夢が告げる真実
第28話です。宜しくお願いします。
活動報告に設定と登場キャラクターのまとめがあるので
良ければどうぞ。
──あの夜以来、世界は眠りが浅くなっていた。
あの角の男──自称、父親。
出会いは一瞬だったはずなのに、その姿が頭から離れない。特に、あの優しい眼差し。 見覚えなどあるはずがないのに、どこか懐かしくて、温かかった。
(あれは……なんだったんだ?)
そんな問いが、ずっと胸の中でくすぶっていた。
そして、深く眠ったその夜──。
世界は、夢を見た。
静寂に包まれた空間。 焦げたように黒い空、血のように赤い地平線。
──どこだ、ここは。
周囲を見渡すも、何もない。ただ……
「よしよし……お前はいい子だな……」
優しい声とともに、ふわりと腕の中に抱きかかえられていた。
その胸の鼓動、肌のぬくもり── 夢の中だというのに、やけにリアルで、温かい。
目の前には、銀の長髪。高くそびえる角。そして……微笑む顔。
──あの時、会った……。
そう思った瞬間、風景がぐにゃりと歪む。
そして、世界は“胎児”の視点へと引き戻された。
暗闇。外の世界は見えない。 けれど──
「……この子は、バレてしまったわ……」
やさしい女の声。
「でも……あなたの中にいる“あの子”のことまでは、まだ誰にも知られてない……」
──え?『あの子』……?
「お願い……あの子だけは……守ってあげて……」
女性は、そう言いながら涙を流していた。
「……君は……君だけは……絶対に私が守る」 「たとえ私の力が尽きても、お前の命だけは──」
今度はあの男の声。
世界には理解できなかった。 だが、強く、激しく感じるのだ。 ──愛情を。
そこからは断片的だった。
白い服の集団がミカエルと呼ばれる女性を取り囲み、 「神への背信だ」と叫ぶ声が飛び交い、 金色の光が空を割り、黒い翼の男──ルシファーが怒りに燃えて立ち向かう。
──そして、闇へと堕ちていく姿。
夢は、そこで終わった。
目を覚ました世界は、しばらく動けなかった。
(なんだったんだ……今のは……)
冷や汗でシーツが濡れていた。 呼吸が浅い。
(まるで、自分が……あの中にいたみたいだ……)
記憶ではない。 けれど、ただの夢とも思えなかった。
そして世界は気づいてしまった。
──あの角の男。 あれは、夢の中で自分を抱いていた男と同じだった。
(じゃあ……やっぱり、あいつは……)
頭の中が混乱する。
もし、あの記憶が真実なら── 自分は天使と悪魔の子。
(……俺は、人間じゃないのか……?)
こみ上げる吐き気を押し殺しながら、世界は目を閉じた。
この現実に、どこまで向き合えるか。 そして、自分とは何者なのか。
まだ、その答えは見えないままだった。
だんだん世界の出生の真実が明かされてきましたね。
勿論、元々考えていた所ではありますが、やはりここら辺の執筆には時間がかかります。




