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病みお嬢様のお悩み   作者: 亀の甲羅
第7章
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私の大切な人

私は柏崎(かしわざき) 杏花(きょうか)


高校1年の時まで、超エリートなお嬢様学校にいたのだけれど、私はそれが嫌だった。私は普通に学校に通って、普通に友達作って、普通の生活がしたかった。


だからこの"鷹夏高校"に入れば、普通の生活が出来る…と思っていた。


だけど、転校初日から皆 私の名前を聞いただけで、私の事を超有名な財閥グループのお嬢様だと知り、避けるようになっていた。それからというもの、私は心を閉ざし、話し方も性格も何もかも変わってしまった。

そうして私は誰とも関わらなくなってしまった。




—————私は先日、武嶋くんと連絡先を交換した。同い年の相手では、武嶋くんが初めてだ。

私は嬉しくて恐らく無意識だろう

自分でも気がつかないうちに武嶋くんを誘っていた。



"次の土曜日にどこか行きませんか?"


なんて誘っていたのだ。

行くあてなんてない。武嶋くんの好きそうな所なんて私は知らない。


でもただ、武嶋くんと一緒にいたい。

それだけの思いだった。




—————土曜日。迂闊だった。私は自分自身を責めた。武嶋くんに待ち合わせ場所を指定しなかったのだ。

普通なら、待ち合わせ場所を指定してから会うものなんだろうけど、てっきり私は待ち合わせ場所を言ったと思っていた。



「あ、いたいた。おーい、柏崎さーん!」




…驚いた。待ち合わせ場所を指定しなかったのに、どうして武嶋くんがここにいるのか。



「あの、どうして…。待ち合わせ場所…言わなかったのに…」


「ん?いやぁ多分ここだろうなって。…ここって、カップルとかの待ち合わせ場所によく使われる場所らしいんだよ。だからここかなって思って。」


「そ、そうなんだ」


「まあな。ここって待ち合わせの定番の場所みたいだしな。この柴犬の銅像の前って。」


「へ、へえ…」



気のせいか武嶋くんの服装が少しカッコいいと思った。…この2人だけの空間がとても幸せで、居心地がいいとも感じていた。この空間をもっと感じていたいとそう思った。

けれども、それは長くは続かなかった。



「お〜い光牙ぁー!」


「武嶋く〜ん!」




遠くの方から武嶋くんを呼ぶ声がする。それは見たことある"2人"だった。

何だかこの空気に水を差されたような感じだ…。




「ああ、黒部。急に悪かったな。」


「ホントだよ。…ってんん!?…なあ光牙、この子誰だ?…はっ!もしかしてお前、俺に内緒で彼女ができたのか!?かぁーっ!それならそうと早く言えよな!」


「ちげーよバカ。何でそうなる。」


「へぇー、武嶋君にも遂に春が来たんだね〜。これぞ青春っ!って感じだねぇ」


「大宮先輩まで…。違いますよ。知り合いの友達っすよ」


「かーっ!いいよなあ!こんな可愛い子が彼女だなんてよぉ!俺もこんな子と付き合いたかったぜ」


「スーちゃん?なんか言ったかなあ!!んん〜?」


「あっ…いや、その…すまん…」


「だから彼女じゃねえって…」


…思い出した。確か1人は『黒部勝』武嶋くんの前の席で何だかちょっと不良っぽい男だ。正直、私は苦手だ。



でももう1人の方はあまり知らない。見たこともない。…先輩って言ってたから私よりも年上だとは理解できた。




「ん〜?でもこの子、どっかで見たことあるような気がするんだけどな〜?」


「確かに、どっかで見た気がするんだよなあ」


「!?き、気のせいじゃないか?ほら、他人の空似とか、よくある事だし!!」


「…まぁ、そうよね。他人の空似だよね。」


「そうですよ!世界には、『自分と同じ人間が3人はいる』って言いますし。」


「…光牙、お前今日ちょっとおかしいぞ?どうした?」


「そ、そんなことないけどな?いつも通りだと思うけどな!ははは」


「そっかわかった!こんなに可愛い女の子が2人もいるんだもんね!武嶋君純粋だもんね!チェリーボーイだもんね!緊張してるんだね!」


「一言余計っすよ先輩…」


「あはは〜。ごめんごめん」


「ちゃっかり自分を『可愛い』の部類に入れたな…」


「スーちゃ〜ん?な、に、か、言、っ、た、か、な、あ?んん?」


「な、なにも言ってねえよ!?」



"また"武嶋くんに庇われた。どうして?どうして武嶋くんは私のためにここまで…?



「…ま、いっか。とりあえずさ、こんな所で立ち話もなんだから、どっかカフェとか入ろうよ」


「そうですね。そうしましょう」


「それに、その子の名前もまだ聞いてないしね」


「えっ…」


「武嶋くん、その子、名前なんて言うの?」


「あー、えっと…名前、ですか…」



…ここは私が名乗った方がいいのだろうか。いやでもそれだとせっかく武嶋くんが庇ってくれたのが無駄になる。ならばいっそのこと…




「あ、あの…私…は…式沢…鏡花…って言います…」


「…へ?」


「…式沢さん?へえ…変わった名前だね。…苗字だと呼びにくいし下の名前で呼んでいい?」


「あ、はい…どうぞ…」


「…下の名前のきょうかって、どんな字書くの?」


「えと…鏡に花って書きます…」


「あ、そうなんだ…。これまた珍しい名前だね!でもそれで鏡花って読むんだ…。…ま、よろしくね鏡花ちゃん。」


「あっ、はい…よろしく…お願いします…」



自分でも分からない。とっさに出てきた名前だった。でも武嶋くんはホッとしたような顔をしてる。武嶋くんが良かったのなら私はそれでいい。


自分自身との葛藤の中、気が付いたら外観がいい感じのカフェに来ていた。




「よし!今日はここでお昼だね!」


「まだ11時ですけど…」


「カタイこと言わない!武嶋くんの初デートとしてはイイ所だと思うよ〜?」


「なっ!だからデートじゃないですってば!」


「そんなに顔真っ赤にすんなよ。光牙。顔に出てんぞ」


「黒部!お前まで…!」


「とにかく入ろ入ろ!今なら全然空いてそうだし!ほら!鏡花ちゃんも!」


「え、あ、はい…」




武嶋くんは否定しているけど、正直私はまんざらでもない。

本当なら武嶋くんと2人だけになりたかったな〜なんて…。


正直、私はこの2人に嫉妬してしまう。

武嶋くんと昔から仲が良くて、何でも話せる友達…。


そんな彼らに私は大きな嫉妬心を抱いてしまった。



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