26.文字列
"太陽"、"魚"、"時間"、
"喉を汚した男"、"植物"、
"珠"、"海綿"、"本"、"笛を吹く女"
"瓶"、"土竜"、"雨"
「全く分からない、ずいぶんと時間を浪費した。"植物"についてはこの会社でやってきたことで何かわかるかもと思ったが、決定的に何かが足りない。"太陽"も私がやってきた核融合の研究のことかもしれないしそうでは無いかもしれない。"喉を汚した男"は彼の言う通り彼に当て嵌まってしまう可能性も。ただその他がまったく意味不明だ」
美月は頭を抱えている。
「もしかして、前社長がいてくれたちどころに解決したかもしれない」
私はダメな女だ。
地下から一階へ乗ったシャフトの中でため息を吐いた美月だった。
一階に到着するとドア開き美月はそのまま左に折れて管理棟に行こうとしていた。
その時だ。
「緑村主管~ん。わぁぁぁん」女が鳴きながら走ってきた。
「なんで会社辞めたりしたんですか~。わぁぁん」
直情的な女性である。
「中野さん、しっかりして。わたし辞めたりしてません」
「え?でも。私の彼氏が電話したら主管は在籍してないって言われたって」
「あの、多分、多分ですが、対外的な広報対策のためにわたくしへの問い合わせにはそう言う受け答えをするように上層部からの指示だと思いますよ。ところで気になったのですが、貴女の彼氏さんがなぜわたくしに用事があったのでしょうか」
「あ、これ言っちゃいけなかったやつだ」
これも声に出してしまっている。
中野はその場からそうっと逃げ出そうとしたが、美月は見逃がさなかった。
「ダメですよ、中野さん。社内のことは常にかん口令なんですよ。いいですか。話・し・て・は・ダメ・で・す・よ」
自分のこともその彼氏には辞めたという事にしておいてくださいと念を押したが、無理だろうとも思った美月だった。
「主管、今日のお昼一緒にどうですか?もうお昼ですよ」
「わたしはもう主管ではありません。無印の降格となりましたので敬語も使わなくて結構ですよ」
「じゃあ、美月ちゃんって呼んでいいですか?年下だし」
「え?もうですか?」美月は少し困った顔をしながらも同意した。
~
共有棟8階社員食堂研究レベルエリア
「ところで中野さん、その彼氏さんってもしかしてわたくしの知っている方ですか」
「いえ、いや、その、ち、違います。その人じゃありません・・」中野も嘘が下手のようだ。
美月は小さくため息をつき「その方はもしかすると新聞記者ですね」
「いえ、ち、違います。そんなことはありません」
「あなた、どこまで喋りましたか?もう話してしまったことは無しには出来ませんから、話したことを正確に教えてください」
美月は少し首を左右に振って言った。
「その前にあなたその方とお付き合いしてどれくらいになりますか」
「4日です・・・・・・デートはもっぱらお好み焼き屋さんです」
「4日?お好み?」
プッと吹き出してしまった美月だったが「失礼しました。いえ馬鹿にしたわけではありません。なんだか微笑ましくって・・すみません」
彼女は真顔を取り戻し言う。
「わたし実は男性とお付き合いしたことないんです。どんなにか楽しいんだろうなと思う事はあっても想像でしかなくって、だから現実には考えられなくって」
中野は膨らませたほっぺたをまた赤くして「主管、恋をしましょう。ほら誰かいないんですか?あ、中村君とはどうなったんですか?」
「わたくしはもう主管ではありません。そしてなぜ貴女が中村さんのことを?」
「あちゃーこれも言っちゃいかんやつだった」
美月はまた笑って「中村さんは、わたくしのお願いしたことを報告しに来てくれただけです。それをロビーで見た方が勘違いしたのでしょうね」
「なんだつまらないー。なんか中村君が必死の形相で主管に迫ってたって聞いたものですから。違うんですか。すこし残念だな」
美月は4つ年上のこの女性のことが妹のように思えてきた。
「わたし、いま彼が出張中でさみしいんです。いままで研究一筋だったから、彼氏なんていなくても頑張ってきたんですけど」
「そ、そうなんですか・・・」
「今日は週末でしょ。今晩泊まりに来ませんか。うちの家に」
「え????」
この人こんなキャラクターだったかしら・・
と、年上の妹の願いを聞いてあげることにした。
美月も孤独で寂しかったからであるのは言うまでもない。
~
中野のマンション
「中野さん、それで彼氏さんはどこに出張に行かれたのですか」
「松本です。え?松本ってどこですか。もしかして九州なのかしら」
「中野さん・・・」
「ゆかりって呼んでください」
「ではゆかりさん、松本は長野県です」
「ゆかりと」
「そ、その長野で何をなさっているのでしょう」
「なんだかわかりませんが、なにやら本能寺の変の黒幕を暴き出すって企画と同じ様な事をするんだって言ってました」
「歴史の謎を解き明かす的な?」
「二十年近く前に話題になった話で、長野にある首都の建物が壊されて、その下から何かが出てきたらしいんです」
この娘は植物の研究以外はまるでダメなんだな、でもそこが可愛いのかもって考えている美月であった。
「何が出てきたのでしょうか」
「昔の本らしいですよ。うーんと昔の。ほら弥次さん喜多さんってやつですよ」
「本が?地中から?」
「そうなんです。なんでも焼き物に蓋がされて厳重に包まれていたらしいです。彼はもしかしたらわざと後世に残すために細工をしたのかもって言ってましたよ」
細工?後世?どういうことだ。何のメッセージ・・・・・、美月は眼を見開き、何か他に聞いてることは無いのかと訊ねた。
「昔やってたテレビの特番で謎解きのがあったらしいんですけど、その本の巻末に正体不明の一頁が追加されていて、数字とか地図とか、それと漢数字?が書いてあったらしいです。彼がその時の画像を見てこれは凄いこれは凄いと話してくれました」
「数字の羅列はゼロとイチばかりがローマ数字で書いてあって、その下に多分東京湾を描いた地図とバツ印、その下に漢数字で年号のようなものが書いてあったって」
「中野さん!!!」
「ゆかりと」
「はい、ゆかりさん!!彼氏に今すぐ連絡は取れますか!!」




