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歪んだ愛と真実の匂い

第4話です。宜しくお願いします。



虎威家・蓮二の私室。


整然と片付いた室内。机の上には整列された本と資料。 その部屋に、玄道が無言で足を踏み入れ、扉を閉める。


「……お前なら“完全変身”で、世界に成りすますのは容易だろうな」


蓮二はベッドに寝転んだまま、くるりと横目で玄道を見る。


「フフフッ……さすが父さん。どうして世界が俺だとわかったんだ?」


玄道は静かに、そして冷静に言葉を紡ぎ始めた。


「いくつか違和感があった」



---


「一つ目は、あいつの階級だ。世界の実力なら、A階級に選ばれていてもおかしくなかった。  だが、試験官の評価はB止まりだった。……お前の“完全変身”は、相手の能力を半分の出力しか再現できない。  それを見抜かれたんだ」


蓮二は肩をすくめるように笑う。 「いやぁ、あの試験官、なかなかやるよね。俺、結構頑張ったのになぁ」


「二つ目は、合格後に俺や金糸雀に何の連絡もなかったことだ。あいつなら、真っ先に報告に来る」


「ははっ……俺、不自然だったかな?」


「三つ目は決定的だった。……大我君の報告だ」


蓮二の笑みがぴたりと止まる。


「彼はお前の“臭い”に違和感を覚えた。お前の変身は姿形は完璧でも、臭いまでは再現できなかったようだな」


「……あの動物っ子、なかなか鋭いところあるからなぁ〜フフフッ」



---


玄道が一歩、蓮二に詰め寄る。


「お前のその歪んだ愛情が……どれだけ世界を傷つけてきたと思っている!」


部屋の空気が震える。玄道の体からあふれ出す膨大なオーラが、壁を軋ませ、照明をわずかに明滅させる。


「……今すぐ、居場所を言え。さもなくば俺が本気で力を振るうことになるぞ」


蓮二は笑いながら両手を上げる。


「分かった分かった! 俺の負〜け、父さんの勝ち!」 「だってさぁ……こんなところで父さんのオーラなんか使われたら、この家、壊れちゃうでしょ?」


笑いながら、蓮二はふと真顔になった。


「……世界はこの家の地下室にいる。分厚い扉の奥だよ」



---


玄道は無言で駆け出した。


階段を飛ばし、地下室へと急ぐ。


血の滲んだ扉。爪で引っ掻いたような痕。金属製の分厚い扉には、鍵と鎖が幾重にも巻かれていた。


「……世界!」


鍵を破壊し、鎖を解き、扉を開け放つ——


そこには、薄暗い空間に座り込む、見るも無残な姿の少年がいた。


髪は伸び放題でぼさぼさ。手足には複数の採血跡。唇は乾き、頬はこけていた。


「……父……さん……?」


玄道は息を呑んだ。


「……大丈夫だ、もう大丈夫だぞ、世界」


ふらつく世界の身体をそっと抱きしめ、肩を支える。


「……ここから、出られなかった……」 「アイツ……ずっと笑ってた……俺がここにいる間、ずっと……」


「いい、今は何も言わなくていい……」


玄道の声が震える。 「もう、誰にも触れさせやしない……絶対に、守ってやる……」



---


一方その頃、蓮二の部屋。


月明かりの中、蓮二が窓辺に腰をかけて独り言を呟く。


「……あ〜あ、もう少しで……世界を壊せたのにな」 「また今度……もっと深く、“愛して”やるからな……世界♥」


月が、不気味な微笑を照らしていた——。


いやー、ほんとに蓮二怖すぎます。ブラコン拗らせすぎです。

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