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山高文芸部の事件簿  作者: 文芸部員
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文化祭五日前および七不思議の復活 #3

 さて、法明と葉月が部室で自分たちにかかる恋愛疑惑について半ば真剣に相談していた頃、彼ら二人を取りまとめる文芸部部長、所沢勝は彼らとはまた別行動で七不思議について探っていた。

 散々仲間から疑われている彼だが、実は今回の件にはまったくもって身に覚えがない。

 それどころかどうしてこんな噂が流れているのかというのを、半ば本気で探ろうとしていた。

 だが、彼の場合葉月のように聞き込みから入るような真似はしなかった。

 彼が始めに向かったのは図書室である。

「さて。ここには歴代の卒業文集があると聞いたんだが・・・・・・」

 そう呟きながらコウメイは、図書室の隅の布をかけられた小さな本棚に目を移す。

 めったに布が取られることのない本棚だがその中身は卒業文集や地方の文献だ。つまりあけたところであまり意味がないのである。

「保管されているのは約五十年分か。とりあえず調べてみるか」

 コウメイがなぜ七不思議の調査に歴代の卒業文集を使おうとするのか。その理由は彼がここへ来る前に七不思議について漏らした石山の言葉だった。

「七不思議ね。いや、俺もここの卒業生なんだがな。実は俺がいた頃にも七不思議てのが流行ってな。ちょっと懐かしいな、と。え、どんな不思議があったか?いや、憶えてないな・・・・・・」

 七不思議は過去にも一度あった。それが一旦語られなくなり、今また語られようとしている。

 これはただの偶然かもしれない。むしろそちらの可能性のほうが高い。しかしコウメイの勘は、これは偶然ではないといっていた。

 どうせ時間はたくさんあるのだ。じっくり調べてみるのも悪くない。

 と、考えながら目次を確認しはじめてすぐだった。

「・・・・・・いや、こんなに簡単に見つかると逆に驚くね」

 コウメイの見つめる目次には確かに「七不思議」の文字があった。

 文集は二十年ほど前のものだ。石山の年齢は39だと聞いている。つまりこの前後で七不思議は流行っていたということだ。

「二十年前の七不思議の内容とかも調べておきたいな」

 そういったコウメイは次の文集に手を伸ばそうとした。

 直後

 コウメイは人の気配を感じた。

 どうやら図書室のドアの前だ。

 コウメイが硬直するのを見てかドアの前の気配は逃げるように去っていった。

「何なんだ?ノリ君たちなら別に逃げることはないだろうし・・・・・・」

 コウメイが図書室のドアをゆっくりと観察した。

 わずかだがスライド式の戸が開いていた。

「覗かれていた?」

 コウメイは不思議に思った。それもそのはずだ。何も覗かれるようなことはしていないはずなのだから。

 と、その時ドアの前にまた新たに人の気配が迫った。今度は隠そうともしない普通の気配。

 ガラッと戸を開けたのは図書室の司書さんだった。

「所沢くん?そろそろここを閉めたいんだが、調べ物は終わったかね?」

「あ、はい。もう出ますから」

 コウメイは普通どうりの声色で普通に答えた。取り出した文集を本棚に戻し、元どうり布をかぶせる。

「じゃあ、司書さんありがとうございました。こんな時間に無理言って」

「いや、大丈夫だよ。私もこれが仕事だしね」

 コウメイは図書室をあとにする。

 しかし、二十年前の文集の目次に記されていた「七不思議」の文字とその文字を見つけた直後に逃げ出したあの気配のことを決して忘れているわけではなかった。

 むしろこの二つはコウメイの脳内を大幅に埋め尽くすことになっていた。



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