交差する血と咆哮
第38話です。宜しくお願いします。
──瓦礫の谷間。
かつて街であったその一角は、今や巨大な戦場のひとつ。 その中央で、丹羽大我はひとり、王クラス《ハウリングレイジ》と対峙していた。
乾いた風が吹き、獣の唸りが響く。
ハウリングレイジ「弟が……死ぬかもしれないぞ。いや、お前のせいで死ぬんだ。守れなかったお兄ちゃん♪」
その言葉が、深く、大我の心をえぐる。
大我「……うるさい。……感情を、殺せ……何も感じるな……!」
しかし、抑えようとした心の奥から、幼い頃に聞いたこともないはずの声がこだまする。
『大丈夫……君たちは光だよ』 『守るんだ……君の大切なものを』
ミカエル。
『怒れ、愛せ、そして抗え』
ルシファー。
頭痛が襲い、視界が歪む。
大我「……やめろ……やめてくれ……」
その瞬間、右手から眩い光が溢れた。 それはただの光ではなかった。神聖さと、禍々しさの混じるオーラが、彼の腕を覆っていく。
ゴリラの腕、コウモリの羽、ウサギの耳…… 無意識に発動する《身体獣化》の限界を超え、混ざり合う動物の特徴。
大我「これ……なんだ……? ……俺の……力か……?」
だが、ハウリングレイジは笑っていた。
ハウリングレイジ「気付いたか。お前は“光”と“闇”の子。……ミカエルと、ルシファーの血を継ぐ者だ」
大我「……ミカエル……ルシファー……? ……なんでその名前を……?」
ハウリングレイジ「ははっ、知らなかったのか? それとも……まだ“教えられてない”だけか? ……弟、お前の“世界”だよ。アイツも……同じさ」
大我「……っ!! 世界が……俺の……弟……!?」
衝撃に、呼吸が止まる。 世界と自分が兄弟……そんなこと、聞かされたことなどない。 だが心のどこかで、その言葉に「確信」に似た感覚が芽生える。
大我「……なにが……なんなんだよッ!!」
吼えると同時に、空間が揺らいだ。
天使の羽と、黒い堕天の羽。 右腕は純白に、左腕は漆黒に変じていた。
ハウリングレイジ「おいおい……ほんとに“覚醒”するとはなァ!」
大我「……知らないことばっかりだ。でも……今ここでやるべきことは、ひとつだけだろ……」
彼の瞳が、鋭く敵を捉える。
大我「守る……全部、守るんだよッ!!」
《生物創生》が発動。 空気が震え、光と闇が混ざるオーラの中から、一頭の巨大な白狼が出現した。
大我「行けッ!!」
吼えながら飛びかかる白狼と共に、大我の拳が《ボディアンスロ》の強化と共にうねる。
ハウリングレイジ「面白ぇッ!!!」
2人の激突と共に、地面が陥没し、瓦礫が吹き飛ぶ。
──そして場面は変わる。
【黒鋼一漢 vs グリー】
欲望の鎧に包まれた巨体が、殴るたびに地面を割る。 黒鋼は《局所集中》を極限まで高め、拳と拳が交錯する一瞬に全身の力を込めた。
黒鋼「速さを捨てて力に賭けたのが、貴様の敗因だ」
一閃。 拳が、グリーの顎を跳ね上げた。
鎧が砕け、グリーの身体が数十メートル吹き飛び、ビルに突っ込む。
黒鋼「──正義の拳、しかと刻め」
さらに場面は変わるー
ラースは兵士たちを《愛執侵操》で操り、互いに殺し合いをさせていた。
ラース「あなたも、私に恋しなさい?」
世界は息を呑み、唇を噛みしめる。
世界「ふざけるなよ……。……そんな力で、人の心を……!!」
ラースは笑う。
ラース「それが“愛”よ、坊や?」
世界の手に、光が宿る。
世界「俺は……お前の偽物の愛なんかに、屈しない!!」
ラースと世界、2人の戦いがいよいよ始まろうとしていた──。
世界と大我の関係が遂に明かされましたね。
ここからどうなっていくか見物です。




