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スフィア  作者: ハーブスケプター


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42.キングスマン

~6日後


「今日から仮に入社するアマンダくんだ。今日からしばらく彼女を預かってくれ。頼んだぞ、わっはっはっは」


プラント第二研究室で太賀公聡はそう言った。それを聞き主任研究員の小畑洋子は頭を抱えている。


「彼女の就労ビザが降りるのはもう数日かかるから、まあそれまでは見学させてやってくれ」


その様子を後ろで見ていた中野ゆかりだったが、アマンダと言う黒髪蒼眼の女性を見てあの時の女性だと確信した。

そして最初は気づかなかったが、初めて見る太賀公聡を見て何かを思い出したようだ。


「ぎゃぁぁぁぁ!!お侍さん!!」


部屋を飛び出して水槽と機械の隙間に隠れてしまった中野に祐介が言う「大丈夫ですよ。あの人は幽霊ではありません。さあ、あちらに戻りましょう」

「ほ、ほんとに?お侍さんじゃないの?」


部屋に戻されたゆかりは騒がした非礼を詫びた。

公聡は「おお、君が中野くんだな。美月くんから聞いているよ」と言った。


「えっ?何を聞いたんですか?」

「歳上なのに妹のように可愛らしい女性で、守りたくなるような人って言ってたぞ。わははははは。あ、これは多分馬鹿にしているわけではないと思うぞ、本心だろう」


公聡はそれでは頼んだと言いアマンダを置いて去っていった。


ボクはアマンダに「お母さんにはちゃんと連絡しておいたかい?本当にこんな事に巻き込んですまないと思う」と言ったらアマンダは「これは私自身が決めたこと。祐介のせいじゃないし、お母さんも応援してくれている。ただ、父が少し不貞腐れてると聞いたよ。ふふふっ」


「父親は娘のことがいつも心配なんだよ。うちも綾香の事を父がいつもいつも気にしているからね」

「そうなんだろうね。わたし、お父さんのことが大好きなの。シャイで傷つきやすくて。何であんな人が男勝りなお母さんとくっついちゃったんだろうといつも思う」


「男と女のことはいつの世も不可解なんだと思うよ。ボクたちも、そんな不可解な出会いと別れの中に成り立っているんだと思う」

「そうね。祐介はどんな女性と引っ付くんだろうね?」


ボクはそれを聞いて少し顔を赤らめてしまったかもしれない。

「さあ、どうなんだろうね。わからないよ」としか言えなかった。



そしてそれを誤魔化すように「多分太賀部長の事だから、君にも地下へのパスを発行していると思うけど、今はこちらにいて普通に過ごしてくれるかい?」と言ったんだ。


うなずいたアマンダは小畑主任に呼ばれて研究室に入っていった。


 さあ、人材はそろった。前に進むしかない。ボクたちは"キングスマン"のような精鋭の実行部隊に成れるのだろうか。


~会長室にて


「佐藤さん、社長がいつまでも不在と言う訳にはいきません。専務のあなたが本来は社長になるべきだという声が役員からも聞こえてきていますが、でもしばらくは僕が会長と兼任する形でよろしいですよね?」


公臣の言う事には逆らえない佐藤は仰せの通りと言い退室した。

佐藤は役員階の赤絨毯をブツブツと独り言を言いながら歩く。そして何かを考え付いたらしく、足早にシャフトに乗り込んだ。


~ミストラル


 佐藤はミストラル6階の統括管理部長室をノックした。しかし誰からの返事もない。

彼はドアを開けたが室内の様子を見て驚愕した。


部屋の中は何にもない。

机が一つ置かれているだけだ。


「た、太賀前社長はい一体どこに居らっしゃるのだ?」

その足で踵を返し5階の研究室から虱潰し(しらみつぶし)に捜してみる事にした。

しかしどこをどう探しても居ない。


最後のフロア一階でたどり着いたのが「プラント第二研究室」だった。


「ここの責任者は誰かね」と大声で怒鳴り散らした。

在籍の研究員とその場所にいたボクとアマンダも声に反応してドアの方向に振り向いた。


主任研究員が前に出て応対した。

「何か御用でしょうか、佐藤専務」


「き、君、太賀部長はどちらにいらっしゃるのだ?どこを探しても見当たらないし、内線にも出られないのだ」

「私たちでは分かり兼ねます」と小畑洋子が言った。


そして「こちらに居られないときは管理棟にいらっしゃるものと思いますが」

「それがいらっしゃらないからここに来とるんだ」


丁度その時、太賀公聡が入ってきた。

「おお、誰だと思ったら俺の社長復帰に先頭を切って反対した佐藤専務じゃないか」

佐藤は気まずい顔をしたが「い、いえ、前社長、あれは私の本意ではないのです。。。いやここでは何ですから別室でお話しいたしませんか」

「いや、俺はここで一向に構わんよ。何なら放送室でやるか?」

「いえいえいえ、そんなに虐めないでください。わたしお願いがあってきたのです」


 ふたりはミストラルの休憩フロアに移動した。

この時間は他の利用者も少なく秘密めいたはなしも可能だろう。佐藤は前置きも無しにいきなり本題を切り出した。


「実は太賀執行役員、私、次会の役員会議で会長の社長兼任に反対票を投じようと思っております」

「何を考えてるんだ佐藤くん。お前は弟のお気に入りだろう?そんなクーデターを俺に持ち掛けてどうするつもりだ」

「ええ、わたしはあの方に尽くしてまいりました。あの方に惚れているという部分もあります。しかし、菅井さんを社長に取り立てたあの人事だけは間違ったものだと思っているのです。あの人事がされてからもう8年ほどになりましたが、各事業部のモチベーション低下を手に取るように私は感じていました。あの人では下は付いてこない。はい、絶対に付いてきません。弟さんには人を見る目が無いのです。だ、たから、あの方を兼任としてでも代表取締役などに成らせたら、組織の瓦解を招くような気がしてなりません。これは緊急事態なのです。わが社を存続させる事が出来るかどうかの分水嶺に立っているのです」


「ほう、それで俺にどうしろというのだ?」

それを聞いて少しほっとした佐藤は気を取り直して話す。


「はい、実は他の役員については根回しが済んでいます。代表取締役任命の決議案についての否決、そして追加決議案として、貴方の代表取締役就任についての動議を発するつもりです」

「おい、俺はいま執行役員だから役員会の門外漢だ。どんな根回しをしたか知らんが、成功するとは思えんがね。監査役や株主にはどう説明するつもりだ」


「ええ、お任せください、あとは細工は流流仕上げを御覧じろです」

 公聡はふふんと笑いながら、うちの上層部にもまだ気骨のある奴がいるじゃねえかと思うのだった。


~緊急役員会当日


「なるほど、あなたたちはこんな猿芝居を脚本していたのですか。しかし・・・兄に吹き込まれたわけではなさそうですが。ふふ、そして兄がまた代表取締役ですか・・・あはははははは」


公臣はくるりと背を向けて役員会議室を去っていった。


 翌日、異例の通達が出た。公臣氏が会長職を退き取締役常務に、公聡氏が執行役員より代表取締役社長に就任したというものだった。そして行方不明を社内には伏せられている菅井社長は、退職のため退任とだけ書かれていた。


「社長、この次元転移装置についてはどなたまでが知っているのですか」とボクは公聡社長に訊いてみた。

「ああ、それは菅井までだ。菅井には知らせるべきではなかったとは今となっては思うが、この会社を運営しながらこれをしていくには必要だったのだよ」


「今知っているのは、社長ご兄弟と我々三人だけという事ですか」

「そうだな、あとカトリーヌとフランソワーズも・・・だな」


それを聞いて木村の前にも現れた黒衣の老女の事を話した。

「うむ、その新聞記者くんの前に現れたのも、恐らくだが婆さんたちに違いないだろう」


「はい、長野の発掘事件について彼にも関わってもらいましたし・・・」と美月は言った。そして「ゆかりさん、彼女にも関わらせてしまいました。申し訳なく思います」とゆかりのことを気遣った。


「そうだな、多くの人を巻き込んでしまった。あの婆さんたちの悪戯を終わらせねばならん。悪意は消えていないんだからな」


ボクたちはこの時、別の悪意の存在にまったく気が付いていなかったのだ。


白い悪意の





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