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裁かれる光と闇

第46話です。宜しくお願いします。


神界セレスティアの清らかな光の中。

ルシファーは鉄格子に囲まれた監禁房にいた。


手足を光の鎖で繋がれ、壁に凭れかかるルシファーは、無表情に天井を睨んでいた。


そこへ、門番の下位天使が囁き声で報告をする。


「……ゼウス様。ルシファー様と大天使ミカエルの禁忌の関係。確かに見届けました」


ゼウスは玉座に腰掛け、冷たい金色の瞳を細める。


「この世で最も愚かな……人間どもが行う下劣な行為を、天使が……?愚劣、下賤、恥辱……笑わせるな」


大気がきしむ。光が稲妻のように割れ、部屋にいた天使たちは怯えて膝をつく。


ルシファーに忠義を誓っていたはずの部下――ラグエルは、膝をつきながらも目を伏せた。


「申し訳ございません…しかし我ら神界の秩序を守るため…」


ゼウスは冷笑した。


「良いだろう。愚かな欲望に身を落とした堕天の獣に相応しい罰を与えてやる。」






それから間もなく、ルシファーは牢から引き出され、神殿の広間に引き立てられた。


両手はなお光の鎖で繋がれ、神界の護衛たちがその背を押す。


ゼウスは高座に座し、無数の天使たちを従え、氷のような視線を注いだ。


「ルシファー。お前はこの神界を何だと思っている?」


ルシファーは肩で息をし、挑むような瞳で睨み返す。


「ここはお前が作った秩序の檻だ。だが、俺にとっては――」


ゼウスの杖から雷光が走り、ルシファーの膝を撃ち抜く。ルシファーは呻きながら膝をついた。


「言葉など不要だ。お前はただ獣のように呻いていればよい。」


その周囲には、ミカエルの姿はなかった。





その夜。


牢の前に、青白い光をまとった影が忍び寄った。


「……ミカエル……」


鉄格子の奥から絞り出すような声。

そこに立っていたのは、大天使ミカエル。いつもの清らかな光輪は消え、ただ彼女自身の光だけが揺らいでいた。


「あなたに、会いに来たの」


光の鎖に繋がれたルシファーが顔を上げる。


「馬鹿が……見つかればお前まで罰せられる……」


ミカエルは鉄格子に両手をつき、額を寄せた。


「それでもいい。……私には、あなたが必要なの」


ルシファーの荒れた掌が、鉄格子越しにミカエルの手に重なる。


「私……あのときからずっと、あなたが優しい人だって知ってた。みんなあなたの強さに怯えて遠ざかってたけど……。私だけは知ってるの。私が力が弱くて誰にも相手にされなかった時……あなたが最初に声をかけてくれた」


ルシファーは瞳を揺らし、鉄格子を握りしめた。


「……覚えていない。けど、だからお前は……」


「好きになったの。」


囁くミカエルの声が震えた。

ルシファーの目が細くなり、その強い腕が格子を越えて彼女を抱こうとしたが――


次の瞬間、眩い光が差し込み、複数の下位天使たちがそこにいた。


「捕らえよ! 大天使ミカエル、その身、ゼウス様の裁きへ!」






ミカエルは光の鎖に縛られ、神殿の中央へ引き立てられた。


ゼウスが高座から冷然と見下ろす。


「恥知らずな穢れよ。お前はその腹に、忌むべき堕天の子を宿した。神界に、人間のような穢れは不要だ」


ミカエルは涙を溜めながらも、ルシファーの方を必死に見る。

ルシファーは再び鎖に縛られ、遠くからその様を見ていた。


「ゼウス……頼む……! 俺だけを裁け!!」


ゼウスは黙して杖を振る。

その一撃は神殿を光で満たし、ミカエルの足元に冷たく響く。


「死罪とする。」


神殿が軋み、無数の天使たちが沈黙した。

ミカエルは涙を零しながら、ただルシファーに微笑みを送った。


「大丈夫……。私たちの子は、きっと……」


雷鳴のような光がその場を覆い、場面は暗転した。






地上界(のちの世界や大我が生まれる世界)に、一筋の黒い稲妻が落ち、音もなく大地を焼いた。

その煙の中、未来へと繋がる不吉な影が揺れる――。


すいません。色々あって遅くなりました。

ミカエルとルシファーの過去は描いていて悲しくなります。

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