これが第3部隊の色
第8話です。宜しくお願いします。
――第3訓練場・午前。
王クラスとの死闘から数日後。 世界、大我、昇子の3人は、訓練場の片隅で黙々と体を動かしていた。
「……結局、あのときは獅堂さんに助けられたってことだよな」 大我がポツリと呟く。
「完全に……だったな。力の差、歴然だった」 世界は少し悔しそうに呟いた。
「ま、次は勝ちましょう。私たちも、まだまだこれからよ」 昇子が腕を振り、軽く気合を入れる。
そのとき――
「ただいまァァァッ!!俺たちの第3部隊、帰還だぁッ!!」
派手な爆音とともに、上空から赤い花火のような炎が舞った。
「ちょっとちょっとー!見た見た!?火花きれいだったでしょ?」
明るい声に続いて、5人の先輩隊員たちが、訓練場に戻ってきた。
「……うわ、なんかすごいの来た」 昇子が一歩引き、大我は目を輝かせる。
「おかえり、って言っておけばいいのかな」 世界が淡々と呟いた。
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獅堂の声が響いた。
「おーい、お前ら!こいつらは第3部隊の先輩たちだ。今から紹介してやる!」
先輩たちはそれぞれ前に出て、順番に自己紹介を始めた。
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最初に出てきたのは、明るい笑顔の女性だった。
「はーい!香坂柚璃!A階級!火花飛ばすの得意~!楽しいこと大好きだから、よろしくねっ!」
パチン、と指を鳴らすと、彼女の手から小さな火花が弾けた。
「……眩しい……」 昇子が少し顔をそむけた。
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続いて前に出たのは、無表情で物静かな青年。
「羽仁真嵐。A階級。時間に関わる術を使う。以上」
「……簡潔すぎません?」 昇子が思わず突っ込むが、羽仁は首をかしげただけだった。
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その次に現れたのは、筋骨隆々の熱血漢。
「鵜飼真介だ!A階級!鍛えるのが好きだ!お前らもガンガン鍛えてやるからな!」
「いいっすねそれ、俺もトレーニング好きなんで!」 大我が嬉しそうに手を上げる。
「おう!今度腕相撲しようぜ!」
「おーっす!」
「うるさいぞ、お前ら」 獅堂が頭を叩くジェスチャーで制す。
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次に出てきたのは、品のある女性。 だが口元には微笑みながらも、どこか毒を感じさせた。
「栗花落彩芽と申します。B階級。見ての通り毒舌ですが……可愛がってあげますわ」
「え、絶対性格悪いじゃん……」 昇子が小声で呟くと、彩芽は聞こえていたかのようにニッコリ笑った。
「ご期待に添えられるよう、精進しますわね♪」
「……怖っ」
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最後に出てきたのは、柔和な雰囲気の青年。
「野呂晴臣です。B階級。……水、持ってます?」
「……え、いきなり?」 昇子が困惑してペットボトルを差し出すと、野呂はそれを一気に飲み干した。
「ふぅ……ありがとうございます。これで暴走しなくて済みます」
「……暴走……?」 世界と昇子が揃って目を見開く。
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一通りの自己紹介が終わった後、それぞれが自由に動き始める。
鵜飼、大我、そして獅堂の3人は自然と一ヶ所に集まり、筋肉や力比べの話で盛り上がる。
「獅堂さん、あの時の一撃、マジで震えましたよ!」
「おうよ!もっと見せてやるから覚悟しとけよ」
「俺もそのうち、超えてみせますから!」
世界は端で黙っていたが、羽仁が横に来て言った。
「君の《光紋結界》、精度が高い。制御力もある。悪くない」
「……あんたの“時間のやつ”も、妙な気配だった。ああいうの、嫌いじゃない」
短い会話だが、2人の間に何かが通じるような静かな空気が生まれた。
昇子はというと、柚璃にハグされてやや困っていた。
「きゃー!新人ちゃん、可愛い~!」
「ちょ、やめてください!」
「ふふ、柚璃さん、ほどほどに。昇子さん、私の声、怖くなかったですか?」 彩芽がにっこり。
「いや、怖いです。まだ」
「正直でよろしい♪」
そして野呂は昇子にだけ「水分ありがとう。君とは相性がいい気がする」とぽつり。
昇子は思わず背筋を伸ばす。
「え、ええ……?ど、どうも……?」
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最後に、獅堂が声を上げる。
「よし、揃ったな。お前ら、これが第3部隊の仲間たちだ」
「バラバラに見えるかもしれねぇ。でも、まとまったら最強だ」
「次の任務までに、しっかり身体も心も仕上げとけ。先輩たち、よろしく頼むぞ!」
先輩たちは一斉に頷き、世界、大我、昇子の3人も、緊張と期待の入り混じった面持ちで頭を下げた。
――新たな第3部隊の物語が、今、動き出す。
これだけフレンドリーに皆が絡んでくれると陰キャの人達だと嬉しい反面しんどい所もあるかもですね…。
まぁ個性がみなさん強いです。