隣の疑問
俺と大宮先輩は校舎内を探し回った。
だが、いくら校舎内を探し回っても見つからなかった。
「見つからないね〜」
「そうですね…」
「もしかしてもう帰っちゃったとか?」
「うーん…さすがにそれはないと思いますよ。」
「だよね〜。…あーあ。何だか疲れちゃった。どうしていないんだろうね…」
ふと、俺と大宮先輩は外に目をやった。柏崎さんが見つからない事への諦めだろうか。いや、もう諦めているのかもしれない。
そんな事を思っていると
「あ…。ねえ武嶋くん、あれ。」
「なんですか?」
大宮先輩が指差した方を見ると、中庭のベンチにポツンと、1人の女の子が座ってるのが見えた。
「もしかして柏崎さんってあの子なのかな?どおりで学校中探し回っても見つからないはずだよ。中庭にいたらそりゃ見つからないよね…」
「…行ってみます?」
「もち!行こう!」
俺と大宮先輩は中庭に向かった。
しかしなぜ中庭なんかに居るのだろう。俺のクラスが柏崎さんを避けてるから?それともまだ学校に馴染めてないとか?
考えれば考えるほどわからなくなってくる————
「あ、武嶋くん。ほら、あそこ」
俺と大宮先輩は中庭に着くと、やはり柏崎さんがベンチに腰掛けて本を読んでいた。
「あの子が柏崎さんかあ。確かに噂通りだね」
「噂通り?」
「うん。うちのクラスでも相当な美少女って噂は流れてたよ?」
「その話初耳ですよ…」
「今言ったからね。」
そんな噂が流れていたとは知らなかった。他クラスならまだしも、先輩達のクラスにまで噂が広まっていたとは…
「ねえ、武嶋くん…」
「はい?」
「そういえば私、思い出したんだけどね」
「はあ…なんです?」
「あの子、確か名前『柏崎 杏花』だったよね?」
「そうですよ?何を今更——」
「武嶋くんはピンと来ない?柏崎って名前を聞いて。」
「いえ全く。有名人なんですか?」
「有名どころの話じゃないよ?ううん、下手すりゃ大物だよ?」
「どういうことです?」
「だからそれは————」
そこまで大宮先輩が言いかけた時だった。
「………あの。」
「っ!?」
「………」
柏崎さんは無言のまま、俺達の横を通り過ぎて行った。何か言いたかったのかどうかはわからない。
「…ああビックリしたぁ…。急に声かけるから、心臓止まるかと思った」
「そんな大袈裟な。…で、さっき何を言いかけたんです?」
「ああ実は———」
休み時間終了のチャイムがなる。大宮先輩には悪いが、つくづく運に恵まれてない人だと思う…
「やっば!次の授業社会科だ!あの先生遅刻するとめっちゃ怖いからもう行くね!ごめんね!詳しくはスーちゃんに聞いて!」
そう言うと急いで戻っていった大宮先輩。…そういや俺も授業だっけか。しかも数学…。個人的に苦手な教科だ。むしろ数学が苦手じゃない人はいないんじゃなかろうか。
俺も戻ろうとしたその時、ベンチに先ほど柏崎さんが読んでいたであろう本が置いてあった
「…忘れたのかな…。探してると悪いし、とりあえず持っていってあげよう…」
俺は柏崎さんの読んでいた本を持って中庭を後にした。
第4章
隣の疑問
END