、ある程度支えられているということ。

 無論、冒険者以外にも地域の生活を支える職を持つ人は多数いる。農家とか猟師とか大工とか。専門職というべき。

 冒険者はそんな彼らでも出来そうにないこと、或いは手が足りなくて取りこぼしてしまうところをフォローするような存在だ。

 何でも屋みたいなもの、かもしれない。ある程度依頼を選ぶ自由があり、選んだ仕事をこなすことによって金を稼ぐ。それである程度、生活の隙間をカバーする、というか。

 ……いけない。少しこんがらがってきた。

 ともかく、スフィアさんはそんな冒険者であるわけで――ついでに僕も冒険者になってしまったけど――時々依頼を受けたりこなしたりなんかして、生活費を稼ぎながら『カナン』を目指しているという感じだった。


「ここにしましょう」

「はい」


 やがて、目的地である宿にたどり着いた。ギルドで教えて貰った場所のうちの一つだ。木造二階建ての西洋ファンタジー風である。

 二人して中に入ると、彼女はカウンターに向かって歩き出し、瞬く間に受付を済ませてしまった。


「何泊しますか?」

「一泊で」

「部屋はどうしますか?」

「一人部屋を二つお願いします。空き室になってますか?」

「大丈夫ですよ」

「料金はどうすれば良いですか?」

「前払いで――このくらいを」

「ちょっと待っててくださいね……はい、っと」

「えっと、五、六、七……はい、確認しました。ごゆっくりどうぞ」

「どうも。では、部屋に行きましょう、静麻さん。二階の五号室と六号室だそうです」


 とまぁ、そんな具合である。

 僕とスフィアさんは二階に上がり、隣同士の別々の部屋に入った。スフィアさんは五号室で、僕は六号室だ。

 六号室は、シンプルな内装だった。ベッドと机と洗面所とトイレだけがある。必要最低限の家具だけを用意してあるって感じだ。もちろんテレビなんてものはない。

 手荷物を置いて、ベッドに寝転がる。


「……あー、緊張した」


 横になったせいか、口から声が溢れ出た。

 割と本音に近い言葉が一つ。いや、自分でも本音かどうかはわからないけど、本音っぽい言葉だった気がするので、これは自分の本音だということにしておきたいだけで。

 ――つまりは、緊張した気がする。

 うん。この言い方の方がまだシックリくる。


(なにせ、RPGでお約束の村だからなぁ……)


 今まで観たことが無いものに好奇心が疼いてしまうことは、そんなに珍しいことじゃない。自分が知らないものに焦がれてしまうものなのだ、人間というものは。多分、きっと。

 ――その中でも、ギルドという単語と施設は胸を昂ぶらせる。


(本物のギルドに冒険者、か)


 僕は、ポケットに突っ込んだままのギルドカードを取り出す。掴み取った腕をそのまま伸ばして、窓から差し込む光に翳した。

 金属の板のようなギルドカードには、楠田静麻の名前が書かれていた。それ以外は真っ白である。小説でおなじみのステータスやスキルなどの表記は書かれていない。

 ギルドカードは、本人確認とどれだけの依頼を受け、達成したかを証明するためのものだ。達成した依頼の質と数によってランクが上がるというシステムらしい。

 ぶっちゃけ、それだけと言われればそれだけなんだが、このギルドカードがあればアーティファクト的なもので手続きとかが簡単になるらしい。しかも原価が安いそうな。

 おまけに、このギルドカード。魔法を用いているのか、紛失しても持ち主の元に戻ってくる自動帰還機能や、ギルドカードの重複防止警報なるものがついているらしい。

 とまぁ、よくよく考えてみると割とツッコミどころが多いような気がしてきた。魔法の力ってすごーいってことにしておこう。うん。

 ――今のところ、僕のランクは最低のZ。

 まだ、この世界で何もしていないという証明がここにあった。


(僕は、冒険者になった。なってしまったのかもしれないけど、でも生きていくために、なったんだ)


 スフィアさんに助けられて、色々とお世話になって。

 今でもまだ疑っていることはあるし、胸の中にこびり付いた不安はなかなか拭い取ることは出来ないけど。

 何もしないよりは、何かしている方がマシな気がするから。

 そのためには――。


「――静麻さん、ちょっと良いですか?」


 控えめのノックの音が聞こえてきた。

 と同時に、五月蠅くない程度の控えめな声も。

 スフィアさんだ。

 カギを開けて出迎える。


「どうしました?」

「いや、夕食まで時間があるじゃないですか。それでですね、ちょっと外に行きませんかと」

「良いですけど、何をしに行くんです?」


 僕の問いかけに、彼女は少し考え込んでから答える。


「あの、静麻さん――スライム、討伐しに行きませんか?」


 そして、その言葉が退路を断ち切ったような気がした。退路なんてものは、最初から無いと思ってたつもりだったのに。

 目を逸らしていた。

 あまり気にしないようにしていた。

 スフィアさんと出会ってから、何度も遭遇して、突き付けられた現実だってのに、まだ僕は自分の妄想に甘えている。

 ――この世界には、知性なき獣がいる。

 いつかどこかに、自分と似たような特徴を持つ存在には知性があるのではないかという疑問があった。

 例えば、人間は猿に。

 猫や犬や兎と似たような特徴を持つ人は四足歩行の動物に。二足歩行で言葉を操るオークは豚や猪に。エルフは似たようなシルエットの蠢く影に。エラ呼吸が可能な魚人たちは陸に上がると死ぬ魚に。

竜人は自分たちよりも巨大な身体を持つ龍に。

 かつて彼らは、言葉と魔法で問いかけた。

 あなたは言葉が使えますか。あなたには知性がありますか。あなたは私たちと同じような存在ですか。

 人が人の中に獣を見いだすのと同じように、人が獣の中から人を見いだそうとした。

 やがて、長く続いた歴史が一つの結果を導き出した。

 ――獣たちに知性はないのだと。

 知性ある者たちがいた。知性が発見された者たちがいた。知性を得ようと努力した者たちがいた。獣のまま程良い距離感と保とうとした獣たちもいた。

 けれども、知性を望まない獣たちもいた。

 知性の代わりに攻撃性と暴力性だけを詰め込んで、本能の赴くままに暴れ食い散らかして生きていく。

 共存の可能性を放棄した獣。

 ――そんな獣たちのことを、この世界は魔物と呼ぶそうだ。

 そういう話を、僕はスフィアさんから聞いていた。


「スライム、ですか」

「静麻さんは、一度も魔物と対峙したことがないって聞きましたから。いや、まぁ、どんなところに住んでたのか、すごく疑問ではあるんですけど、それは置いておいて」

「魔物がいませんでしたからねぇ、僕のところ」


 僕は魔物がいない世界からやって来た。

 正確にはいたのかもしれないし、いなかったのかもしれない。いないことを証明出来なかったのだから。どちらにせよ、今は知りようがないが。

 いてもおかしくないかもしれない、とは思うけど。

 ともかく。

 だからこそ、知らなくちゃいけない。経験しておかなくちゃいけないと思うのだ。

 魔物を殺すということを。

 生きるために魔物を討伐する必要があるということを。

 ――この世界の常識を。


「それで、どうします? 行きますか?」

「――行きます」


 そうして、僕は魔物と対峙することとなった。

 いつか通らなければいけない道だと思うから。そうする必要があると思ったから。おまけにスライムという存在に対する好奇心もある。ファンタジーにおけるお約束みたいなものだし。


(それに――)


 ふと、脳裏に記憶が過ぎる。

 昔のことを。

 人形のような彼女のことを。


(あれよりは、きっと)


 ――彼女を殺した時に比べれば、きっとマシに決まっているんだ。

ぎ、ギリギリセウト……水曜日に間に合った!(もうとっくに、前回予定していた更新日から大幅にずれちゃいましたけど)

というわけで、割と難産でした。

意識があっちにフラフラこっちにフラフラという感じで。

ついでに言うと、色々ありまして次回以降もそうなりそうな気がしてきました。不定期更新になるというか、そういうわけでして。本当に申し訳ない(某クソ博士風に)


次回はバトル回……になればいいなぁと思いつつ、今回はこの辺で。

ではまた、次回。

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