戦端開く咆哮
第33話です。宜しくお願いします。
朝日本部周辺は、もはや“戦場”と呼ぶに相応しい地獄と化していた。
皇帝クラスに匹敵する巨大な夜〈ライル〉が、高層ビルを拳で叩き折り、瓦礫が雪崩のように降り注ぐ。王クラスが放つオーラは赤黒い稲妻となって街路を焼き払い、騎士クラスが群れを成して人々を蹂躙する。
――しかし、ここは朝日の拠点。退くわけにはいかない。
虎威世界は崩れた高速道路の上に飛び乗り、《光紋結界》を展開。突進してきた王クラスの夜の腕をまるごと光壁で受け止め、触れた部分を土へと還す。それでも三歩下がるごとに別の敵が襲いかかってくる。
> 世界「くっ……この数じゃ《神使召喚》は使えない。アズラエルを呼ばなくても、俺に残った力で……!」
オーラを絞り、片腕から扇状の結界を連射して夜の群れを薙ぎ払う。その背で、姫宮真癒の淡い光輪がきらめく。
> 真癒「《祝福祈環》!」
無数の光粒が味方の傷を塞ぎ、折れた骨を再生させる。しかし癒やし手を狙う夜は多い。黒鋼一漢が《局所集中》で右拳だけをオーラ120%に高め、突進してくる夜の顎を砕いて真癒を守った。
> 黒鋼「ここは通さん! 一歩でも前に出れば──折る!」
仙道喰真が体重を一気に100倍に増やし、巨大な肉壁となって夜の奔流を受け止める。地面がめり込む轟音が響いた。
本部東棟の屋上。発のオーラ使い・御剣光璃は、《光線制圧》で無数の光の矢を空中に固定していた。
しかし、漆黒のマントを纏う王クラス《インバースシェイド》は、空間を歪める能力で罠を逆利用。光の矢が御剣に向かって折れ曲がる。
> 御剣「読まれた……? ならば――」
御剣は自ら光の矢の軌道に身を投じ、わずかな角度で矢を“自分の背後”に再誘導。敵の死角に設置された別の光矢が発動し、シェイドの胸を貫いた。
> 御剣「《レイ・ドミネート》は“場所”ではなく“侵入”を罠にするのよ……覚えておきなさい」
王クラスが塵と化す。彼女は息を整え、次の戦場へと視線を向けた。
中央大通りでは、筋骨隆々の伊良部陸が、二つの首を持つ騎士クラスに拳を叩き込んでいた。
> 伊良部「うおおおっ! 《重剛拳》!」
殴った瞬間、敵の質量が急増し、アスファルトにめり込む。それでも二つの首が連携し、伊良部を挟み撃ちにする。
篠原希沙が目を閉じ、敵の鼓動を聴く。
> 篠原(来る……左首が縦、右首が横……)
《心音模写》──敵の思考リズムをトレースし、瞬時に伊良部へ指示。
> 篠原「右っ!」 伊良部がスウェーでかわし、左拳を打ち上げる。一瞬質量を十倍にした拳が、左首を粉砕し、続いて右首を地面に叩きつけた。
> 伊良部「ナイス先読みっ! 潰れたぜ!」
乾いたビル街。水たまりはなし、湿度も低い。 鈴菜昇子は《モイスチャーボンバー》の水源を失い、額の汗を拭う。
> 昇子「……水分が足りない……でも、やるしかない!」
三体の騎士クラスと、一回り大きい王クラスが彼女を囲む。
昇子は自らの汗を掌で払って空へ散布。瞬時に加熱し、小規模炸裂で敵の視界を奪う。
> 昇子「寄るなって……言ったでしょッ!!」
跳び上がりながら、口内に溜めた唾液を霧状に放出。高温の超近接爆破が騎士クラスの一体を吹き飛ばしたが、身体も火傷し、息が荒い。
王クラスが剛腕を振り上げる。昇子は後退しながら、再び額に汗をにじませた――。
瓦礫の谷間。丹羽大我が、感情を察知し怒りを糧にする王クラス《ハウリングレイジ》と対峙する。
> 大我「……感情を、殺せ……何も感じるな……」
しかし敵は、心理を読む舌で大我の不安を抉るように囁く。
> ハウリングレイジ「弟が……死ぬかもしれないぞ。いや、お前のせいで死ぬんだ。守れなかったお兄ちゃん♪」
母ミカエルの声、ルシファーの怒り、世界の叫び―― 記憶の残響が大我の頭を刺す。
> 大我「やめろ……やめろぉッ!!」
右手が眩い光を放ち、獣の爪が現れる。軟のオーラが変質し、複数の動物の特徴が同時に混ざり合い始める。
ハウリングレイジが笑い、大我は頭を抱えたまま吼えた。
戦場の中心部。夜の群れを蹴散らしながら、グリーとエンジーが並んで歩く。
> グリー「ま、ここらで少し“贅沢”してもいいだろ?」
彼は《欲皮武装》を発動。筋繊維が鎧のように肥大化し、拳を地面へ叩きつけた。
ビルが基礎ごと持ち上がり、爆風とともに敵味方を吹き飛ばす。
エンジーはその光景を見て舌なめずり。
> エンジー「いいなぁ……その力、僕も欲しいなぁ……」
虎威世界は遠くからその衝撃波を感知。背中に微かな白黒の羽光が瞬いた。
> 世界「……あれは、違う。普通の夜じゃない……!」
アズラエルの声が微かに脳裏をくすぐる――
> アズラエル《選び取れ、メイソン。力を振るうか、否か》
世界は拳を握り、戦場の中心へ駆け出した。
登場人物が沢山で分かりにくいかと思います…
すいません…
伊良部、篠原、御剣は訓練の時に一緒に訓練していた3人です。




