7/15
魔王城
ゼムギルガンが旅立ってより暫し時は流れ――
「敵襲です!」
魔王城玉座の間に小妖精の少女が飛び込んできた。小妖精は30センチほどの有翼の小人で、魔族のなかでも少数民族である。
彼女は飛行できる小妖精の機動性をかわれ、最近伝令に採用されていて、名前はフェイといった。
「敵襲? こりない人間どもだな。で、数は?」
魔王は興味もなさげに言った。その姿は人間と違うのは長い耳くらいで、銀色の髪に整った顔立ち、美女と言ってさしつかえない。
そう、魔王は女性だった。魔物を統べるというと厳つい怪物が想像されるが、強大な魔法力によって統率しているので別に女性でも不思議はないのだった。
その魔王の問いにフェイは
「1人ですっ!」
と、勢いよく大声で答えた。慌てていたのか、緊張していたのか、声のボリュームの調節ができなかったようだ。
「フフッ、勇者気取りの人間か。愚かな。勇者というのはいつもそうだ。おだてられ、祭り上げられ死地に向かう。哀れな殉教者。己の内より湧き上がるものではない故に我らに勝つことはできないのだ」
魔王は笑った。あまり楽しくなさそうに。