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スフィア  作者: ハーブスケプター


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25.世紀の大発見

 昔のTVニュースが伝えている。旧長野暫定首都として使われていた庁舎が取り壊しになったと。

建物の地上部分の破壊撤去が進み、あとは地下部分の撤去を残すのみとなったが、その際に地下部分の基礎杭を大きな範囲で取り除いたときに随分と昔の地層から焼き物の(かめ)が出土した。しかもその中には厳重に何重にも柿渋が塗られた和紙で包まれ、その下には更に漆で固められた和紙が何重にも貼られていた。

それを全て取り除くとなんと綺麗な桐の箱が出てきたらしい。

その桐の箱を記者たちを集めて開けることにしたらしい。


皆が言うには、たぶんこれは邪鬼が陰陽師によって閉じ込められているだの、昔の金持ち商人の隠し財産だの噂は瞬く間に日本中に知れ渡った。

ところがいざ開けてみると、中から出てきたのは一冊の本のみだった。

黄表紙と言われた昔ながらの製本でしっかりと糸で縫い合わされている本だった。


表紙には「東海道中膝栗毛 十辺舎一九」と書かれていた。


鑑定家によるとこれは紛れもなく十辺舎一九の東海道中膝栗毛の()()の一冊で大変価値のあるのもだということが分かった。


しかし不可解なことはあるもので、本編とは全く関係のない1頁がきっちりと製本されて巻末に止められていた。


そこには江戸中期では使われなかったであろうローマ数字が2百桁をこすほどゼロとイチばかり繰り返し書き込まれて最後には地図らしきものが筆で描かれていた。


放射性炭素年代測定でもこのページに使われている紙も墨も、本編でつかわれた墨と全く同じ年代で描かれたものだと判明した。


東京の神保町が壊滅し古書の類が世の中から少なくなった事も重ね合わせて古書ファンの熱狂ぶりが凄まじいと伝えられた。


この出土したオーパーツは今、国立近代美術館に収蔵されているらしい。


「おい木村、お前、タイガの件あれからどうなったんだ?」

「すんません、進展なしです。かたじけなし」

「なんだよそれ。お前、江戸時代生まれかなんかなのか?もういいや、おれあ疲れてるからよ。お前に仕事を与えてやるよ。ただしその新しい仕事とタイガの件は並行してやる事。分かったか?・・そこでだ。お前に与える司令は・・・ジャジャーン!これだ!」

「なんすか?これ」

「もう何十年も前に大騒ぎになったんだが、時と共に忘れ去られて久しい。ただ、この謎は未だに解明されていないらしいぞ。わかったらすぐに取りかかれ!」


 木村は当時の新聞記事や雑誌の切り抜きを見ることにした。

なになに?世紀の大発見?神保町復活の狼煙?

どれが謎なんだ??

そこに埋もれていた一つの写真が目に入った。

数字、当時はこんな数字まで使ってたのか?

地図・・・これはどこだ?どこを表している。

その横に漢数字があるぞ。千七百八十三年七月三日?

おい、こりゃあ西暦だろ?この頃西暦なんて使ってなかったろ?確か太陰暦だよな。閏月とかあるやつで。


「森さん!これ面白そうっすね。やらせてください」


 次の日、木村はもう一度祐介に電話をした。

やっと電話に出た祐介だったが、繋がりざまに木村に暴言を吐かれた。

「てめえ!何が危険な道だ!危険なのはお前の恋路じゃねえか!ふざけるな。俺の頼みを断って彼女といちゃいちゃか!あほめ!何が大奥社員との接触は禁止されてるだ!嘘つきめ!」


言うだけ言うと電話は切れた。

仕方無いので掛け直したところ木村は以外に冷静です、すまん怒鳴りすぎたと謝った。


「木村君、落ち着いたかい?一度会って詳しく説明しようと思ってたところなんだよ」

「おぉう。ま、そのなんだ。今日は空いてるのか?」


大丈夫だと返事をしていつもの店で待ち合わせしたんだ。

いつもの様にボクは遅れて行き、また木村はサワーをちびちびちび飲んで待っていてくれた。

そしてあの独特の笑顔をボクを迎えてくれた。

少しボクは安心した。そしてこう切り出した。


「木村君、この件は手を引いたほうが良さそうだ。何か得体のしれない力が働いている」


「そりゃあどういう事だ?」

「順を追って話すよ」

ボクの家の居候のこと。

そしてその彼女に起きたこと。

美月さんから聞いた黒衣の占い師のこと。

その人との約束。

ボクの小さい頃に現れた黒衣の女の人のこと。

護り石、ネックレス

ボクの二枚の金属板。

そして

極めつけは

十二個の文字列。


「だからボクらの手に負えない何かの力が働いてるんだと思うんだ。危ない気がする」

木村は少し考えた後こんなことを言った。

「そういやこないだ俺も見たぞ。その黒衣のババア。違うかも知んねえけど。何だか気味が悪かったんだよ」

「どんなおばあさんだった?」

「そうさなあ、銀髪で夜の街だったけど照明で目が異様に光ってたな。外国人のような気がした。だって連れていた孫が金髪の蒼眼だったからさ。でもその孫が気持ち悪いのよ。ずっと見てた訳じゃねえけど、瞬きをしてなかった気がするし、口が半開きだった」

そして「葬式帰りの様な喪服を着てたんだ。そしてさ気持ち悪いのはおれに近づいて来て何か言ったんだよ。ああ今思い出しても気色悪い。見ず知らずの俺にだぜ?あれ?なんて言ったかな、思い出せない」

木村は身震いをしながらも続けた。

「まあいいや、思い出したらまた言うよ。ところで俺はこのヤマともう一つのヤマを追いかけねばならん事になったんだ。もう一つの方はヤマってほどじゃねえと思うけどな。まアなんだ、昔テレビでやってたミステリー企画みたいなもんさ。本能寺の変の黒幕は!って、あんな感じだろな」

「なにそれ?面白そうじゃん。タイガの件より健康的じゃないか?」


ボクはその時その健康的に見える企画がボクたちを沼の中に引き込もうとしていることに気づいてなかった。




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