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柿木さんと驚愕の新事実

「お、柿木さんじゃないか。おつかれ。あと、こんばんは」

「はいこんばんは、庄野さん。アンタは定時ね」

「うん。いまは忙しくない。ごはんは?」

「俺んちで食べたい。いまは? 忙しくなる予定とかあんの?」

「えっとねぇ、来月の真ん中が締めだって言ってたから……今月末から、ちょっと忙しい。定時で帰れなくなるのは来月頭。じゃあさ、着替えてから行くよ。何か持ってくもの、ある?」

「アンタがいればそれでいいよ。っつかさぁ、俺、今日はカレー作ったのね。すっげぇ量。だから、庄野さんにはたくさん食べてもらいたいの。食い過ぎで、動けなくなるくらい」

「んーんん、それ、今晩は帰らなくていいフラグか? あ、柿木さん、エレベーター来た」

「フラグの話に乗りたいけどスルーする話ね。はいはい乗ってくださ~い。そうだ、どうせ旗立てるんならさぁ、俺、庄野さんが着替えするとこまでフォローしてあげよっか?」


「フラグ。着替え。………………頼んで、いいか」


「は? あ、……うわ、ごめん、トラウマ思い出させたか。っあー、悪かった。悪い夢呼び出すつもりも怖がらせる予定もなかったんだけど」

「ひどい言い方なのは自覚あるけど、んでもって卑怯極まりないけどな。トラウマ抉るなら責任よろしく。っつーかさぁ、どういうつもりでも怖いの思い出したから柿木さんには離れてほしくないな。着いた。鍵開ける、けど、手は」

「離さない。……っつか、あのね庄野さん。実は俺、アンタに聞きたいこともあって、だからえっと、そのつまりなんていうか」

「柿木さん」

「あの夜のこととか、どのくらい覚えてんの」

「片手で服って脱げるか?」

「そっち?! え、あれ、話はいつの間にそっち行った?!」

「あれだよなぁ、柿木さんが女の人なら一緒に着替えられるのにな」

「女じゃなくても着替えられるよ!」




「……はぁ。うまかった。美味しかったよ柿木さん。いーやぁ柿木さんってばカレー作らせてもいい人が滲み出るよな」

「どういう点で?」

「っえー? そりゃあほら、ゴロゴロ肉が多いとことか、肉が多く入った皿を私にくれるところとか、サラダにベーコンが載ってるとことか」

「全部肉じゃねぇか!」

「肉好きだからな!」

「……まぁいいよ。わざわざ俺んちでアンタの好きそうなメニュー用意したんだし、喜んでくれればね。いやいや、そうじゃないでしょ庄野さん。カレーのために汚れてもいい服着てくるアンタに俺は聞きたいんだけど」

「はーい」

「この間の俺の告白はさぁ、えっと、どれだけ覚えられてんの」

「うん? 全部だよ」

「全部かよ?!」

「あったり前だろ柿木さん。私は最初っから柿木さんが好きだったんだ。両想いになれてよかったねって、ここは浮かれるところだろ。金積まれても忘れたくない」

「え、……は? はぁぁ?!」


「…………あのさぁ」


「はぁ?」

「タメが長いよ。じゃなくて、だからそのさぁ、これでも私は女子なわけだよ。その私がね、どうして大した理由もなく一人暮らしの自分の部屋に男を入れるんだよ。自分から呼ぶとか、ほんと恥ずかしくて死ぬほどドキドキしてたんだからな」

「あぁぁっっ?! アンタなに言ってんの?! は?! ドキドキしてた?!」

「してたじゃないか。チョーゼツ。いーやぁ私は忍耐強かったよ。意識し始めてからなんだかすごく偶然に柿木さんと会えるようになったから懸命に自分を売り込んでただろ? しんっけんに、自分勝手に、どこまでも『私アピール』してただろ?」

「ど こ が だ よ ! っつか偶然?! 『偶然』俺と会ってたの?」

「うん。会いたい人とこんなに頻繁に会うんだから、私、すごいラッキーだって」


「…………鈍いのは、鈍いのね」


「初めて柿木さんと会った時って、会話したときだよな。私が階を間違えて柿木さんちに突撃しちゃったの。アンタは不審者スレスレの私の言い分に根気よく付き合って、ちゃんと私と会話した。声もいい。姿もいい。私と会話できる。そんな人間に私が高評価下しても不思議じゃないよ」

「……うん。確かにあの時のアンタはギリで不審者じゃなかったね」

「私はコミュニケーションがうまくないんだ。んでもって、その次に会った時だ。アンタは偶然ロビーで行きあった私にちゃんと会釈してくれた。しどろもどろの詫びも受け取って、ついでにフォローしてくれた。あれで、私は柿木さんにそういう意味の好意を持ったんだ」

「どこのチョロインだよ?!」

「チョロイン? ともかく私と会話が成立する人間の方が少ないからな、私の世界は狭いよ。そうして、年頃の女性でもある。あわよくばコレを彼氏として使えないかとアピールを実行することにしたのも自然の摂理ってもんで」

「意外と肉食だった!」

「いや、私は肉食小悪魔系だよ。言っただろ。だからカレーの肉もひとつも残してない。からあげ大好き」

「そうだった! え? ちょい待って! まって、まって」

「うん」

「肉食ってそっち?!」

「そっちも、どっちも」




「…………はぁぁぁぁ。よし。よし、ちょっと待って。整理しよう」

「はーい」

「庄野さんは、……えっと、俺が、その、えっと」

「好きだ」

「淡々の表情でどうも?! 俺も好きだよ!」

「…………ありがと」

「んでもってそっちは照れるの!? なんだアンタかわいすきだろ! 止めて俺の理性破壊!」

「……柿木さん、今日は良く叫ぶよな」

「だ れ の せ い な の !」




「…………へへ。喉が痛むから、口を塞いでみた」

「……」

「……柿木さん? あの、ごめ、ごめん、そんな嫌だったか? あ、ぅわゴメン、調子に乗りすぎたみたいだ、か」

「帰らせない。待って。庄野さん待ちなさい」

「……か、える……」

「帰らせない。あのね、俺はアンタが好きだって言った」

「へへ、言われた」

「……そこからの、アンタの方からの初キスだ」

「? っは、もしかして柿木さん!」

「キスは体験済みだし童貞でもない。違う。アンタは? こういうの慣れてる? っつか俺、わりとあからさまに誘惑されてる?」

「誘惑? できてんの? っあーー、いや私? いやいや、全部が初めて。誰かと相思相愛も、唇に触ったのも。っつか、今のがひっくるめて初体験の時間」

「…………神様助けて。照れて拗ねて照れてきょとんで淡々。どれもがかわいいんだけど。っつか素でかわいいんだけど」

「んん? ちょい聞き取れなかった。目の前なのにボソボソ言うなよ柿木さん。何て言ったの?」

「アンタが好きだって話」

「あ、はい。私も、……へへ、好き」


「…………あぁもうダメ」


「へ? あ? あれ? 柿木さん?」

「庄野さん。とりあえず布団に行こう」






「…………世の中の男子女子連中とは、みんな、こんなに展開が早いのか問いたい」

「小説だと?」

「こんなもんだな」

「アンタ普段どんな本読んでんのよ?! ……まぁいいや。ここまでしたからにはアレよ京子さん。俺と結婚してください」

「っ?! はーぁぁ?! 展開早すぎじゃね?!」

「ほぼ一年かけて落としてきた激ニブのアンタを今夜でようやく真の意味で俺の物にした。で、そうしたからにはね、俺は一瞬たりとてこの手を離すつもりは無いよ。大体アンタの周り見てて油断なんてできないでしょ。今から婚姻届取ってきて書きたいくらいだっての」

「いやいやいやいや展開早ぇよ!」

「自覚してる。だからアンタには猶予を上げる。あと何か月か後までの結婚式までの間は俺とアンタの部屋を行ったり来たりしよう。恋人になる。けど寝るときは一緒。出かけるときは挨拶したい。帰ってきたときも。一緒にご飯食べよう。アンタのプライベートに起こったことを一番に知る権利を俺に下さい。お願いします」

「あ……うん。それなら」

「うん。言質取ったから。俺と結婚してくれるね?」


「……突っ込んで来るなぁ柿木さん」


「余裕なんかビタイチないからね。突っ込めるときに限界までブッ込んでいくスタイルです。で?」

「言質な。……ん。取られたし、あげたよ。柿木さんも……私と、その、あれだな、あれ。けっこん」

「させてください。喜んで。……っし。式までの同棲生活でお互いの暮らしの相性見ような。あと、体の相性と」

「ぬぇ?! か、からだ?!」

「俺の感じたまま言うと、アンタはいついかなる時でも俺のガチ好みだった」

「ふはっ!」

「……なんだったら、今からでもまた確かめられるけど」

「いや、いやいやいやいらないだす! むりなす!」

「なす?」

「なす!!」




「…………なすって、言った」

「正直に言うと、悪かったと思ってる」

「……柿木さんは私のモノだから、いいけど、さぁ」

「京子さんは俺のモノだから、これからは大事にしたい。もうちょっと落ち着いたら」

「……もっくん、馬鹿だろ」

「ん。うん。…………うん。春だね」

「頭が満開な」

「言い方ヒデェな!」

「…………一緒に、寝る。明日のご飯も、一緒に食べる。ずっと一緒」

「……うん。京子さんについてけるように俺、頑張るから。とりあえず今夜と明日は一緒」

「一日ずつ、増えてけばいい」

「努力する」

「へへへ。はい」



あーあああーーーー。すっげぇ。すっげぇ浮かれるなコレ。いいなぁ庄野さん。や、京子さんかぁ。ふふん。ふっふー。っあーーガチで気持ちいいわ。

さぁって結婚式ってココからどう走るのが最短だっけかな。京子さんの家に挨拶行って、同僚さんたちに挨拶行って、俺の方に面通しさせる……必要はねぇな。俺の親だけか。

よし、よしよしよし。



ありがと、京子さん。

俺におちてきてくれて。


ゼッタイに、少なくとも俺は幸せになれる自信があるよ。


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