32.国立近代美術館での出来事
木村は最後のページを画像に様々な角度から取り入れている。スキャニングは許可されていないので、彼お得意の50年前のデジカメでの撮影だ。
「緑村さん、透かしとか薄墨とかそんなのは有りませんか?」
「そう言ったものは見当たりませんが、これは不思議ですね」と言い紙を何度も何度もめくる事を繰り返している。
裏に柿渋が塗りつぶされていることもあるが、この紙だけ異常に硬いのである。恐らく他のページと同じように一枚の紙を半分に折って裏と表にしているはずだ。柿渋は何のために塗られている?この硬さをこれのせいだと誤認識させるためかもしれないし、その裏に書かれている文字を透過させないようにしているのかもしれない。
美月は強力なライトで柿渋の裏側から当ててみることにした。
すると何やら小さな文字が裏側に隠されているのを発見した。
彼女は学芸員にお願いし、これは世紀の発見かもしれない事を伝え、ページの施されている糊を取ってほしい旨を伝えた。
学芸員は最初その依頼を拒んでいたのだが、上に問い合わせると少し待ってくれと言い部屋を後にしたが、しばらくすると美術品の修復士を連れて再び部屋にやってきた。
一時間の作業の後、縁に塗られていた糊を丹念に取り除くことができた。慎重に紙と紙の間を覗くとやはり文字らしきものが書かれているようだ。美月は再度学芸員にファイバースコープの貸し出しを依頼した。そこには筆で書かれた現代様式の文字が並んでいる。
『1808年10月12日松本城を遠くに見渡すここにこれを埋めることにした。後の世の諸君、健闘を祈る。太賀公聡』
学芸員と修復士たちは唖然としている。
木村とゆかりもまた口を開かなくなっていた。
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「木村さん、お願いがあります。記事にするのは最後に見たあれのことは書かないでください。そしてゼロイチの羅列とその下にある数列との間にある線は消した上で記事にしてほしいのです、そして発掘場所の正確なGPSデータを送ってくださいませんか」




