二つの翼、最後の罪
第43話です。宜しくお願いします。
──地上界。
朝日本部の外縁。崩れた瓦礫と、そこに転がる血の痕が戦場の凄惨さを物語っていた。
鈴菜昇子や丹羽大我、S階級たちがそれぞれの戦場で七罪と戦う中、虎威世界は最後の七罪──《色欲:ラース》と対峙していた。
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瓦礫の上に脚を組んで腰かけるラースは、妖艶に唇を舐めながら世界を見下ろす。
「さあ……あなたも私に恋しなさい♪ 殺されることを、この世でいちばん幸せに思わせてあげるから……」
世界の背後に立つアズラエルは剣を軽く構え、静かに世界に告げた。
「惑わされるな。あれは“愛”の形をした毒。耳に入れるだけで心を蝕む。」
世界は無言で頷く。だがその瞬間、ラースの瞳が怪しく光った。
──《愛執侵操》。
世界の心臓が、きゅっと強く握りつぶされたように痛む。
甘い匂いが鼻先をくすぐり、視界が霞む。
ラースが愉悦の表情で小さく嗤った。
「ほら……気持ちいいでしょう? もっと私を感じて、愛して……」
だがその甘い声を引き裂くように、白い翼が視界を覆った。
アズラエルがラースに向かって一閃。剣風だけで周囲の瓦礫を吹き飛ばし、ラースは嬉しそうに笑って跳び退く。
世界は苦しげに肩を上下させながら、アズラエルを睨む。
「……平気だ。こんなの……俺の本物じゃない。」
アズラエルは短く「良い」とだけ答え、世界の隣に並ぶ。
「私が切る。お前は、その光で“檻”を作れ。」
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ラースはしなやかに腰を振りながら距離を取った。
「二人で私を縛るつもり? 素敵……ねぇ、どっちから愛してくれる?」
世界は無言で地面に手を当てる。
そこから溢れる発のオーラが空間を光で満たし、ラースの足元を囲むように《光紋結界》が展開された。
ラースがくすぐったそうに肩を震わせる。
「いやらしい光……何もかも暴かれちゃう……あぁ、もっと見せて?」
アズラエルがその輪の外からラース目がけて一気に踏み込んだ。
白銀の剣が、光の檻に囚われたラースへと振り下ろされる。
ラースは艶やかに微笑んだまま手をかざし、闇のオーラで剣を受け止める。
「でもね……愛し合うなら、最後は一緒に死ぬのよ?」
その瞬間、ラースの闇が結界に逆流し、光が歪む。
世界が結界を強めようと力を込めるが、心臓を撫で回すような悪寒が再び走る。
「やめろ……俺は、お前なんかに……」
「フフ……嘘つき。だって心臓がこんなに高鳴ってる。」
視界がぐらりと傾ぐ。
その時、アズラエルの冷たい声が世界を引き戻した。
「お前の鼓動は“恐怖”でも“愛”でもない。ただ“守りたい”と叫んでいる。」
世界の目が見開かれる。
世界は叫ぶように息を吐いた。
「……そうだ。俺は、守りたいだけだ!!」
再び光紋結界が輝きを取り戻し、ラースの周囲を閉じ込めるように収縮する。
ラースが愉悦に染まった目で、しかし焦りを隠しきれずに微笑んだ。
「……なにこれ、息が……詰まる……こんなの、愛じゃない……!」
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ラースが闇のオーラを最大まで膨張させ、結界を弾こうとする。
「私の愛は……壊すものよ……」
だが世界はその光をさらに収束し、ラースの闇を抑え込む。
「……終われよ、偽りの愛は!!」
アズラエルが上空へ跳躍し、光と闇が渦巻くその中心へ剣を突き立てた。
「汝の愛は歪み。ここに終われ。」
剣が突き刺さった瞬間、結界が小さく爆発し、ラースの身体が黒い花びらのように崩れた。
ラースは最後まで、艶やかに笑った顔のまま塵となった。
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戦いの余韻が瓦礫の街を包む。
世界は膝に手をついて息を整え、アズラエルがその肩にそっと触れた。
「お前の中の光と闇が、私をここへ導いた。それが全ての答えだ。」
世界は無言で小さく頷き、目を閉じる。
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場面は変わり、地獄界。
ルシファーが深紅の玉座に腰掛け、水晶玉を覗いていた。
「……フフ……これで七罪は全て散ったか。」
水晶玉には世界とアズラエルが映る。
だが次の瞬間、ルシファーはゆっくりと眉を潜める。
「……? この感覚……ミカエルのオーラが……僅かにもう一つ?」
指先で水晶を撫でながら、口元を歪める。
「おいおい……私の知らない秘密がまだあるってのか。……楽しいじゃないか。」
その瞳に深い興味と愉悦を浮かべながら、ルシファーが冷たく笑う。
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遂に七罪との長い長い戦いが終わりましたね。
これから最終章に入っていくので宜しくお願いします。




