力と心の距離
第9話です。 宜しくお願いします。
――朝、訓練場。
世界、大我、昇子が軽い準備運動を終えたころ、獅堂の声が響いた。
「よーし、全員集合!今日は模擬戦をやるぞ!」
「模擬戦……!」 昇子が肩を張る。大我は嬉しそうに拳を握った。
「第3部隊は個性の塊だ。まずは互いの“力”と“クセ”を知れ。異能力も遠慮せずに使え」
「やったー!ついに爆発解禁だーっ!」 柚璃が両手を広げてジャンプする。
「え、爆発!?」 昇子が一歩下がる。
獅堂が腕を組みながら続けた。
「チームは適当に分ける。火力偏重でも偏ってねぇ。どれだけ支え合えるか見せてみろ」
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【チーム編成】
■Aチーム(火力型)
世界
鵜飼
彩芽
野呂
■Bチーム(技巧型)
大我
昇子
柚璃
羽仁
「バランス取れてるようで微妙だな……」 世界が呟き、大我が「面白そう」と笑った。
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【模擬戦 開始】
開始の合図とともに、フィールドが緊迫した空気に包まれる。
まず動いたのは大我。《ボディアンスロ》で耳をコウモリに変化させ、音で敵の位置を探る。
「三時の方向、世界さん来てます!」
昇子が即座に対応し、《モイスチャーボンバー》で霧を発生させる。 その隙に柚璃が火花を舞わせるように爆発を空中に散布。
「火華、舞ってこーいっ!」
轟音と共に爆風が咲き、Aチームが吹き飛びかけた瞬間。
「《光紋結界》」
世界が光のバリアを展開。爆風を食い止め、味方を庇った。
「おい、世界、今の助かったぜ!」 鵜飼が地面に拳を叩きつけた。
「《衝圧崩拳》ッ!!」
衝撃波が地を裂き、Bチームの立ち位置が崩れる。 羽仁が即座に能力を発動。
「《秒刻転換》……君の動作、3秒遅れろ」
世界の動きが一瞬鈍り、そこへ昇子の水爆が飛んでくる。
「今よっ!」
だが、野呂が前に出て、水分を硬化させて盾を作る。
「流体機構、展開……!」
水爆が防がれ、フィールドが一瞬沈黙する。
「おーし、やめやめ!」 獅堂が手を挙げて制止。
「十分見せてもらった。だがな――」
「力はあっても、“心”が足りねぇ」
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模擬戦の後、3人ずつに分かれて雑談のような反省会が始まった。
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【世界 × 羽仁】
「……俺の動き、遅らせただろ」
「当たり。光の結界は優秀だ。でも、お前自身が閉じこもってる」
「……」 世界は言い返せず、口をつぐむ。
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【大我 × 鵜飼】
「お前、動物っぽい変身のやつ、いいセンスしてんな!」
「鵜飼さんこそ、地割れパンチとかヤバすぎです」
「今度、筋トレ勝負しようぜ!」
「負けませんよ!」
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【昇子 × 彩芽 × 柚璃】
「ごめんなさい、さっき爆風で巻き込みそうになって……」
「でも判断は悪くなかったわよ。私も感情、操作しきれなかったし」
「私は楽しかったからオールOK~♪」
「……なんかこの先輩たち、濃いなぁ……」
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その頃、野呂は一人、水筒を抱えて遠くから皆を見ていた。
「……ふふ、水分あれば平和……」
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獅堂が中央に戻り、再び声を張った。
「第3部隊は、型にハマらなくていい。バラバラだから強い。 でも、“一緒に立つ理由”は、ちゃんと持っとけ」
「そのうち、お前たちだけで任務に行ってもらう。ちゃんと自分の足元、見とけよ」
世界がゆっくりと、獅堂の背を見つめながら呟いた。
「……俺に、仲間を信じる資格が……あるのか……」
それを無言で見ていた羽仁が、目を細める。
――それぞれの“距離”が、少しずつ、動き始めていた。
それぞれの能力が解禁されましたね。
あれ、彩芽さん能力使ってました?