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山高文芸部の事件簿  作者: 文芸部員
3/16

文化祭二週間前および文芸部の日常 #2

読んでくださっているかたありがとうございます

 結局、法明の原稿が書き上がったのは、二人が部室に来てから二時間くらいたったあとだった。

「はい、確かに。これで全員分そろったね。じゃあ明日から細かいところを調整して、文化祭一週間前には印刷を依頼するという予定でいいかな?」

「いいよ。いつも通りだし」

 法明の言葉に隣にいた葉月もうなずく。

 やっと一段落つけることができた、と法明は息をつく。

「それじゃあ、どっかで打ち上げでもしない?ほら、この文化祭号って結構手が込んでて作るの大変だったしさ」

「お、いいね。やろうよ。コウメイ、いいだろ?」

 本来あまり遅くまで出歩くのは誉められたことではないのだか、気にする人間は誰もいない。

「問題はどこでやるかだけど……」

 コウメイの目がこちらを向く。

「時にノリ君、君のご両親は確かものすごく適当(おおらか)な人だったと思われるのだけど」


「「「乾杯!!!」」」

 市営アパートの二階、法明の家の法明の部屋に文芸部の面々が集まった。

「いや、しかし君のご両親は本当に警察官なのかい?」

「……認めたくないけど、正真正銘の警察官だ」

 法明の両親は話にも出た通り警察官だ。二人とも優秀ならしいのだが、それを補ってまだ余るほどの放任主義である。もうひとついえば、子供は自分で育つもの、という主義なので息子が危ない目に逢おうとあまり気にしない。つまり、もうすぐ午後六時を回ろうかという時間に息子の部活仲間が息子の部屋で打ち上げをするくらいなんとも思わないのだ。

「さてと、打ち上げといっても何をしようか。特に考えているわけじゃないけど」

「いいのよ、コウメイ君。打ち上げなんて楽しければ問題ないんだから」

 しかしコウメイの洞察力は、彼女の目線が部屋の中央に置かれたちゃぶ台にのった食べ物に注がれているのを見逃さない。

「……もしかして葉月さん、君はここに並んでいるような食べ物を食べたくて打ち上げを提案したのかい」

「えっ、いや、そんなわけないじゃないですか。アハハ……」

 図星だった。

 まあ、彼女はこのアパートに部屋を借りて一人で下宿しているのだから、晩御飯代を浮かせたかったのかもしれない。

 そんなこともありながらも打ち上げは大いに盛り上がった。

 文芸部を復活させた時の騒動や、そのときに出会った今もそのポジションに置かれているはずの顧問教師の話などに花を咲かせていたのだ。

 だから、部屋の外でなっていた電話にはじめは気が付かなかった。


「はい、代わりました。あれ先生ですか?どうしたんですか?」

 親から受け取ったコードレス電話の受話器からは文芸部顧問、石山いしやまひろし理科教諭だった。

 しかし、その実態は、ヘビースモーカーという教師にはおおよそあるまじき特性を持つ、しかも配布物をたまに配り忘れるという破天荒教師なのである。

 しかし、そのフレンドリーな感じと理科に対する情熱にさ一定の評価があり、生徒からもまあまあ人気があるらしい。

『おう、ノリ君か。いや、ほんとはさ、部長のコウメイ君のところにかけるべきなんだが、ちょいと番号が押せなくなってな。』

 つまり、コウメイの家の電話番号を忘れてしまったらしい。

 まあ、彼らしいといえば彼らしい。

「別に俺でもいい話なら聞いて、コウメイに伝えときますけど」

『いや、伝えてもらわなくてもいいよ。ちょっとした確認だから』

「確認、ですか。何でしょう」

『本当にたいしたことじゃないんだがな、お前たちは今日、部活のあとにちゃんと部室に鍵をかけたかい?』

「……もちろんかけましたけど。どうかしたんですか?」

『かけたならいいんだ。俺の勘違いだった。実はお前らが帰ったあと、部室に人のいる気配がしてな。』

「そうですか」

『じゃあまた明日』

「はい。それでは」

 ガチャン、と受話器を戻し法明は自分の部屋に戻っていった。

「鍵をかけたのに、部室に誰かいたのか……。まあ、先生の勘違いならいいんだけど」

 しかし、、このときは誰も考えていなかっただろう。この電話は、後に重大な意味を持つ。




本題に入れるのはいつだろう

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