罪を纏いし影たち
第31話です。宜しくお願いします。
――静けさは、嵐の前触れだった。
朝日本部。まだ日も昇りきらぬ早朝。警備部隊の巡回が交代し、各部隊は任務前の確認作業に追われていた。
その一角、第3部隊の待機区画では、虎威世界がじっと空を見上げていた。
「……何か、来る」
隣で準備をしていた昇子が眉をひそめる。
「世界? どうかしたの?」
「いや……ただ、胸騒ぎがするだけだ」
ぼんやりと答えながらも、世界の瞳には確かな緊張があった。昨夜、夢の中で感じた確かな温もり。そして、神使・アズラエルとの契約。あの瞬間から、心の奥に微かに灯る“何か”がある。
世界は自分の胸に手を当て、囁いた。
「……また、あの羽が……俺に語りかけてくる気がする」
そのとき――
警報が鳴った。
「緊急事態発生! 不明のゲートが地上界各地に同時出現!」
時を同じくして、地上界上空。
黒い空間が裂けるようにして、六つの巨大な“ゲート”が生まれた。
まず、最初に姿を見せたのは――
◆《嫉妬:エンジー》 中性的な顔立ちに、不穏な笑みを浮かべた青年がゲートの縁に腰掛けていた。 「ふふ……ここには、まだ見ぬ能力がたくさんあるんだろうなぁ……楽しみだな……」
その傍らで、艶やかな髪を揺らす女――
◆《色欲:ラース》 「退屈は嫌いなの。美しい人間の瞳を歪ませることほど、楽しいことってないでしょ?」
◆《強欲:グリー》 筋骨隆々の大男が、拳を鳴らしながら地上を見下ろす。 「すべてを奪ってやる……地上も、この世界もな……」
その後ろでは、太めの体格の男が舌なめずりをしていた。
◆《暴食:トニー》 「いい匂い……俺好みの毒肉がいそうだな……」
◆《憤怒:イラース》 「チッ……全部壊してやる……こんなもんで赦されるとは思っちゃいねえけどよ……!」
◆《怠惰:スロー》 「あー……面倒くせぇ……でも、命令だしなぁ……しゃあないか……」
――六つの扉から、それぞれの罪を象徴する存在たちが、地上界へと降り立っていく。
彼らの瞳には一様に、欲望と目的が混ざり合った光が宿っていた。
グリーが、空を見上げて呟く。
「さて……罪人の俺たちが、天の“赦し”をもぎ取りに行くとするか」
一方、本部。
非常アラートが鳴り響き、S階級全員に緊急招集がかかる。
神代鏡華が冷静に指示を出し、獅堂声司が拳を叩きつけながら笑う。
「ようやく暴れられるってか……七罪の野郎共、全員ブッ潰してやるぜ」
姫宮真癒は静かに祈りを捧げ、天使の光をその掌に灯していた。
世界、大我、昇子らも各部隊と共に招集され、次なる戦いに向けて歩み出す。
その瞳に、迷いはなかった。
さぁ、これから大戦がはじまりそうですね。
物語も佳境に迫ってきてます。




