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病みお嬢様のお悩み   作者: 亀の甲羅
第6章
6/9

隣の友

帰り道に買い食いをする。なんてことは学生にとっては普通の事だろう。

逆に買い食いが禁止されてる学校もあると聞くが、正直なんで禁止なのかはよくわからない。


———俺はいつもの道を通るついでに、道路脇にあるソフトクリーム屋で買い食いをするのが密かな楽しみになっている。ここのおばちゃんは優しくて気前もいい。


俺はここのソフトクリーム屋でシャイニング・レモン味というおばちゃん特製のアイスを食べるのが日課になっている。



「おばちゃん、いつものやつ!」


「あいよ」



この店は結構特殊で、まるでラーメン屋みたいな構造でテーブルが並んでいる。しかも後払い制で、本当にどこぞやのラーメン屋みたいだ。




「はいよ。シャイニング・レモンね。」


「ありがとう」



いつも隅っこの方に座っているのでそこに座ろうとした。




「あ、先客がいる…。……ん?」



誰かが座っているのは確かなのだが、気になる点が1つあった。



「あれ…うちの制服じゃん…」



そう、その席に座っていたのは紛れもなく"鷹夏高校"の制服を着た人だった。同じ学校だし、いいかなと思い、相席しようとした



「あの、ここ相席いいですか?」


「…あ、はい…」


「ありがとうございま…って、えっ!?」




なんと座っていたのは柏崎さんだったのだ。直前まで気がつかなった。

しかもパフェを食べていたとは…



「あ…」



向こうも俺に気が付いたのか、慌ててメニューで顔を隠していた。



「…」


「…」



会話がない。何を話せばいいのか言葉が出てこない。



「あの…」



会話の先陣を切ったのは柏崎さんだ。



「ん?」


「…さ、さっきは教科書、ありがとう…。」


「え?あ、あぁ…。大した事じゃないけどな」


「あ、あの…それから…」


「?」


「わ、私が…その…このお店にいたことは…内緒で…」


「なんだそんなことか。誰にも言わないし、言う気もないから。」


「でも、私…その…」


「……お嬢様だから?」


「っ!!」


「あ、ごめん。気を悪くしたなら謝る。」


「…」


「別に俺は気にしないけど?柏崎さんがお嬢様でも。」


「…え?」


「だってそうじゃん?普通に学校に来て、普通に授業受けてるし。その時点でもう普通の高校生じゃん。だからお嬢様とかどうとかそんなの関係ないと思うけどな…」


「…」


「俺だって大宮先輩から聞くまで柏崎さんがお嬢様だって知らなかったし。ただ、大人しいから少し馴染めないのかな〜とは思ってたけど。」


「…」


「あぁ、悪ィ、俺1人で喋ってたよな。悪い…」


「……武嶋君って、優しいんだね…」


「そうか?言われた事ないな。…ってあれ?俺柏崎さんに名前言ったっけ?」


「あ…えと…教科書に…書いて…あったから…」


「ああ、なるほど。それでか。」


「…」


「そんなに堅くならなくてもいいよ?それに、同級生に堅くされたら変に緊張しちまうしな。」


「っ!同級生…」


「あ、そうだ。柏崎さん、携帯持ってる?良かったら連絡先交換しない?」


「えっ…?」


「いや、せっかくこうして喋ってさ、仲良くなれたんだし、これからもよろしくって意味でさ。」


「え、あの…」


「あ、悪ィ…さすがにいきなりはまずかったよな。すまん。」


「あ、いや、そうじゃなくて…」


「え?」


「……私で、いいの?」


「…もちろん。てか、同級生と連絡先交換するのって普通じゃね?」


「同級生…」




俺と柏崎さんは互いに連絡先を交換しあった。

…女の子と連絡先交換したのは大宮先輩以来で、なんかちょっと恥ずかしかった。




「よし、これでいいかな」


「ありがとう…」


「これぐらい普通だって。何かあったら連絡してくれて構わないから。」


「…うん…」


「っと、そろそろ出なくちゃな。あまり長居するとおばちゃんに悪いし。」


「…はい」


「柏崎さんはパフェだけか…。俺はシャイニング・レモンだけ、と…。じゃ、俺が払っとくよ。」


「え、でも…」


「気にすんなって。友達の分払うのは普通だろ?おばちゃん!2人分で!」


「あいよ」



2人分の代金を払い、俺と柏崎さんは店を後にした。



「あの、ごめんなさい。」


「なにが?」


「私の分まで払ってもらって」


「ああ、別にいいよそんな事。もう柏崎さんとは友達なんだからさ。あ、別に返さなくていいから。」


「…そんな、悪いし…」


「いいっていいって。俺が勝手にやったことだし。」


「……ありがとう…」


「おう。」


「…武嶋くんって、本当に優しいんだね…」


「んー、そんな事ないと思うけどな。まあ、言われて悪い気はしないからいいか。んじゃ、俺家こっちだから。」


「あ、私も同じ…」


「そうなのか?へえ、凄ぇ偶然ってあるもんなんだな。」



夕暮れ時。

歩きながらお互いについて語った。



「…私、普段は送迎だったから、こうやって歩いて帰るのは久しぶり…」


「送迎…?ああ、学校の前にいつも止まってるあのでっけえ車か。そういや今日は止まってなかったな。あれってリムジンってやつだろ?カッコいいよなあ」


「…武嶋君は、送迎とかないの?」


「ないない。送迎なんて授業参観とか入学式の時ぐらいだよ。あとは…早退する時とかな。つか、普通は送迎がないのが当たり前だぜ」


「そうなんだ…。…やっぱり歩いた方がいいのかな?」


「そりゃそうさ。歩いた方が友達と喋りしながら帰ったり、今日みたいに途中で買い食いしたりとか出来るしな。」


「へぇ…そうなんだ…」


「お、じゃあ俺はここまでだな。」


「え」


「俺はここ右曲がるけど、柏崎さんは?」


「私は左…。」


「そうか。じゃあ気を付けて帰れよ。じゃあな」


「…あ、うん。さよなら。」



俺は柏崎さんと別れ、自宅へと向かう。この辺りは夕暮れでも薄暗く感じる—————————













「また、ね…。武嶋…光牙…くん…。ふふっ……。私の…運命の人……」











第6章

隣の友 END

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