19.タイガベルモンターニュ管理棟14階
美月は上層部階専用シャフトに乗って一番上の階をめざした。
役員通路のセキュリティを通過し、赤絨毯の終端にある部屋をノックした。
「どうぞ」
彼女は一礼をし入室した。
男が一人緑村美月の到着を待っている。
「緑村さん、ようこそいらっしゃい」
「ご無沙汰をしておりました会長」
男は緑村に着席を勧めた。
「その後どうですか?兄の足跡のかけらを集めることは出来ましたか?」
「いいえ、申し訳ありません」
「多分、どこかでのたれ死んでしまったんでしょうね。でも、何としてもパラメータを確定させあの時代のあの時間にピンポイントで到着しなければなりません。それはあの方達から受け継いだ我々の使命です。貴女には表向き植物の多産の作業をしてもらっていますが、そろそろこちらを注力して貰わねばなりませんかね。もちろん補助のスタッフは無しです。貴女一人でやり遂げてください」
美月はシャフトの中で会長の言葉を思い返していた。
『何としてもあの時代のあの時間へピンポイントで到着しなければ・・・』
頭の中でそれを否定した。
行ってくるだけではだめだ。
帰ってくる方法を確定させなければ意味はなくなる。
この旅行の「片道切符」は何としても避けねばならない。
やはり12個の文字列が鍵となるのか。
会長はこの文字列のことをご存じなのだろうか。
いや、この会社に来てから会長から文字列についてを聞いたことは無いし、自分からは申し出ていない。
文字列のことは話さずに作業を進めようと心に決めた。
1階ロビーへ到着したシャフトの扉が開いた。8メートル前方に男性が立っていた。
「緑村さん、今晩時間を作ってください。お願いします」
ロビーにいた驚いた社員全員がその様子を固まったように見ていた。
「あら、ダンスパーティーへのお誘い?」
「そうです!」と喉を汚した男が言った。




