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山高文芸部の事件簿  作者: 文芸部員
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文化祭五日前および七不思議の復活 #2

 葉月の話した七不思議の話を要約すると大体こんな感じだ。

 七不思議としては語られているものの七つ全てを知っている人間は少ないらしい。彼女が集められたのは四つだけだそうだ。

 雨上がりの朝、運動場に足跡がついている。ただしこの足跡は途中で消えるかのように途切れる

 夜、体育館にボールがはねている音が響き渡る

 運動場の隅にある体育倉庫は中に入ったまま戸を閉めると二度と開かなくなる

 七つの不思議を全部知ると呪われる


「こうやってみてみると、やっぱりなんか普通だね。コウメイが仕組んでるようには思えない」

「そうね。彼なら絶対に誰も思いつかないよう七不思議を作るわ」

 しかしこんな噂を意図的に流すのはコウメイぐらいしかいない。そして、だれも噂を流していないのに突然今までなかった噂が流れることはまずない。

「何より怪しいのは最近コウメイが部室に来てないことだな」

 コウメイは実は二日前から一度も部室に来ていない。

 部長でもあるコウメイは滅多に部室を開けることはない。いつも法明と葉月の正面の部長席に座っているのだが、ここ二日は「用事がある」といって放課後になるなりどこかへ行ってしまうのだ。

「用事っていっても・・・・・・もう文化祭号はできてるわけだし、特に部長としての仕事もないはずよね」

「ああ。石山先生に聞いても何も知らないって。ま、最もコウメイが石山先生に何か相談してから動くことはないだろうけどね」

「そういう石山先生も最近部室に来ないね。とりあえず毎日顔は出してたのに」

「まあ、コウメイと違ってあの人の場合はこないほうが嬉しいんだけどね」

 法明がさらっと、暴言を吐く。剣道のせいか、意外と真面目な彼は石山と特に仲が悪い・・・・・・ように周囲からは見える。

 少なくとも法明は石山のことは嫌いだ。本人が嫌いというよりは性格が嫌い、といった感じなので本人同士でいがみ合うことはまずないのだが。

 と、法明が突然傍らに置いてあった木刀の入った袋を掴んだ。

「ノ、ノリ君?」

 となりでいた葉月は、何が起こったの?という感じで法明が普段とは明らかに違う鋭い目つきで見つめる入口と、今にも袋から木刀を抜きそうな法明を交互に見つめる。

 数秒の静寂が流れる。

 その静寂の中に、突然足音が混ざった。足音は半ば走るように文芸部室の前から遠ざかっていく。

 同時に法明が木刀を下ろし、彼の体から殺気が消えていった。

「盗み聞きされてたみたいだ。気づいたと思うけど、いまドアの前に誰かいた」

「盗み聞きって・・・・・・私たち聞かれて困るような話ししてたっけ?」

「してないと思うけどなあ。とにかく一旦解散にしよう。ただ偶然に聞かれただけかもしれないけど気味が悪い」

 法明はそう言うと手の木刀袋を肩にかけて学生鞄を手に持った。

 相変わらずこういう時の決断・行動は早い。

「え、ちょっと・・・・・・」

 葉月も慌てて荷物をまとめるが法明ほど早くできるはずもない。

「じゃあ、お先に。気をつけて帰るんだよ」

「ノリ君、ちょっと待ってよ」

 どうせ無視されるだろうと思って言ったのだが、法明は律儀にドアに手をかけた状態で振り返った。

「なんだい?なにか言い忘れたことでも?」

「え?あ、いや。ノリ君ってさあ、女の子と一緒に行動したことあんなないよね。絶対」

 法明がは?という顔をした。どうやら葉月の唐突な問いの意味がわからないようだ。

 そんな法明を見て葉月はため息をつく。

「盗聴なんて気味の悪いことがあったあとに女の子をひとりで帰らせるつもり?」

「え?それはどういうこと?一緒に帰ってほしいって事?」

 法明の身も蓋もないいいように今度は葉月が慌てる番だった。

「ば、馬鹿。そこまでは言ってない!ただ、どうせ家も同じアパートだしそのぐらいな気遣いはできるようになっといたほうがいいってことよ」

 顔を真っ赤にして反論する葉月。そんな彼女を見て法明は不思議そうな顔をしながらも、

「ああ。一緒に帰るぐらいなら別に構わないけどね。ただ、例の変な疑惑がさらに広まるかもって思っただけさ」


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