怒気と嫉心、雷鳴と咆哮
第42話です。宜しくお願いします。
朝日の拠点を取り巻く廃墟群は、いまだ無数の夜たちで溢れかえっていた。
瓦礫を踏み砕きながら、真紅の音波が風を裂く。
> 「うぉぉぉぉおおおおおッ!!」
獅堂 声司。
短気で激情家のこの男は、声を吸い込むように大きく深呼吸すると、胸の奥から灼熱の衝動を吐き出した。
> 《爆音発声》!!
広範囲に響き渡る轟音が、一帯の夜を土に返していく。空気すら割れ、古びたビルの壁面が崩落する。
「おいおい、張り合いねぇな……!」
眉を吊り上げながら吐き捨てる獅堂。その横を、青白い雷撃が閃光となって駆け抜けた。
鷹峰 迅――
> 「……終わらせる」
鋭く呟き、雷を纏った脚で夜たちを一閃。空気が破裂し、二度目の衝撃が広がる。
倒れ伏す夜たちを見下ろし、鷹峰が淡々と息を整える。
「お前、仕事が早すぎんだろ。俺の見せ場、全部持っていくつもりかよ」
そう憤る獅堂に、鷹峰は無表情で「任務だ」とだけ返す。
しかし、その口元には少しだけ楽しげな色が浮かんでいた。
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戦場の別の場所――
瘴気に包まれた街角で、柊 夢子と真野 銃菜が、狂った怒気の渦中にあった。
> 「イライライライラ……全部……爆ぜろぉぉッ!!」
憤怒の夜、イラース。
その身体から溢れ出る瘴気は、触れるだけでオーラを腐食させる異常な熱を持っていた。
夢子が《夢侵操縛》を展開し、精神世界へ侵入を試みるが――
> 「あっ……」
夢の空間で見えたのは、燃える街、血まみれの顔、復讐に取り憑かれたイラースの咆哮。
そのあまりの怒りに夢子は押し返され、一瞬意識がぐらつく。
「夢子ッ!下がって!」
真野が手を突き出し、身体から形を変えた鎖を無数に伸ばす。鎖がイラースの手足に絡み、動きを止める。
> 「イライラ……邪魔すんな……ッ!!」
鎖を振り千切ろうと瘴気が渦を巻く。だが真野は負けずに鎖を強く引き絞る。
> 「夢子!もう一回いける!?」 「……うん」
夢子はもう一度そっと目を閉じる。
精神を研ぎ澄まし、イラースの狂気の心へそっと触れる。
――おやすみ。
刹那、イラースの動きが硬直した。
真野はすかさず右腕を大きな戦斧に錬成し、頭上から振り下ろす。
> 「悪夢に付き合ってる暇はないのよッ!!」
重厚な斧がイラースの胸を貫き、その身体は炎を纏った瘴気の塊となって爆ぜ散った。
夢子は小さく息をついて微笑む。
> 「もう一匹、眠らせてあげた……♪」
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そのさらに奥――
> 「いいな……その力……俺にもくれないかなぁ……?」
嫉妬の夜、エンジーが爛々とした瞳で神代 鏡華と如月 姫華を見据えていた。
エンジーの能力、《渇望複写》が神代の《鏡界転写》を複写。
光の鏡を無数に顕現させ、如月の召喚獣を弾き返す。
> 「いやっ……ユニコーンが……!」
如月の瞳が不安に揺れる。如月のユニコーンが放った光の槍が、鏡で弾かれ逆に跳ね返ってくる。
神代は落ち着いた声で言った。
> 「自分の鏡を使われるのは気分が悪いな。けど……その使い方は甘い」
次の瞬間、神代が己の鏡を再展開し、跳ね返ってきた攻撃をさらに三重に屈折させる。
如月は震えながらも目を閉じて祈るように両手を胸に当てる。
> 「お願い……守って……」
ユニコーンが如月の背に並び立ち、如月と共に光を放つ。
神代の鏡がそれを無数に増幅し、エンジーへと集中砲火を浴びせた。
> 「……ああ……全部……欲しかったのに……」
エンジーの身体は砕け、黒い粒子となって霧散した。
如月はほっと涙を零し、神代はその肩に手を置く。
> 「よく耐えたな。如月。――おかげで決着だ」
如月は涙をぬぐいながら、頷き返した。
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夜が去り、戦場の一角はわずかな静寂を取り戻した。
遠くで再び爆音が響く。
戦いはまだ終わらない。しかし確かに、この場の危機は如月と神代が乗り越えた。
> 「……次は、どこで誰が戦ってるんだろうね」
真野の声が遠くから届く。
それに神代が静かに笑い、「皆、命を懸けている。――ここから先は、最後の戦いだ」と言葉を落とした。
物語は、最終局面へ向かって動き始めていた。
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鷹峰迅さん、活躍させる事が出来なかった…
この人は勿論S階級で強いし、何よりスマートでカッコいいのですが…すいません。




