21.カラオケスタジオ
「わたしこんなところ初めてです」
緑村美月はあちこちに視線を向けて興味津々の様子だ。
「すみませんこんな所で。でもここなら大きな声を出しても誰にも聞かれる心配はないと思ったもので」
「でも、ここでダンスは出来そうにないですね」
彼女は妙なところに食い込んでくる。
ボクは頭を掻くしかしようがなかったが、意を決して話を進めることにした。
「前に緑村さんが共有棟のロビーでしてくださった話を覚えていますか」
「はい、のどをけがしたおとこ・・・・ですよね。でもあれは貴方のことではないと思いますし心配なさらないでください」
「しかし、様々な事柄が微妙に近づいてきてもしかすると緑村さんの手助けに繋がるんじゃないかって・・あ、勝手に思ってるだけです。もしかするとってだけで」
美月は相槌を打ちながら聞いている。
ボクは今家にいる居候のことを話すことにした。
「僕の"母"の旧知の友人の娘って人が、昨日家にやってきました。夕食を食べながらの歓迎会の中で彼女はここに来るまでのフライトでの体験などを話してくれたんです。関西で不思議な出来事があったって事や、自分の祖父母について語っていました」
ボクは飲み物のグラスを彼女に渡しながら言う。
「その中で向こうの国内線内での出会いを話してくれました。彼女はその人から機内で銀の台座に石が散りばめてあるネックレスを貰ったというんです。日本に行くと言っていたその老婦人の特徴を彼女は話しました」
そこまで言うと、緑村さんは何かを察知したらしく「その方が着ていたのは"黒衣"だったというのですね」
『カトリーヌ・・・いったいあなたは何を・・・』
「待ってください。まだ続きがあるんです」
ボクは続けた。
「火事に被災した際、ボクが幼稚園児だったから約20年前です。喉を切開した傷口が癒えるまで入院していました。忘れていたけど思い出したんです。その病室でボクを見舞いに来た黒衣の夫人を」
・・・・
「だから・・・だからボクがその"喉を汚した男"じゃないかと思うんです!」
ボクは頭を掻きむしりながら声を大きくした。
「これはどういう事なんですか」
「中村さん、中村さん!落ち着いてください」
「すみません。昨日も考えすぎて眠れなかったんです。ちょっとこれを見てください。ネックレスの写真です。表と裏と各部の拡大したものもあります」
「中村さん、この写真を預かってもよろしいですか落ち着いたところで考察したいと思います」
そして「私がいまこの会社でやろうとしていることについてはお話することは"まだ"出来ないのです」と言った。
「こちらから連絡があるまでご自身でこの問題を追及するのは止めていただけますか。それを約束してください」
「はいわかりました。それともうひとつお預けしたいものがあります」




